家電レビュー

カセットガスで使えるアラジンの暖房 室内外対応で肌寒いお花見にもいいかも

アラジンのポータブルガスストーブを使ってみた

レトロでかわいい、英国・アラジンのブルーフレームのストーブ。アイコニックなその姿とインテリアとしても映えるステキなデザインに、憧れのある人もいるのではないだろうか。

そんなブルーフレームをモチーフにした「ポータブルガスストーブ」が、日本でアラジンの製造と販売を手掛けるセンゴクアラジンから2018年10月に登場。発売から数年経つ商品だが、その後もカラバリやデザイン違いなどでコンスタントに新しいモデルが登場しており、愛用者を拡大し続けている。発売以来、筆者がずっと気になっていた製品で、今回お借りして試してみた。

センゴクアラジン「ポータブルガスストーブ(グリーン) 360°GLASS」(39,600円)。直販サイト限定のモデルで、炎が見える窓の部分が360度全方位のデザイン

お借りしたのは、「センゴクアラジン ポータブルガスストーブ(グリーン) 360°GLASS」。オリジナルの石油ストーブのデザインを踏襲した直販サイト限定のモデルで、炎が見える窓の部分が360度全方位の仕様になっている。

本体サイズは32×33.5×39cm(幅×奥行き×高さ)とコンパクト。オリジナルの石油ストーブに比べて寸胴なフォルムだが、それがかえってミニチュア版のような愛らしさで、ますます女子心をくすぐる。

2Lのペットボトルと大きさを比較

カセットボンベを使用する本製品は、ポータブルでどこでも利用できる点も魅力の1つ。アラジンのガスストーブには、カセットボンベの膨張を検知するとガス供給を止める「圧力感知安全装置」、室内酸素濃度が低下することで起こる不完全燃焼を事前に防ぐ「不完全燃焼防止装置」、転倒時や強い衝撃が加わった際に自動的にガスを止める「転倒時消化装置」、風等によって火が消えた際にガスを止める「立消え安全装置」が備わっている。これらの安全装置を備えていることで、室内でも使用が可能なメーカー公認のストーブだ。

両サイドのフックを外すと上下を分解できる
本体は上部のカバーと下部の点火部に分かれる
カセットボンベを外した状態。4つの安全装置を備えている

アラジンのガスストーブの発熱量は最大2kWと高出力なこともポイントだ。一般的なポータブルガスストーブの場合、0.8~1.2kWというのが平均的な数値で、アラジンは単純計算で2倍ほどのパワフルさ。

そのぶん重量は約5.7kgと、平均2kg程度の一般的な野外用ポータブルガスストーブに比べて2倍強重い。安全装置を豊富に備えた高い安全性能に加えて、およそ2倍の出力であることを考えれば相応の重さであると納得できる。

実際手にしてみた感じは、確かに軽いとは言えないものの、上部のハンドルを持てば女性でも片手で運べる程度。家庭内での移動やオートキャンプならばまったく問題なく持ち運べるレベルだ。

持ち運びしやすいハンドルを装備する

使用方法は、本体上のカバーを開いて、ガスボンベを装着。ガスボンベの装着はレバー式で、点火と火力調整、消火はダイヤルで行なう。カセットコンロと同じ操作性だ。

着火すると、憧れのブルーフレームのあの炎が我が家にも灯った!

ガイドに合わせてボンベを装着し、手前のレバーで着脱を行なう
点火と火力調整、消火はダイヤルで行なう。カセットコンロで慣れた手順だ
本モデルは炎が見える窓の部分が360度全方位の仕様。スタンダードなモデルは、円形の窓から炎が覗くデザイン

ポータブルガスストーブの室内での使用は、まさに小型の石油ストーブといった感じで、個室であれば十分暖かい。しかしアラジンのガスストーブは、ポータブルガスストーブに限らず、対流式で天面から上に向かって暖気が放出される仕組み。

そこで暖気を効率よく拡散させるための専用のストーブファンが昨年、Makuakeでの先行販売を経て、12月に一般発売された。アラジンのブルーフレームストーブに共通して使える純正のストーブファンで、ストーブの上に載せるだけで、ペルチェ素子による温度差を利用して発電する、電源不要のスグレモノだ。

「ストーブファン」をセット

せっかくなのでストーブファンも併せてお借りして試してみた。ストーブファンを載せて2~3分すると、羽根がクルクルと回転し始め、天面より上方向にじんわりと暖まっていたのが、ファンに面した側に暖気を届けてくれるため、より広い範囲で温もりが感じられるようになった。

直接的ではなく、ファンで起こした風に乗って暖気がふんわりと届けられるため、包まれるような柔らかで優しい間接的な暖かさがとても心地よい。13畳のLDKで試してみたが、30分ほどで平均して+2~3℃程度室温が上昇した。

2~3分ほどでストーブファンの羽根が回転し始める

ストーブファンの併用でもう1つありがたいのは、ガスボンベの使用量を抑えられる点。アラジンのガスストーブは出力が高いぶん、ガスボンベ1本あたりの燃焼時間は公称で約1時間40分~4時間20分程度。長時間の使用にはガスボンベを何本も用意しておく必要があり、そのぶんコストもかかることが難点だ。それがストーブファンを併用することで、弱設定でも十分暖かくなり、1本あたりの使用時間を延長できるため経済的だ。

屋外で使用できるのも大きな魅力

屋外での暖かさを確認するため、自宅のバルコニーでも試してみたが、外気温5℃前後であれば、真上はふつうに暖かく、単体でも火鉢や焚火のような感覚で囲んで暖を取るには十分。即暖を求めるのであれば真上に直接手をかざすのが最適だ。

またストーブファンを併用することにより、前方半径2mのほどの距離であれば温もりが感じられた。ファンがあると足元から身体部分までほんわかとベールに包まれるようにほのかな温もりが感じられる。厳冬期の屋外で何時間も過ごすというのは少々厳しいかもしれないが、手をかざして暖を取る用途としてはアリだ。

外気温5℃前後の屋外で点火。上部はとても暖かく、手をかざして暖を取るのには十分

バーナーの周りが筒状のガードで覆われているため、風に強い点もメリットだ。我が子の小中学校時代、真冬の河川敷で野球の練習や試合に付き添っていた際、凍えそうな寒さの中でこういう製品があったらとてもありがたかったと思う。ちなみに周辺を広範囲に暖めたい場合は、同じセンゴクアラジンから発売されている「シルバークイーン」という反射式のガスストーブが適しているだろう。

屋外でもストーブファンは有効。ファンの前方半径2メートルほどの距離でもほのかな暖かさが感じられる
ストーブファンには専用の置台が付属。使用後に熱を持ったファンを冷ますのに利用できる

なお、アラジンポータブルガスストーブは、ガスボンベなら基本的には使用可能だが、センゴクアラジン専用のカセットボンベの使用を推奨している。安全性のためと、イソブタンガスの比率を高めた低温時対応にもなっているそうだ。

というのも、アラジンに限らず、一般的にガスボンベは低温時にガスが気化しないこともあり、着火に難がある場合も。低温下では寒冷地仕様のアウトドア用ガス缶を使ったり、使用前にボンベを温めたりしなければならない。確かに専用のガスボンベを使用した場合でも、1〜2月の気温の低い日に屋外で試してみると、点火するまでに数回のダイヤル操作を要した。

専用のガスボンベ。イソブタンガスの比率を高めた仕様で低温時にも対応する。価格は4本パックで3,960円~

ずっと気になっていたアラジンの“映える”ポータブルガスストーブ。実際に試して感じたのは、抜群のインテリア性だけでなく、室内外で二刀流に便利に使えて、実力も十分。本気のアウトドア暖房としては力不足なところもあるかもしれないが、ちょっとしたお出かけにも持っていくことができる汎用性の高さは大いに魅力だ。冬季のサブ暖房としてはもちろん、お花見をはじめ春秋の行楽シーズンの肌寒い日のアウトドアシーンで1台あると重宝しそうだ。

かわいいだけでない、アラジンのガスストーブ。実用性も能力も優秀!
専用の収納袋も付属しておりポータビリティは良好。ガスボンベを2本収納できるポケットもあり気が利いている!
神野 恵美