家電製品ミニレビュー

東芝「USBモバイル対応ニッケル水素電池充電器セット」

~乾電池でも充電できる、スマホ対応USB充電キット

東芝ホームプライアンス「充電式IMPULSE USBモバイル対応ニッケル水素電池充電器セット TNHC-34AS MB」。カラーは黒以外に白とピンク(桜色)がある

 モバイルバッテリーといえばリチウムイオン電池が主流だが、ここで紹介するのは、ニッケル水素電池を使ったモバイルバッテリー。東芝ホームプライアンスの「充電式IMPULSE USBモバイル対応ニッケル水素電池充電器セット TNHC-34AS MB」だ。

 これまでにも乾電池やニッケル水素電池を使うモバイルバッテリーがいくつか発売されているが、最大出力電流が1Aとなっており、スマートフォンの急速充電にも対応している。

メーカー東芝ホームプライアンス
製品名充電式IMPULSE USBモバイル対応
ニッケル水素電池充電器セット TNHC-34AS MB
購入場所Amazon.co.jp
購入価格3,618円

スマホの充電も、ニッケル水素電池の充電もOK

添付されているニッケル水素電池は、IMPLUSシリーズの中でも高容量の2,400mAhタイプ。単三形が4本セットになっている

 さてスマートフォンを充電する前に、製品名が「USBモバイル対応ニッケル水素電池充電器セット」と少しわかりにくいので、機能を簡単に説明しておこう。

 セット内容は、本体と東芝製のニッケル水素電池「IMPULSE」(インパルス)の高容量タイプ4本とUSB-micro USB(50cm)ケーブルのセットとなっている。

 ニッケル水素電池は、単三形で最低保証容量が2,400mAhの高容量タイプ(標準タイプは1,900mAh)で、繰り返し利用回数は500回だ。

 この電池を本体にセットし、スマートフォンをUSBコネクタに差し込むと、スマートフォンへ充電できる。また本体をUSB ACアダプタやパソコンに接続すると、本体にセットしたニッケル水素電池の充電も可能。つまり本製品は、基本的にリチウムイオン電池を使ったモバイルバッテリーと同じ使い勝手で、内蔵電池がニッケル水素電池に変わっただけと思っていい。

 本体にはあらかじめ、2,400mAhのIMPULSE4本が同梱されているが、1,900mAhの標準容量のIMPULSE、もしくは単四形のIMPULSE(750mAh)も利用可能だ。ただし単三形低容量IMPULSE(950mAh)には非対応。スマホを充電する際には必ず4本の電池が必要になるが、ニッケル水素電池を充電する場合は2本もしくは4本の充電が可能となっている。

スイッチは本体上のスライドスイッチ。引っかかりがないので、誤操作やカバンの中に入れていたても、いつの間にか動くことは少なそうだ。写真右にスライドすると電源が入り、スマホを充電する。電池を充電する場合は左にスライドして電源をOFFにする
プラス側のレバーを倒すと単四電池にも対応。なお左側2本と右側2本の電池スロットに別れている。充電するときは、このスロット単位での充電となる
イザというときは乾電池も使えるので便利だ

 スマートフォンの充電時に使える電池は、同梱されている高容量タイプに加え、標準容量タイプ、単四形タイプが使える(同じタイプの電池4本で使用する)。またアルカリ乾電池4本でもスマホを充電が可能だ。

 ニッケル水素電池を充電する場合の組み合わせは以下のとおり。

 なおIMPULSE以外のニッケル水素電池を使ったスマホの充電は、動作保証外となっているので注意して欲しい。乾電池の充電も保証外だ。


■■注意■■


・以降の実験結果は、室温がコントロールされていない環境で行なっています。電池は温度により、その特性が大きく変わる点にご注意ください。

・実験結果は記事作成に使用した個体に関してのものであり、すべての製品について共通であるとは限りません。

・記事中のバッテリーは基本的に新品ですが、電池を活性化させるため、3回の充放電(リフレッシュ充電)を行なっています。リフレッシュ充電をしていない製品では、同様の実験を行なっても結果が異なる場合があります。

・筆者および家電Watch編集部では、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません。

3,000mAhクラスのモバイルバッテリーに相当。スマートフォンを1.4回充電できる

 新品のニッケル水素電池だったので、3回の充放電を繰り返し電池を活性化させた上で、充電に使えるバッテリー容量を調べてみた。以下のグラフの縦軸はUSBコネクタから出力される電流を示し、横軸は時間となっている。

USBコネクタの出力電流変化。電池がなくなってくるとカーブを描きながら電流が落ちる

 オレンジ色のグラフが同梱品の単三形高容量型IMPULSEで、青は比較対象のパナソニックのアルカリ乾電池「EVOLTA」だ。グラフは急激に電流が落ち込んでいる部分が2カ所あるが、700mAを割ったあたりで急激に落ち込み、スマホの充電ができなくなる。

 ここから充電に使えるバッテリー容量を計算すると、次のような結果となった。

単三形高容量型IMPULSE(付属品)1,835mAh
アルカリ乾電池EVOLTA1,220mAh
スマートフォンを充電中はUSBポートが青く光る

 単三形高容量型IMPULSEを利用したときの1,835mAhという数値は、本体内蔵の部品がロスしたバッテリー容量を差し引いたものなので、一般的なモバイルバッテリーに換算すると3,000mAhクラスと同等だ(EVOLTA利用の場合は、2,000mAhクラス相当)。これは「かなり使える」モバイルバッテリーと言えるだろう。

 次に内蔵バッテリーの容量が1,300mAhの富士通東芝モバイルコミュニケーション製「REGZA Phone IS04」(au)を実際に充電した。このときのスマートフォンの状態は、「電源:ON、WiFi:ON、Bluetooth:OFF、GPS:OFF、バックライト照度:自動、エコモード:ON、充電:残量1%~99%になるまで」となっている。

 結果は、次のとおりだ。

単三形高容量型IMPULSE(付属品)1回と40%
アルカリ乾電池EVOLTA73%

 テストに使ったスマホは1,300mAhと容量が少なめの内蔵バッテリーだが、同梱のニッケル水素電池でほぼ1.5回充電できた。これらの2つの実験から、各種スマートフォンをどのぐらい充電できるかを計算すると、おおよそ次の表に示す回数だけ充電できる。

端末名内蔵バッテリー容量どれだけ充電できるか?
Android系(実測)1,300mAh1.4回
Android系1,500mAh1.2回
1,800mAh1.0回
2,000mAh0.9回
2,200mAh0.8回
iPhone 3GS1,219mAh1.5回
iPhone 4S1,432mAh1.3回
iPhone 51,434mAh1.3回
ソニー PSP(3000)1,200mAh1.5回
任天堂 3DS1,300mAh1.4回
任天堂 DSLite1,000mAh1.8回

 2,000mAh以上の大容量のバッテリーを内蔵するLTE系のスマホでも80%以上充電が可能という試算になる。またiPhoneやゲーム機の充電にも充分な容量だ。

一般的なモバイルバッテリーとの違いは、電流と電圧の安定性

 さてスマホや携帯ゲーム機がほぼ1回充電できるということがわかったが、実験中に気がついた点がある。それはリチウムイオン電池を使ったモバイルバッテリーに比べると、本製品は電圧と電流が安定していないということだ。

先に掲載した本製品のUSBコネクタから出力される電流の変化
リチウムイオン電池を内蔵した一般的なモバイルバッテリーは、電流が常に一定※今回の実験結果ではありません。この実験の詳細は「1万mAhで電池切れの心配なし! 大容量モバイルバッテリーはどれが良い?【後編】」をご覧ください
本製品のUSBコネクタから出力される電圧の変化。モバイルバッテリーは、電流と同じように常に一定となる

 リチウムイオン電池を使ったモバイルバッテリーの出力電流は、わずかに電流が変動するものの、基本的には横一直線のグラフになる。そして電池がなくなるとスイッチが切れ、一気に電流が0mAになる。しかしニッケル水素電池を使った本製品は、カーブを描きながら徐々に電流が下がっている。一方電圧も同様で、リチウムイオン電池の場合は電流と同様に5Vで安定するが、本製品は徐々に下がっていく。

 このように電流と電圧が時間とともに落ちてゆくので、高い電圧、高い電流を求める機器によっては、「思ったより充電できない」という可能性もある。

 リチウムイオン電池のモバイルバッテリーのように安定した出力を得るには、乾電池ではなく、本製品の正しい用法であるニッケル水素電池を使うといい。乾電池はズルズルと電流、電圧ともに落ちてしまうが、ニッケル水素電池であれば高い電圧、高い電流で踏ん張りを見せるので、より安定して充電ができる。乾電池での利用は、あくまで緊急用と考えたほうが無難だ。

 リチウムイオン電池のモバイルバッテリーとの違いには、大きさと重さもある。本製品は一般的な3,000mAhクラスのモバイルバッテリーに比べると、若干大きく、重さは2倍程度ある。リチウムイオン電池は電池としては極端に小さく軽いので、ニッケル水素電池4本を使う本製品はどうしても重くなってしまう。とはいえ実際使うとなると、あまり気になることはない。重さも倍と言ってしまうと、重いように感じてしまうかもしれないが、モバイルバッテリーが100g前後なのに対して、本製品は電池込みで196gというだけの話だ。

本体のサイズは71×98×23mm、重さは電池込みで196g(本体のみは80g)

 たった1つの弱点は、電源スイッチが機械式なので、スマホの充電が終わっても自動的に電源が切れない点だ。モバイルバッテリーのほとんどは、スマホの充電を終えると自動的に自分の電源を切るようになっているが、本製品は手動でスイッチを切る必要がある。スマホに電池残量監視アプリなどをインストールして、フル充電になったら音を鳴らすなどの工夫が必要だ。

 また自動的に電源が切れないため、電池切れになっても健気に充電を続けようとしてしまうのも弱点。先の電流と電圧のグラフでガックリと値が下がった状態になると、静かな部屋では本体内部の部品(DC/DCコンバータ)が、キンキン唸る音が聞こえる。しかしUSBポートはまだ青く光っており、一見すると充電しているように見えるが、実際には電池が切れで充電できていない。こんなときは、電源を手動で切ってやる必要がある。

 また細かいところまで言えば「バッテリー残量計がない」という点も挙げられるが、スマホがほぼ1回充電できることはパッケージにも書かれているので、さほど必要性は感じられなかった。たとえ2回充電するとしても「午前中に1回充電したからあと50%ぐらい充電できるな」と感覚的にわかるだろう。

充電時間は同等の3,000mAhクラスのモバイルバッテリーと同じ6時間程度

 スマホを充電して空になった電池は充電しなければならない。充電時間はマニュアルによれば、電池の種類によって次のようになっている。


出力1A以上のUSB ACアダプタ利用時PCのUSBコネクタからの充電時(出力500mA)
単三形高容量(2,400mAh)タイプ6時間9時間40分
単三形標準容量(1,900mAh)タイプ5時間20分8時間
単四形(750mAh)タイプ2時間20分3時間40分

 付属品の高容量タイプ電池は、充電時間が6時間という。そこで実際に1A出力のUSB ACアダプタに接続して充電したところ、充電にかかった時間は6時間40分と少し長めになった。しかし、これは一般的な3,000mAhクラスのモバイルバッテリーの充電時間と同じだ。帰宅してから充電すれば、余裕で翌朝フルチャージでるので、使いづらさは感じないだろう。

USB ACアダプタで充電している。充電中は本体正面のランプが赤に点灯、充電完了で緑に切り替わる。電池スロット単位で充電完了がわかるようランプが2灯ある

 なお東芝製のニッケル水素電池充電器「TNHC-34HC」を使っても、充電時間は5時間40分程度なので、USBから電源を取る充電器にしては急速チャージができるという印象だ。

使い方しだいでモバイルバッテリー以上の性能を発揮できる

 3,000mAhクラスのモバイルバッテリーとほぼ同等の機能で使い勝手も同じということがわかったが、最後は経済性について比較してみよう。

 まず本製品の販売価格はおよそ3,500~4,000円というところだ。一方容量3,000mAh程度の一般的なモバイルバッテリーの価格は、プラスチックボディーの安いものが2,500円程度、金属ボディでおしゃれなものになると4,000円程度。繰り返し利用回数は、本製品では500回、モバイルバッテリーの場合も500回。つまり経済性はまったく同じということになる。

500回の繰り返し利用で電池が寿命となったら、1,000円ちょっとの電池4本だけを買い換えるだけで新品と同じになるから経済的

 しかし500回の寿命が尽きたらどうだろう。モバイルバッテリーは同じ製品をもう1回3,000円前後を出して買わなければならないが、本製品なら本体はそのまま使えるので、1,000~1,500円で購入できる2,400mAhの高容量IMPULSE4本を買うだけでいい。つまり利用頻度の高い人ほど、本製品の方が買い替え時に安く済むということだ。

 さらに電池が入れ替えられるニッケル水素電池式ならではの使い方として、フル充電した予備のニッケル水素電池を持って歩くという手がある。持ち歩く電池の数で充電回数を柔軟に変えられるというわけだ。普段会社と自宅の往復で1回充電するだけという場合は、本体に入れた電池だけ。しかし国内出張で2回分の充電がしたいという場合は、予備のニッケル水素電池を持っていくだけいい。モバイルバッテリーのように大容量のものに買い換えたり、もう1台モバイルバッテリーを買わずに済んでしまうのが特徴だ。

予備のニッケル水素電池をフルチャージして持ち歩けば、充電回数を増やせる柔軟性がある
スマートフォンのバッテリー容量が少ない場合は、繰り返し1,500回使える標準容量タイプ(1,900mAh)に替えて、さらに経済的な使い方もできる

 またスマートフォンのバッテリー容量が少ない場合は、同梱の2,400mAh高容量タイプではなく、別売りの1,900mAh標準容量タイプを使い、繰り返し利用回数を稼ぐという使い方もある。標準容量タイプは、高容量タイプの2割減となってしまうが、繰り返し利用回数が3倍の1,500回になるのだ。標準容量タイプでも1回以上充電ができる具体的な端末は、1,500mAh以下のAndroid端末やiPhone系、携帯ゲームなどがある。これらの端末を充電する場合は、高容量タイプの寿命が来たら標準容量タイプに入れ替えるといいだろう。充電時間も短くなり、ランニングコストもかなり安くなる。

 このようにリチウムイオン電池を内蔵している3,000mAhクラスのモバイルバッテリーと性能面、使い勝手でもほぼ同じ、価格もさほど変わらない。いや、むしろ使うニッケル水素電池を替えたり、予備の電池を用意することで、モバイルバッテリーより柔軟で汎用性を持っているモバイルバッテリーと言える。

 「スマホを1回充電できればいい」という人はもちろん、使い方を工夫することによって、更に可能性が広がるため、電池の使いこなしを楽しめる人にもおすすめしたい。

藤山 哲人