藤本健のソーラーリポート

勢いを増す太陽光発電マーケット。京セラやシャープが新製品を展示

「藤本健のソーラーリポート」は、再生可能エネルギーとして注目されている太陽光発電・ソーラーエネルギーの業界動向を、“ソーラーマニア”のライター・藤本健氏が追っていく連載記事です(編集部)

 2月26日~28日、東京ビッグサイトで国内最大の太陽光発電に関する展示会、「PV EXPO 2014(太陽電池展)」が開催された。このPV EXPOと併設される形で、「FC EXPO(水素・燃料電池展)」、「太陽光発電システム施工展」、「バッテリージャパン(二次電池展)」、「エネテック ジャパン(加工技術展)」、「エコハウス&エコビルディングEXPO」、「スマートグリッドEXPO」、「WIND EXPO(風力発電展)」も同時開催され、「スマートエネルギーWeek 2014」という大規模なイベントとなった。

 本稿では、PV EXPOおよびスマートグリッドEXPOに出展されていた太陽光発電関連のブースを中心に、特に目立っていた展示についてレポートしていこう。

PV EXPO 2014も前回と同じく東京ビッグサイトで開催された
FC EXPOやバッテリージャパンなども併催された

勢いを増す国内の太陽光発電マーケット。テープカットにはケネディ米大使も

 今年で第7回目となるPV EXPO 2014は、ケネディー米大使をはじめ11カ国の大使や公使、そして大手メーカーのトップなどが参加してのテープカットによって開幕した。スマートエネルギーWeekの全体としては世界30カ国より、計1,594社が出展するという非常に大規模なものとなり、到底1日で回りきれるものではなかった。

PV EXPO 2014にはたくさんの人が訪れた
テープカットにはケネディー米大使の姿も見られた

 2012年7月の全量買い取り制度のスタートで、バブルといってもいいほどの盛り上がりになった、国内の太陽光発電マーケット。FIT制度の宿命として徐々に買取金額が下がっていくため、そろそろ落ち着いてきたのでは……と思っていたのだが、ますます勢いに乗っている感じで、出展社数も多く、来場者もかなり多い印象だった。

 日本マーケットに新規参入する海外メーカーも多く、今後どれだけの企業が生き残れるのだろう? そうなったときにサポートやはどうなるのだろう? という、素朴な疑問も次々と生まれてくる。各社とも保証期間がさらに伸びている感じで、「30年間の出力保証」などを謳うメーカーも散見され、少し心配になってしまうほどだった。

 PV EXPO会場を見渡すと、やはりその多くはメガソーラーや工場の屋根に載せる太陽光発電など、産業用の展示が中心。とはいえ、個人向けのものもいろいろあったので、ここでは個人向け、住宅用の情報を中心に見ていくことにしよう。

リベルテ――50kW未満の分譲型太陽光発電システムを販売

 今回の展示の中で、一番印象に残ったのは、「LIBERTE×楽天」というブランドで展示していたリベルテという会社の分譲型太陽光発電だ。メガソーラーなどというと、やはり大資本の企業しか参入できないし、「余剰の土地に太陽電池を」などと言われても、そんな土地を持っている人などごく稀だし、そこに自分で太陽光発電システムを設置するとなると、やはりハードルも高い。

 そこで土地の確保から太陽光発電システムの選定、設置、メンテナンス、さらには災害に対する補償、そして購入のためのファイナンスまで含めて、すべてを代行してくれる業者がいくつか登場してきている。その一つがリベルテなのだ。簡単にいえば投資案件として、マンションではなく太陽光発電を扱っているというわけだ。

「LIBERTE×楽天」というブランドで展示していたリベルテ
分譲型の太陽光発電システムを投資案件として扱う

 これまで兵庫県丹波市、茨城県潮来市、熊本県人吉市、大分県国東市など、さまざまな土地で展開しているようで、大きな土地に太陽光パネルを大規模に設置して、1つあたり50kW未満に抑える形で分譲している。50kW未満となるのは、設置が簡易でコストが安く済む低圧連系ができるから。価格的には土地込みで2,000万円程度となる。設置完了後、月々の売電金額が購入者の収入となり、年間200万円程度の売電が見込めるため、約10年間で投資分を回収できるというのだ。

広大な土地に太陽光パネルを設置して、1つあたり50kW未満に抑える形で分譲している
年間約200万円の売電が見込める。約10年で投資を回収できる

 この土地は借りるのではなく、買ってしまうため、20年間の売電が終了した後、どう処分するのかなど、考慮すべき点はありそうだが、これでうまく回していけば8%程度の利回りが得られる投資物件として考えられるというわけだ。もちろん、場所によって気候が違うので、発電量に伴い、収入も大きく変わってくるが、この点も考慮した上での価格設定がされているという。

 気になるのは、2014年4月以降、FIT制度での売電単価が下がるが、これによって収入見込みが大きく下がるのではないかという点だ。これについて担当者に確認してみたところ、「現在の36円+税という制度のもとで土地を確保して申請しているため、この金額で大丈夫です」とのこと。また若干ではあるが40円+税で確保した土地もあり、こちらはより高収入が得られるという。

 そのため、分譲価格は土地+機材という値付けではなく、利回りが同等になるように設定しているというので、なかなかトリッキーなシステムではある。最近新聞などに「申請された土地での太陽光の稼働率がまだ1割」という記事がよく出ていて、「これはどういうことなのだろう?」と疑問に感じていたが、リベルテの展示を見て、すべてが解けた気がした。

 なおリベルテの場合、メンテナンス費用が別途発生するとのことで、これは月額21,600円。これによって発電量のモニタリングや定期点検、また防草、除草メンテナンスが得られるとのことだが、10年間で計算すると約260万円となるので、この辺もしっかり考慮した上で検討してみるのも面白そうだ。

京セラ――単結晶シリコン太陽電池を製品化

 次に国内メーカーの動きを見ていこう。まず京セラは、単結晶シリコン太陽電池を打ち出してきた。これまで京セラといえば、多結晶のメーカーであり、頑なと思えるほど多結晶にこだわり続けていたが、ついに単結晶を出してきたのだ。

 広報担当者によると「住宅用は限られた面積しかないので、そこでより多くの発電をするためには、単結晶が必要であり、選択肢を増やした」とのこと。すでに2009年から研究を進めてきていて、ようやく製品化されることになったようだ。

 住宅用のラインナップとして「ECONOROOTS」シリーズを4月に発売するほか、「ECONOROOTS ADVANCE」シリーズ、「SAMURAI」シリーズも順次展開していく。もちろん多結晶も併売となる。

 一方、多結晶太陽電池も高効率化が進んでおり、セルベースでの変換効率18.6%を実現し、この夏から発売されるようだ。ちょうど2月19日に中国のJA SOLARが多結晶で19%を超えたという発表を行なったところなので、世界一ではなくなってしまったが、多結晶もまだまだ期待ができそうだ。

京セラも2009年から研究を進めてきた単結晶シリコン太陽電池を製品化
「ECONOROOTS ADVANCE」シリーズ
「SAMURAI」シリーズ
セルベースでの変換効率18.6%を実現した多結晶太陽電池

シャープ――新BLACKSOLARやVSHシステムを参考出品

 シャープは、これまでも「BLACKSOLAR」シリーズというバックコンタクト型の高効率製品の展開をしてきたが、さらに出力をアップした新BLACKSOLARを参考出品した。新BLACKSOLARの出力の詳細は今後発表するとのことだが、三角のパネルも新たに製品化されるため、寄棟型の屋根の場合、1.5倍近い出力が得られるケースも出てきそうだ。そのBLACKSOLARの次世代モデルにおいては、実験室レベルでのセル変換効率が24.9%を達成したという。

 時期は明記されていなかったが、少し先のシステムとして参考出展されたのがV2Hシステム。電気自動車と太陽光発電を組み合わせるというもので、クルマとして使用していないときに車載蓄電池を使って電力消費の平準化を図り、災害時にも車載蓄電池を使って家全体に給電できるというシステムだ。いわゆるZEH=ゼロ・エネルギー・ハウスを実現するためのシステムということだが、一般家庭に入るよりは、カーシェアリングやマンション、地上自治体などでの導入が先になるだろうとしている。

参考出品された新BLACKSOLAR
三角のパネルが製品化されれば、寄棟型の屋根では1.5倍近い出力が得られそうだ
次世代モデルのBLACKSOLARのセルも出展されていた
V2Hシステムも参考出展。展開時期は未発表
電気自動車と太陽光発電を組み合わせたシステムで、災害時にも車載蓄電池で給電できる

パナソニック――太陽光発電システムと連携可能なリチウムイオン蓄電池盤を展示

太陽電池パネルの新製品は展示されなかった

 パナソニックは、太陽電池パネル自体で目立った新製品はなかったが、太陽光発電と連携が可能な住宅用のリチウムイオン蓄電池盤なるものを展示し、2月28日からの受注を開始した。

 見た目は分電盤というこの機材は、内部に1kWhのリチウムイオン電池が入っており、停電時に備えることができる仕組みとなっている。通常は、系統からの電力で満充電にしておくが、いざ停電になると自動的に給電を開始できる仕様になっている。

 また、太陽光発電のパワコンからの入力端子も内蔵しているため、長時間停電しているような場合でも、スイッチを切り替えることで太陽光発電による自立発電の電力を充電に生かすことが可能だ。

 価格的にもメーカー希望小売価格が398,000円と、比較的手ごろではあるが、容量が1kWhで、出力は500VA。そのため万能とはいえないが、いざというときの備えとしては良さそうだ。

1kWhのリチウムイオン電池を搭載するリチウムイオン蓄電池盤
通常時に電力を蓄えておき、停電時に自動で電力を給電する

三菱電機、ソーラーフロンティアは新製品/新サービスを展示せず

 国内大手でいうと、三菱電機、ソーラーフロンティアがあり、それぞれ大きなブースでの展示を行なってはいたが、ここ半年以内での新しい製品やサービスといったものはないようだった。

カーポートの太陽光発電システムを展示するメーカーも

カーポートの屋根に太陽電池パネルを並べる

 個人向けの製品としていくつか展示されていたのがカーポートの太陽光発電システムだ。宮崎県にある植松商事は、前述のリベルテのような分譲型のサービスではなく、土地の賃貸という形でサービスを展開する企業だが、同社がソーラーカーポートという製品を公開した。

 これはカーポートの上にソーラーフロンティアのCIS太陽電池パネルを並べるというもの。用途に応じて、横幅のサイズを変更できるため、個人用から業務用の駐車場用まで利用できるという。

 PV EXPOで展示されていたものは横幅が6mあり、4kWの太陽電池パネルが敷き詰められていて、価格は290万円程度。同社ではソーラーフロンティアの代理店として住宅用のパネルも設置しているとのことだが、住宅の屋根だと大きい家でも5kW程度しか載せられないので、ソーラーカーポートと組み合わせて10kW以上として全量買取にする提案を行なっていきたいとのことだ。

 同じくカーポートを展示していたのは岡山県の山文。こちらは完全に個人用のもので、クルマ1台分のカーポートとなっている。ユニークなのは、足が2本で構成されている点。これによりクルマの出し入れが非常に楽になるが、強度の問題から屋根が2重構造になっており、上側の屋根にパネルを載せる形になっている。

 出力的には2.4kW程度まで載せられる面積があり、会場で展示していたのはパナソニックのHIT太陽電池を9枚、計2.14kW分を搭載したもの。同社では、カーポート単体であれば80万円程度、太陽電池込のものを180万円程度(施工費は別途)で販売するという。

足が2本で屋根が2重構造のカーポート。上側の屋根にパネルを載せる

フレームレスの両面ガラスモジュール

 もう一つ目についたのが、フレームレスの両面ガラスのモジュールを複数社が展示していたことだ。

 中国系メーカーのトリナ・ソーラー・ジャパンが展示していた「DUAL GLASS」は、多結晶太陽電池60セルで245-255Wという製品だが、バックシートがないため、火災になっても燃えないのが特徴。金属部のフレームがないから海辺など塩害のある地域でも利用できるという。また、フレームによる外側からの押し付けがないのでマイクロクラックが生じず、結果的に長寿命になるとしている。

 同様に、両面ガラスのパネルは日清紡ホールディングスでも展示していたが、こちらはシースルーである点がポイントとなっており、ビルの屋根用などを建材として利用し、採光できるパネルとして打ち出していた。

DUAL GLASSは、火災に遭っても燃えない多結晶太陽電池を展示した
日清紡は採光しながら発電できるパネルを出展

 そのほか、特に個人用というわけではないが、いくつか面白かったものを取り上げる。ひとつは、大阪のIDECシステムズ&コントロールズが、兵庫県佐用町と共同で作っている国内初の木造建築を架台にした5MWのメガソーラー。佐用町は、2009年8月の豪雨による大水害を経験しているが、山林では大量の倒木が発生し、流木が河の流れをせき止めて浸水被害が拡大するという問題が起こった。

 そこで健全な山林育成を推進し、防災力を高め、循環型環境配慮社会への貢献を目的に、佐用町の木材を利用したメガソーラーを作ることになったのだ。やはり金属製の架台と比較すると、どうしても金額的には高くなってしまうが、強度的にも寿命もまったくそん色なく利用できるという。半年前にプロトタイプ的な187kWのシステムが完成しているが、5MWのものは4月に着工し、9月に系統連系する予定となっている。

IDECシステムズ&コントロールズと兵庫県佐用町が共同で製作する5MWのメガソーラーの模型
国内初の木造建築を架台にした太陽光パネルとなる
187kWのシステムが半年前に完成している

無線LANからの信号を受けシーソーが左右に傾くモニタリングシステム

 太陽光発電のモニタリングシステムを提供する、NTTスマイルエナジーが参考出品していた「SEESAW」は、インテリア的に使えるモニターシステム。無線LANからの信号を受けることで、シーソーが右や左に傾くとともに、上に載っているガラス玉が赤や緑に変色する不思議な機材だ。

 発電した電力を売電しているときは右に傾いて緑に光り、発電量よりも使用量が多きときは左に傾いて赤く光るため、子供が見てもすぐに状況が認識できるというわけだ。一般的なモニターは設置後あまり見なくなるケースが多いが、こうしたインテリアなら楽しみながら節電行動を促すことができそうだ。

無線LANからの信号を受けると、シーソーが左右に傾くとともに、上に載っているガラス玉が赤や緑に変色する

 以上、PV EXPO 2014について、独断と偏見によりレポートしてみた。会場の外側では、PV EXPO主催者のリード エグジビション ジャパンが来年のPV EXPOのテナントを募集していた。すでにかなりのスペースが埋まっていたようなので、まだしばらくこの勢いは続きそうだ。今後も定点観測的にレポートは続けていきたいと思っている。

藤本 健