大河原克行の「白物家電 業界展望」

白物家電が好調な電機主要各社の2010年度上期決算

~エコポイント、猛暑が後押し
by 大河原 克行

 電機メーカー各社の2010年度上期(2010年4~9月)連結決算が出揃った。

 電機大手8社(日立製作所、パナソニック、ソニー、東芝、富士通、三菱、シャープ、NEC)の連結決算は、すべての企業が営業黒字を達成し、全社が増益となっているほか、売上高は、富士通、NECのIT系2社を除いて増収となった。

 8社合計の連結売上高は22兆1,778億円、営業利益は8,317億円。前年同期の8社合計では営業利益で908億円の赤字だったことに比較すると一転して、大幅な黒字化を達成。日本の電機大手の業績が回復基調にあることを裏付ける結果になったといえよう。

 家電事業に関しても、各社好調な業績となっている。

 日本国内では、エアコン、冷蔵庫が、猛暑とエコポイント制度の影響で大幅な成長となっているほか、新興国市場での需要拡大も後押ししているのが原因だ。

家電販売の売り上げが過去最高――パナソニック

10月21日より発売になった、パナソニックのエアコン「Xシリーズ」

 パナソニックのアプライアンス部門の売上高は前年同期比7%増の6,367億円、営業利益が84%増の491億円。

 パナソニックの大坪文雄社長は、「国内家電販売は、エコポイント制度や猛暑の影響があり、過去最高の売り上げを達成。さらに、中国では縦型洗濯機、壁掛けエアコンが好調であり、インドネシアの省エネ型冷蔵庫なども好調。生活研究を十分に行ない、機能を限定した現地仕様の製品が受けている」とする。

 エアコンの販売金額は、前年同期比14%増の1,478億円、冷蔵庫は5%増の685億円。7月下旬からの猛暑の影響が大きかったエアコンの第2四半期(7~9月)実績は前年同期比28%増の669億円と大幅な伸びをみせている。

 「エアコンは欧州市場向けを除いて2桁で推移。冷蔵庫、洗濯機も好調。アプライアンス事業は営業利益率が7.7%と、前年同期の4.5%から大幅に改善している」(パナソニック・上野山実常務取締役)としている。

炊飯器や掃除機など付加価値製品が好調――三洋電機

 パナソニックの連結対象となっている三洋電機は、洗濯機を含むコマーシャル部門の売上高が前年同期比1.5%減の1,455億円、営業利益は66.7%増の10億円。白物家電などのコンシューマエレクトロニクス部門の売上高が17.3%増の1,119億円、営業利益は100%増の34億円となった。

 「コンシューマエレクトロニクス部門は、炊飯器、掃除機が、売り上げを拡大して増収。さらに、営業利益が倍増となったのは炊飯器、掃除機、電動アシスト自転車など、付加価値の高い製品が好調であることが要因。黒字基調となっている。また、コマーシャル部門では国内向けに洗濯機の販売が増加。一方で企業の設備投資が低迷しており、業務用エアコンは減少した」(三洋電機・松葉健次郎取締役常務執行役員)という。

三洋電機の炊飯器「匠純銅 おどり炊き ECJ-XP2000」空気清浄機能付きの掃除機「airsis(エアシス) SC-XD4000」

 さらに太陽電池を含むエナジー部門は、売上高が0.2%減の2,078億円、営業利益は30.2%増の112億円。「エナジー部門は、為替がマイナス要因となっているが、グリーン関連事業の増収、コストダウン効果が効いている。太陽電池は国内を中心に大幅な伸張をみせている」と語る。

 HIT太陽電池の販路が、パナソニック電工ルートにも広がったことで、今後、太陽電池の販売にさらに拍車がかかることになりそうだ。

エアコンやテレビなどエコポイントが売り上げを後押し――日立

12月上旬より発売になる日立アプライアンスのエアコン「イオンミスト ステンレス・クリーン 白くまくん Sシリーズ」

 日立製作所は、白物家電や薄型テレビなどを含むデジタルメディア・民生機器の売上高が10%増の5,069億円、営業利益は222億円増の109億円と黒字転換した。

 空調機器が猛暑の影響で国内向けが伸張。海外向けも好調に推移。増益にも貢献した。薄型テレビの構造改革の成果も増益に貢献している。

 「猛暑、エコポイントが増収に大きく影響。上期から国内白物家電事業は改善している。また海外展開についても成果が出始めており、年間を通じて業績はよくなっている。さらに、構造改革により、下ブレ要因は減ったと見ている。だが、足下の好調ぶりとは別に、下期は、テレビや白物家電の価格が大きく下落していること、国内エコポイントが12月から半減すること、1月から制度が変わることなどの要因も見逃せない」(日立製作所の三好崇司執行役副社長)とした。

エコポイントや猛暑の影響により黒字に転換――東芝ホームアプライアンス

東芝ホームアプラインアンスのエアコンの新モデル。大清快 JDRシリーズ プレシャスホワイト(上) プレシャスシャンパン(下)

 東芝は、家庭電器部門の売上高が前年同期比3.4%増の2,947億円、営業利益が前年同期の75億円の赤字から、2億円の黒字に転換した。

 「エコポイント制度の効果継続や、猛暑の影響により、白物家電、家庭用エアコンが好調で部門全体で増収。さらに構造改革の成果で黒字化した」(東芝・村岡富美雄副社長)という。

 同社では、4セグメントのすべてが黒字転換したが、最も営業利益が少ないのが家庭電器部門。だが、同部門が増収増益となったのは好材料だといえる。

太陽電池の売り上げが大幅増――シャープ

 シャープは、白物家電を担当する健康・環境機器事業の売上高が前年同期比13.2%増の11,336億円、営業利益は48.0%増の82億円となった。

 「国内のエコポイント制度の影響や猛暑の影響もあり、エアコン、冷蔵庫の販売が好調」と、片山幹雄社長は語る。

シャープのプラズマクラスターエアコン「SXシリーズ」シャープのプラズマクラスター冷蔵庫

 また、太陽電池は、売上高が50.7%増の1,299億円、営業利益が286.4%増の40億円と大幅な増収増益となった。

 「国内向けの販売が好調であるのに加えて、海外での販売も伸張した。だが、競争激化や為替への対応が求められており、太陽電池は地産地消型モデルの展開や、現地でのバリューチェーンを構築していく必要がある。すでにユーロ圏でのそれに向けた展開を開始した」などとした。

 太陽電池の上期の販売量は前年同期比77.3%増の579MW。通期では、64.2%増の1,300MWの販売を見込んでいる。

太陽電池、液晶テレビが好調――三菱電機

三菱電機の国内住宅用4本バスパー電極採用太陽電池モジュール

 三菱電機は、家庭電器部門の売上高が前年同期比13%増の4,655億円、営業利益は255%増の264億円。

 同社では、今年夏の猛暑により需要増となった国内外向け空調機器、各国政府補助金制度の効果などによる国内外向け太陽光発電システム、国内向け液晶テレビなどの伸張により増収増益になったとしている。

 第2四半期の家庭電器の営業利益は前年同期から129億円改善して、123億円の黒字へと転換している。エアコンの好調ぶりが影響している模様だ。

海外向け製品の販売が拡大――ダイキン工業

 電機大手8社のなかには含まれないが、空調事業を展開するダイキン工業はエアコンの伸びが特筆される。

 同社の空調・冷凍機事業の売上高は、前年同期比10%増の4,988億円、営業利益は59%増の362億円となった。

 「猛暑により国内ルームエアコンの需要が大きく、販売は前年同期を大幅に上回ることができた」としており、商品別では、普及機ゾーンでの販売が大きく伸張。高機能モデルでは、業界初となる4方気流を搭載した「うるるとさらら」の販売が好調だったという。国内業務用空調機器は、企業の設備投資の緩やかな回復傾向もあり、パッケージエアコンが前年実績を上回ったという。

 国内では、エコキュート事業において、エコ・プランナーズ・クラブ店による販売施策が功を奏して、シェアが上昇したという。

 また、海外空調事業では、欧州地域において、7月に入りイタリア、スペインなどの主要国での気温上昇により住宅用空調機器の販売が回復。中国・アジア地域では、中国での業務用空調機器および住宅用空調機器の販売が増加。中国の上期売上高は過去最高を更新したほか、ベトナムでは住宅用空調機器を中心に販売が好調に推移し、販売が拡大した。

 北米地域では、大型空調(アプライド)市場の環境は厳しいものの、昨年米国に開設したアプライド開発センターで開発した新商品が好調だったという。

 同社では、通期計画を修正し、空調・冷凍機事業の売上高は1兆60億円と、5月の公表値に比べて60億円の下方修正。だが、営業利益は30億円上方修正し、675億円とした。

 国内ルームエアコンでは、光速ストリーマ技術を全機種に搭載し、加湿および4方気流とあわせて差別化機能を訴求。空気清浄機では、下期は、製品ラインアップの拡充とともに、販売ルートの強化によって、前年比20%の通期60万台の出荷を目指すという。

ダイキン独自の空気清浄技術「光速ストリーマ」を搭載したエアコン「うるるとさらら Rシリーズ」同社の加湿空気清浄機「うるおい光クリエール」シリーズ

 このように、主要電機各社の2010年度上期業績は、白物家電事業に関しては、好調な業績となった。

 とくに、猛暑に支えられたエアコンは、7月上旬までの厳しい事業環境から一転して、各社の事業成長を支えるものとなった。

下期は各社とも厳しい見通し

12月からポイントが半減するエコポイント制度による影響などを考慮して、下期の見通しを慎重にとらえている企業が多い

 だが、下期の見通しについては慎重な姿勢を見せている企業が多い。

 エアコン、冷蔵庫を対象に行なわれているエコポイント制度が12月からは対象ポイントが半減すること、1月から開始されるエコポイント新制度の影響がどうなるのかといった不透明要素もある。エコポイントの駆け込み需要に関しても、「売り場は薄型テレビに集中する傾向があり、同じエコポイント制度の駆け込み需要でも、エアコン、冷蔵庫の売り場とはかなり温度差がある」という指摘もあり、需要は限定的との見方も出ている。

 さらに主要製品での価格下落の影響も見逃せないほか、昨年秋から急成長を遂げてきた空気清浄機も、下期からは、比較対象となる前年実績の分母が大きくなるため、大きな成長が見込みづらいという側面もある。

 一方で、成長領域としては、新興国を中心した海外事業の拡大が鍵になるといった点が各社に共通した認識となる。

 いずれにしろ、下期が上期並の好業績になるかどうかといった観点では、各社とも慎重な姿勢を見せていることに変わりはない。





2010年11月24日 00:00