家電製品ミニレビュー

ボネコ「ディスクエバポレーター 1355WH」

~シンプルで長く使える気化式加湿器
by 西村 敦子

購入時に悩む、加湿器の方式の違い

ボネコ「ディスク型気化式加湿器 ディスクエバポレーター 1355WH」。かなり大きな本体で、もちろん梱包の箱も巨大。これを取っておくのは大変そうです

 冬まっただ中。室温はもちろんですが、室内を快適に保つには、湿度の調整も欠かせません。昨年から続くインフルエンザの対策に、加湿器をグレードアップさせたという方も多いのではないでしょうか。

 そんな冬に必須の加湿器ですが、いざ店頭やネットで選ぼうとすると、まず悩むのがその方式の差です。お湯を沸かして湯気で加湿するもっとも一般的な「スチーム式」のほかにも、湿ったフィルターに送風することで加湿する「気化式」、そして「スチーム式」「気化式」の両方を組み合わせた「ハイブリッド式」と並び、そのほかにも超音波の振動で霧を発生させる「超音波式」などがあります。

 もっとも一般的なのは加湿のパワーが高いスチーム式ですが、電気代が高くなりがち。最近では、電気代が安い気化式の人気も高まっています。今回紹介するボネコの「ディスクエバポレーター1355WH」は、この気化式の加湿器。ボネコは気化式加湿器で有名なスイスのメーカーで、デロンギの取り扱うブランドのひとつです。


メーカーボネコ
製品名ディスク型気化式加湿器 ディスクエバポレーター 1355WH
希望小売価格48,500円
購入場所Amazon.co.jp
購入価格23,374円

電気代が安い「気化式加湿器」

 気化式の加湿器の仕組みは、本体内のフィルターを水に湿らせ、そこに室内の乾いた空気をファンで送風して、加湿した空気をはき出すというもの。部屋の空気が乾燥していなければその仕組み上、加湿されません。部屋の湿度に関係なく強制的に沸騰した湯気で加湿するスチーム式とは仕組みが大きく異なります。

 フィルター内を空気が通るだけというシンプルな仕組みのため、電気代もごくわずかで経済的。スチーム式と比べるとあまり馴染みがありませんが、スチーム式にはない利点も多く、長年愛用しているという気化式加湿器のファンの方も多いようです。

 私が個人的にこの気化式加湿器を知ったのは、数年前の通販雑誌がきっかけ。ただ、どれも海外メーカーの製品で国内メーカーの製品ではあまりみかけませんでしし、価格も比較的高価。「よさそうだけど、玄人好みのアイテム」といったイメージがあっただけで、ずっと一般的なスチーム式加湿器を使ってきました。ところが、最近は一日中家で仕事をしていることが多く、スチーム式を長時間使うのも非効率に感じて、「24時間つけっぱなしにできる」気化式に魅力を感じはじめました。

 今回のボネコの「ディスク型気化式加湿器 ディスクエバポレーター 1355WH」は、そんな気化式加湿器のなかでもかなり大型のタイプ。もともと気化式加湿器はスチーム式加湿器に比べてカバー範囲が広いものが多いのですが、「1355WH」も約30畳という広さが魅力。同社の気化式には4種類あり、「ディスク型」にこの「1355WH」とさらに大型の「2055D」が、小型タイプの「マット型」に「1359SA」と「E2441」がラインナップされています。

 同社の製品はどれもデザインが独特。ヨーロッパのメーカーらしいスタイリッシュなデザインで、目立つ場所にあっても生活感が出ないのは魅力です。

落ち着いた配色のデザインでリビングにも違和感なし

 「1355WH」の第一印象は、想像以上に大きいな、というもの。ただ、デザインがシンプルでマットな質感の白が基調なので、圧迫感はありません。ポイントに使われているグレーも高級感があって、個人的には自宅のリビングの壁や柱がすべて白なこともあってかなりしっくり来ていました。

マットな白を基調にポイントにグレーが使われていて、清潔感があります本体裏面にタンクがセットできます。容量は約4Lディスクユニットの円形を活かしたデザインです

 本体の素材はプラスチックで、380×330×425mm(幅×奥行き×高さ)。本体のデザインそのままに、表面に細かい凹凸のある大きなディスクが21枚重ねて入っています。このディスクを水槽内の水で加湿。本体上からファンで取り込む乾燥した空気を、濡れたディスクに通してやることで、適度に湿度を含み、浄化された空気が放出されます。

 水が入っていない状態の重さは6kg。移動させることも可能ですが、本体を持ち上げにくいのと、給水タンクが4L、水槽に3Lとかなりの量の水が入るので、一度設置したらそこから動かすのはあまり現実的ではありません。何度か、給水タンクだけを外してほかの部屋に持って行きましたが、本体の水槽の水がこぼれそうになるので自然と移動させなくなりました。

 消費電力は「強」運転時で15W/50Hz(12W/60Hz)。電気代も24時間の運転で約8円と経済的です。

真横から見たところ。上部から乾燥した空気を取り込み、本体横から加湿した空気を放出します本体はディスクユニットがセットされた水槽にかぶせてあるだけで固定はされていません本体の上部にあるファン。これで空気を取り込んでいます
水槽にディスクユニットをセットした状態ディスクユニットは21枚の加湿ディスクを組み合わせて構成されています表面には細かい凹凸があり、加湿される際にここに水を取り込みます


乾燥の度合いに合わせて自動的に50%前後の湿度が保たれるよう加湿

 「1355WH」の操作方法は、基本的に本体前面にある電源スイッチで「弱」か「強」かを選ぶだけ。水槽とタンク合わせると約22時間分の水が入れられます。本体の水槽内ではディスクユニットがゆっくりと回転して加湿。放出される霧状の水分粒子は目に見えず、稼働音もごく静かなので「加湿している」という実感があまりわかないのが難点ではありますが、基本的に一日中つけっぱなしになるので、操作を意識することはありません。

給水タンクには栓を開けて水道水を直接入れられます水槽が空だと、タンクをセットしたとたんに水がすべて水槽へ移動するので、もう一度給水が必要です
本体下部の水槽自体にも約3Lの水が入ります電源スイッチは、上部から「切」「弱」「強」。通常、稼働中は緑のランプが点灯します

 気化式は、その部屋の湿度が低ければ多く拡散し、高ければ拡散しない仕組み。「1355WH」は、常に50%前後の湿度が保たれるよう加湿が調整されます。これまで基本的に時間で給水のタイミングが決まるスチーム式を長く使っていたこともあり、最初はなかなか水が減らなかったり急に減ったりすることに慣れませんでした。とにかくタンクの水が残り少なくなったら足す、ということだけ気にしておけばOKです。

 また、湿度が高くても空気浄化は行なうため、水が減っていなくても空気清浄機として機能しています。たばこの煙や花粉などの微粒子が、本体内の加湿ディスクに付着して水槽に取り込まれる仕組みで、タンクの水が減っていなくても水槽内の水が徐々に濁ってくるので、効果がある程度目でも見えます。

 気化式を避ける理由に、この水槽内の雑菌が加湿の際に放出されるということが上げられる場合がありますが、「1355WH」の場合はディスクから放出される霧状の水分粒子が非常に小さいため、雑菌が取り込まれて放出されることはありません。また、水槽内にはシルバースティック「Ag+」がセットされていて、銀イオンの効果で雑菌の繁殖自体も抑えられています。長く使い続けているとホコリや変色が気になるので、水槽は一週間に一度の目安で掃除します。通常使用している範囲では、臭いが気になるようなことはありませんでした。

水槽の底に設置されているのがシルバースティックこのシルバースティックで水槽内の雑菌の繁殖を抑えますタンクは上部のハンドルを持って上から差し込みます


ペットのためにつけっぱなしで留守にする場合も安心

 「1355WH」を使って便利だったのは、やはりつけっぱなしにできる点です。数時間の外出なら運転したままでかけるため、ハイブリッド式やスチーム式のように湿度が上がるまでそのたびに待つ不便さがありません。

 スチーム式などと違って放出される空気が熱くありませんし、これだけ安定して大きいと倒れる心配もほとんどないので、子どもやペットがいる家庭では特に便利そうです。自分が外出している間、室内飼いのネコやイヌに快適にすごしてほしいという用途にも向いています。

 個人的にはスチーム式の強力な加湿に慣れている分、加湿される湿度が少しもの足りないと感じることがありましたが、広い家なら、この「1355WH」をベースにして必要なところにだけスポットで追加するという使い方も便利そうです。

 不便だったのは「給水お知らせランプ」の使い方です。水槽内の水が少なくなると電源ランプが赤く点灯し、自動で運転をストップさせるの仕組みですが、アラートが出るのは「水槽」がカラになったときで、タンクが空になってもお知らせランプが付きません。しかし、加湿の仕組みを考えても水槽の水はある程度必要で、マニュアルにもタンクの水が少なくなったら給水するように記載がありました。つまり、「給水お知らせランプ」の警告よりもかなり早いタイミングで給水したほうがベストだということになり、これはタンクを目視してチェックするしかありません。

タンクと水槽に水がなくなると、ランプは赤の点灯に変わりますタンクにこの程度水が残っていても、これ以上はなかなか水が減らず、水槽の水がどんどん使われます。最後まで待たず、この段階で給水してOK

 また、ディスクユニットを構成する加湿ディスクは手入れすれば買い替えの必要がなく経済的ですが、洗浄が少々面倒です。21枚のディスクは取り外して洗うことができ、一カ月に1度から1シーズンに1回、台所用中性洗剤で水洗いします。加湿ディスクに付着する水の石灰分は表面積を増やす役割もあるため完全に除去する必要はないのですが、芯棒にセットされている加湿ディスク21枚を一枚ずつ抜き取って洗うのはかなり面倒でした。

 ただこの作業が面倒であれば、簡単なお手入れ方法として、クエン酸30gとぬるま湯2Lを水槽に入れて溶かしたあと、ディスクユニットを水槽に取り付け、部屋を換気しながら「強」で2時間運転するという方法もあります。シーズン終わりの本格的なお手入れは別としても、普段の手入れならこれで問題ないでしょう。

空気の浄化機能で、本体下部の水槽にはホコリがたまります。週1回程度の手入れがおすすめフチに白くついているのが石灰分。付着していると逆に加湿機能は上がるので、すべて取り除く必要はありませんディスクユニットの手入れは、まず歯車を外すところから開始
加湿ディスクをひたすら外して、21枚すべて洗います洗うのは台所用洗剤でOK。簡単ですが枚数が多いので少々面倒


機能がシンプルで長く使える、安定感のあるアイテム

 気化式加湿器の「1355WH」は、スチーム式やハイブリッド式などの一般的な加湿器とはかなり使い勝手が違うため慣れるまで少し違和感はありますが、実際使ってみると想像以上に便利でした。手入れが少し手間ですが、買い替えが必要なのは5~6年に1回、シルバースティックを交換することだけ。

 欧米メーカーのロングセラー商品には、機能がごくごくシンプルで長くつかえるものが多いと感じていますが、この製品もそのひとつで、安定感があります。多少高価ではありますが、その価値はある便利さを実感しました。





2010年1月14日 00:00