ぷーこの家電日記

第468回

春だ春だ。忙しい旬の季節がやってきた。

予定がないと「はぁ、今日もゴロゴロして終わってしまった」と無駄な週末を過ごして後悔する私。この頃は週末が雨続きで私の出不精でぐうたら度合いが増しているのだけれど、何もせずに過ごしていても、とにかく忙しいのがこの季節だ。

私は“多趣味は無趣味”みたいなところがあって、結構なんでもハマるとどっぷりと一過性のブームとしてとことんハマるのだけれど、熱が冷めるとまるで憑き物が取れたみたいに興味を失ってしまうところがある。要は熱しやすく冷めやすいのだけれど、それが故に、全ての物事において中途半端で何もできない人間だ。

そんな私が数年前に家庭菜園にハマって、それが一過性のブームではなく今もハマり続けていることには自分でも驚くし、やっと何かに身を寄せられたみたいな安心感と嬉しさがあったのだけれど、それより前にもう1つずっと続いている趣味があった。それは趣味と呼ぶよりもただの特性なのかもしれないけれど、とにかく「食いしん坊」であることだ(笑)。

食べることが好きで好きで堪らない。食への好奇心と執着と熱量はきっとかなりのもので、そのためだったら普段ぐうたらで出かけるのも億劫な私でも少し身軽な行動派になれるし、料理だって食い意地のおかげでできるようになったようなものだ。料理が好きなのではなく、食べることが好きで、その手段としての料理が身についたのかもしれない。

料理といっても、特別手の込んだ料理はできない。シンプルかつ名も無き料理みたいなものも多いけれどそれが美味しい。そして夫との唯一の共通の趣味も「食べること」かもしれないし、夫と過ごしてよかったなと思うことの上位に「食べ物の好みがあっている」ということがある。それくらい食べることは私にとって重要な位置に存在するのだ。

そんな食べることが趣味な私は、今とても忙しい。旬がとても忙しいのだ。春になって暖かくなってくると、一気にいろいろ動き出す。山菜も出始めるし、たけのこだって顔を出してきたらしい。私にとってこの季節の恒例となってきた楽しみは「春子椎茸」と「春アスパラ」だ。

椎茸は年中食べられる食材だけれど、採れる時期によって「春子」「藤子」「秋子」「寒子」と呼ばれる。私は特にこの3月から出始める「春子」と呼ばれる椎茸がべらぼうに好きである。冬の寒さの中じっくりゆっくり原木で育った椎茸は、肉厚で身が締まってとにかく物凄く美味しい。初めて食べた時はまさに顎も頬も落ちそうだった(笑)。それからは毎年楽しみにしている食材で、食べると「春が来たんだなぁ」と嬉しくなってしまう。炭火で炙るだけで最高に美味しいステーキのような食べ応え。

同じくアスパラもメインを張れる数少ないお野菜! アスパラが出始めると「春が来た!」と嬉しくなるし「アスパラってこんなに美味しかったっけ?」と毎年毎度感激してしまう。さっぱり爽やかな夏アスパラも美味しいけれど、濃い香りと味の春のアスパラは格別だ!

椎茸とアスパラと言いながら、山菜の天ぷらも食べたいし新玉ねぎの甘さと柔らかさも放ってはおけない。お湯に通した瞬間にパッと色鮮やかな緑になるわかめのしゃぶしゃぶだって今の季節しか食べられないご馳走だ。胃袋のスペアが欲しいほどに忙しい(笑)。体も動かさず胃袋ばっかり動かしている。

食べてばかりじゃいけないし、せっかく初マラソンに出て少しは運動をしていたのだから継続して体も動かさなきゃもったいない。しばらく続いた週末の雨だけれどまた行楽日和の週末になりそうだ。ちょっと腹ごなしに夫と少し遠くまで出掛けたい。数年ぶりのイチゴ狩りもいいし、早起きして市場で旬の魚や貝を探すのも楽しそう。そしてそして今私は潮干狩りに猛烈に行きたい! と出かける計画もつい食べることばかりに偏りがち(笑)。それでも数年ぶりに行動制限もなく過ごせる今年の春は、久しぶりに開放感に満ちて物凄く嬉しい。

先日近所の公園にフラッと桜でも見に出かけたら、去年よりたくさんの人で賑わっていた。桜を見ると「春が来たなぁ」と感じるし、色々な思い出が走馬灯のように駆け巡る。昔はただ「綺麗だな」って思っていたものが、「あと何回見れるんだろうか?」みたいな気持ちが混じり始めて、ちょっと切なくなったりと自分の中の老いを感じるようにもなってしまった。

旬の食べ物も同じで、「いつ誰とどこで」食べたかの記憶がぶわっと湧き出てくる。今食べているものもきっと、いつかの思い出となるんだろう。こんなに爛漫な季節なのにちょっとしんみりしてしまうのは、我が家がこのごろ直面している親の介護の問題の影響かもしれない。かなり切ないことも多いけれど、それでも思い出がすごく助けてくれることも多い。

食道楽の我々夫婦も、あと何度食べられるか分からない旬の味を今年も迎えられたことを全力で喜びつつ、来年も再来年も過ごしていけたら嬉しいなぁと思っているのであります。さて今夜は何を一緒に食べるかなぁ。

徳王 美智子

1978年生まれ。アナログ過ぎる環境で育った幼少期の反動で、家電含めデジタル機器にロマンスと憧れを感じて止まないアラフォー世代。知見は無いが好きで仕方が無い。家電量販店はテーマパーク。ハードに携わる全ての方に尊敬を抱きつつ、本人はソフト寄りの業務をこなす日々。