藤本健のソーラーリポート

【エコプロダクツ2012】
日立、ダイキンなども太陽光に参入。ベンチャーによる新技術も展示

「藤本健のソーラーリポート」は、再生可能エネルギーとして注目されている太陽光発電・ソーラーエネルギーの業界動向を、“ソーラーマニア”のライター・藤本健氏が追っていく連載記事です(編集部)

 12月13日~15日の3日間、東京ビックサイトで第14回目となる「エコプロダクツ2012」が開催された。「日本最大級の環境展示会」というだけに確かに巨大で、ビックサイトの東1ホール~東6ホールまでの6ホールを使い711社・団体、計1,735小間のブースが出展。来場者数は3日間で178,501人に上った。

 一言で環境といってもテーマはさまざま。省エネ、リサイクル、ゴミ、CO2削減、緑化、創エネ……。あまりにも多くのブースがあるので1日では到底回りきれないほど。その中で今回は太陽光発電を中心に、HEMS(家庭のエネルギー管理システム)、LED関連ネタも拾ってみた。

エコプロダクツ2012の会場となった東京ビッグサイト

日立も遂に太陽光発電に参入。自社製の高効率パワコンで電力変換効率は96%

 今回は初日の12時ごろから終了の17時ごろまでの約5時間の間、取材を行なったが、毎年のことながら、会場に入ってとにかく目立つのがたくさんの小学生たち。環境教育ということで、社会見学にやってくる学校が数多くあるのだ。それに合わせ、出展者側も子供たち向けの展示にしているところも多く、ほかの展示会とはだいぶ趣が異なる。

 つい先日、幕張メッセでPV Japanが開催されたばかりなので、太陽光関連の新ネタはあまりないのでは……とも思っていたが、回ってみるとそれなりにいろいろある。特に、最近で太陽光発電システムの販売をスタートしたという企業も多かったので、まずは新規参入企業について紹介していこう。

日立は9月より太陽光発電システム市場に参入。パネルは薄膜系と単結晶シリコンの2パターンが用意される。写真は薄膜系で、ソーラーフロンティアからのOEMとなる

 大手家電メーカー各社ほぼすべてが太陽光発電に取り組んでいる中、唯一製品を出していなかったのが、日立。その日立が今年9月から、このビジネスに参入。すでに、日立系列の電気店などを中心に販売をスタートしている。

 会場には、太陽電池パネルとパワコンが展示されていたが、パネルを見ると一見してCIS(薄膜系)タイプと分かる。担当者に尋ねてみると、まさにそのとおりで、ソーラーフロンティアからOEM供給を受けているとのこと。展示されていたのは95Wのパネルだったが、ほかにも155Wのパネルや、単結晶シリコンの195Wのものもあり、ニーズによって3種類から1つを選択できるようになっているという。単結晶のほうは中国・サンテックパワーからのOEMだそうだ。

パワコンは自社製。電力ロスを抑える日立独自の「HI-MPPT制御」を採用している

 もっとも、他社から供給を受けているのはパネルだけで、パワコンほかその他はすべて日立製。とくにパワコンは、発電の電力ピーク点を探索して取り出すことで、ロスを抑えてしっかりと電力を取り出す日立独自の「HI-MPPT制御」となっており、電力変換効率は96%を実現しているという。そのパワコンは室内設置タイプとなっており、4.0kWモデルと5.5kWモデルの2種類がある。

ダイキンは3つの10年補償、LIXILは工事費を安く抑える架台がウリ

 今年4月から太陽光発電システムに参入したのは、エアコンメーカーのダイキン。同社はエアコン、エコキュート、IHクッキングヒーター、ヒートポンプ式温水床暖房といった家電機器を用いながら、スマートハウスに取り組む中でソーラーは必須であるとの考え方から、自社製品としてラインナップに加えたとのこと。

 ダイキンのパネルは多結晶で、京セラからのOEM。またパワコンはオムロンからのOEMとなっている。現在パネルは4つのモジュールタイプがあり、これらを組み合わせることで屋根にムダなく配置ができるという面でも京セラと同様だ。

 では、他社との差別化をどのようにしているのか? これについてダイキンでは「3つの安心」をキーワードに取り組んでいるという。具体的には「商品10年保証」、「災害10年補償」、「工事10年補償」であり、とくに自然災害であっても補償するという点と、雨漏り等の事故があった場合、家に対しての補償を行なうという点で、ユーザーの獲得を目指すとのことだ。

ダイキンも今年から参入。パネルは京セラのOEMとなる
「商品10年保証」、「災害10年補償」、「工事10年補償」という3つの補償システムが特徴という

 もう一社、会場内で見つけた新規参入大手がLIXIL。同社は2年前からビジネスをスタートしており、「ソーラーラック」という製品を出している。同社のパネルは単結晶のものでありOEM供給を受けているが、メーカーは明かしていないとのこと。

 パッと見てユニークに感じられたのが、「L・Eラック」と呼ばれる、同社が開発した架台。縦横ラック方式による垂木施工により施工時間を大幅に削減することで、工事費を安く抑えられるという。また、オプションとして「安心補償制度」があり、設置後に火災、落雷、風災、雪災などがあっても、それを補償するという。

LIXILの太陽光発電システム。「ソーラーラック」という商品名で販売している
パネルは単結晶。OEM元は明らかにされていない
参考出品されていた、小型・垂直軸型の風力発電機。現在製品化を目指しているとのことだが、価格は1kW当たり100万円を下回る

 なおLIXILでは、小型・垂直軸型の風力発電機を参考出品していた。ここに展示されたコンセプトモデルは出力2kWのもので、今後の製品化を目指しているところ。この垂直軸型風車は一般の小型風車と比較し、風向きの変化に強く、静かであるのが特徴。現在、小型風力発電は1kWあたり100万円程度が相場となっているが、それより安い価格を目指すという。

発電と同時に熱も回収。2倍のエネルギーが得られる二軸追尾集光システム

 今回の展示の中で一番印象に残った製品が、仙台のスマートソーラーインターナショナルという、2011年6月に設立された会社が開発した、二軸追尾集光型太陽光発電システムだ。

スマートソーラーインターナショナルが開発した、二軸追尾集光型太陽光発電システム
太陽を追尾して効率良く発電するだけではなく、熱もエネルギーとして回収する点も特徴だ
シリコン型の太陽電池は熱によって発電効率が落ちるが、クールシリコンという冷却技術を使用している。しかも、熱交換器を介することで、温水も取り出せる

 これは、太陽を追いかける追尾型であるだけでなく、集光型になっているというのが、非常に大きな特徴。シリコン型の太陽電池を採用しているが、熱によって発電効率が極端に低減するシリコン型太陽電池は、これまで集光型は向かないとされていた。では、なぜそれが実現したのか。ここには「クールシリコン」という冷却技術が使われている。これはポンプを使用しない冷却機構であり、熱交換器を介すことで、温水を取り出すこともできるというユニークなもの。実際展示されていたシステムは1つで200Wの出力を持つと同時に、200W相当の熱も取り出すことができるので、従来の太陽光発電と比較して2倍以上のエネルギーが得られるのだそうだ。

 すでに太陽の向きを自動追尾する形でミラー部が回転する1軸追尾型は農地やビルの屋上などへの設置が進んでいる。今回展示されたのは、それに加え傾斜角度も変わる2軸となっており、従来製品よりもさらに効率の良い発電が可能になるという。

宮城県のイチゴ農園で使われている例
名古屋のビルの屋上でも利用されているという

弱い光でも効率良く発電する色素増感太陽電池は、小電力の機器に活用

フジクラが展示していた色素増感太陽電池

 同じ太陽電池でも、だいぶ用途が違うのが、フジクラが展示していた色素増感太陽電池だ。

 色素増感太陽電池とは、シリコン半導体を使用せず、酸化チタンと増感色素で発電を行なうというもの。これは印刷技術で製造するため、従来の太陽電池と比較して形状の自由度が高く、製造時のエネルギー消費が極めて低いというのが特徴。また色素の種類を変えることで、光源のスペクトルに合わせた調整が可能で、室内照明でも発電できるのも一般的な太陽電池との大きな違いだ。

電力を確保するのが難しいユビキタス用途のセンサーでの活用が向いているという

 今回展示されていた色素増感太陽電池は、室内であったり北面への設置を想定したもので、0.1sun(直射日光の1/10)で出力2Wという微弱なもの。しかし、シリコン型の太陽電池では0.1sun程度ではほとんど発電できないのに対し、色素増感太陽電池なら効率よく発電できるので、暗い場所でもある程度の電力を確保できるという。また、温度や湿度を計測するなど、電力を確保するのが難しいユビキタス用途のセンサーでの活用などにも向いているという。まだ具体的な製品計画などはないが、あと1年程度で実用化をしていきたい考えのようだ。

IKEAのLEDデスクスタンドは、台座部の太陽電池を取り外して日なたで充電できる

IKEAのLEDスタンド「SUNNAN」

 新製品というわけではないが、会場での展示で目立っていたのが、IKEAの太陽電池による充電式デスクスタンド。さまざまなカラーバリエーションを備える「SUNNAN」というこのランプは、台座部分が太陽電池プラス充電池という構造になっており、台座部から取り外しが可能。これを日中、日なたにもっていって充電を行ない、夜間にランプ部とドッキングさせることで、光らせることができる。

 晴天時の充電時間は9~12時間で、フルに充電した状態で約3時間点灯する。価格も1,990円と手ごろだ。このSUNNANに限らず、IKEAでは電球を含むすべての照明機器のLED化をワールドワイドで進めており、国内でも近いうちに全部がLEDになるという。会場には、インテリア系のLED照明機器も展示されていた。

台座部分の充電池内蔵の太陽電池ユニットを取り外し、日なたに持っていき充電する
インテリア系のLED照明機器も展示されていた

オフィスの電力を90%も削減するLEDとは?

 LEDを使った製品については、直管型蛍光灯の代替製品や、電球型製品なども各社が展示していた。

 この中で目を引いたのが、ジャストコーポレーションという会社が展示していたオフィス用のLED照明機器「BO-PA」。というのも、通常の蛍光灯からこれに置き換えることで、オフィスの照明で90%の節電ができるというからだ。

 通常、LEDにすると蛍光灯と比較して50%程度の電力削減と言われているのに90%とはどういうことなのか? 実はこれ、単にLEDに変更するだけでなく、照明を天井の直管ライトからデスクライトへと変更することで実現しているのだ。ただ、それだけだと非常に暗いオフィスになってしまうので、上向きのライトを取り付け、天井を照らすことで、明るくしている。たとえば、下向きに3つのライトがあるY字型のタイプの場合、下向きで23W×3=69W、上向きに13Wで、消費電力は計82W。これで69,300円という価格設定となっている。

ジャストコーポレーションのブース。「オフィスの照明の消費電力を90%削減する」というキャッチコピーが前面に出ている
BO-PA本体。その正体は、デスクスタンド型のLEDライトだ

家庭用エネルギー管理システムが続々登場。補助金によるメリットも

 最後に、大手家電メーカーによるHEMS関連を2つほど紹介しよう。

 パナソニックがエネルギーの見える化ということで展示していたのがスマートHEMS。その中核には「AiSEG(アイセグ)」という機材が置かれており、電気使用量の見える化だけでなく、これに対応するエアコンやIHクッキングヒーターなどがあれば、状況に応じて節電モードに自動設定することも可能。さらに電気に限らず、水道、ガスなどを含めたエネルギー消費量をテレビやパソコン、スマートフォンなどへ表示させることができるのもAiSEGの特徴となっている。

パナソニックのHEMSの中核となる装置がAiSEG(写真左)だ
太陽光発電システムと接続しておけば、発電状況も確認できる

 具体的にはAiSEG用エネルギー計測ユニットと、AiSEGの組み合わせで実現でき、水道やガスの使用量を計測するためには、専用のパルスつき流量計を設置する必要がある。また太陽光発電システムと接続しておけば、発電状況を確認することもできる。ただし、これらのデータはクラウドにあげるのではなく、基本的に家の中でみるためのもの。一定期間データはAiSEG内に保存されているが、期間を過ぎると消えていってしまう。

 そのAiSEGとAiSEG用エネルギー計測ユニットのセット価格は、税抜きで107,000円とかなり高価。しかし、これはHEMS補助金対象の製品で、国から10万円の補助金が受けられるとのこと。タダとまではいかないが、かなり安価に導入できるようだ。

 もう1つは三菱電機のPV・EV連携HEMS。名前のとおり、太陽光発電と電気自動車を組み合わせるHEMSで、災害などによる停電時でも1週間以上の電気的自立を可能にするというシステムだ。

 平常時は太陽光発電による電力、電気自動車の蓄電池をうまく活用することでピークシフトを実現でき、HEMSコントローラによる家電機器制御を活用しエネルギーの最適利用を行なう。一方、災害時などで電力供給がストップした場合は、晴天ならば太陽光発電による電力をそのまま家庭で利用しながら、電気自動車へ充電をしていく。雨天や夜間は、電気自動車の蓄電池から電気を供給していくのだ。この際、太陽光発電と蓄電池の双方に対応できるPV・EV連携パワコンのはたらきにより、過剰な電気を使おうとすると、HEMSによって抑制がかかるようになっている。

 三菱電機によると、まだすぐに商品化という段階ではないが、現在、神奈川県鎌倉市で実証実験を行なっており、かなり実用化に近い段階にはあるという。

三菱電機のPV・EV連携HEMS。太陽光発電と電気自動車を組み合わせるHEMSだ
停電しても、EVの電池を使って生活できる

 以上、「エコプロダクツ2012」で見つけた主に太陽光発電関連のものをピックアップしてみたが、いかがだっただろうか? 非常に興味深い製品もいろいろあったので、今後も詳細を取材して行きたい。

藤本 健