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シャープが満を持して発売する「プラズマクラスタードライヤー」とは

~コンセプトは“すっぴんを美しくする”
by 神原サリー
「プラズマクラスタードライヤー IF-PB1」

 シャープは今月2日、独自のプラズマクスター発生機構を搭載した「プラズマクラスタードライヤー」を発売した。高濃度プラズマクラスターの発生ユニットが内蔵され、水分子コーティング機能により髪を乾かしながら保湿し、切れ毛や枝毛の原因になる静電気の発生を抑制するという“高機能ドライヤー”で、上位モデルの「IF-PB1」には約50℃の温風で髪や地肌をやさしく乾かせる“地肌エステモード”も搭載されている。

 シャープがドライヤーを発売するのは15年ぶりで、理美容商品への本格参入と注目されている。今回は、プラズマクラスタードライヤーの商品企画・開発に携わった健康・環境システム事業本部 調理システム事業部 新規事業推進プロジェクトチーム主事の川村有里さんに、開発のきっかけや製品へのこだわりなどについてお話を伺った。

肌によいのなら、髪にもよいはず

シャープ 健康・環境システム事業本部 調理システム事業部 新規事業推進プロジェクトチーム主事 川村有里さん

――ドライヤーへの参入は15年ぶりとうかがいましたが、そのきっかけを教えていただけますか。

 シャープでは15年前にハンズフリータイプのドライヤー『自由の女髪』という製品を出したのを最後にこの分野からは撤退していました。何が何でもドライヤーを作ろうというわけではなかったのです。

 きっかけはモバイルタイプのプラズマクラスターイオン発生機でした。この製品は、女性をターゲットとして、プラズマクラスターによる美肌効果を自宅だけでなく、オフィスや旅先でも実感できる製品として企画され、昨年秋に初代モデルが売り出されたものです。

 当時、この試作機を使用していた女性社員から、「肌だけではなくて、髪への効果も感じる」という声が上がったのです。イオン発生機は、デスクなど顔の近くに置いて使うことを推奨しているので、自然に顔だけでなく、髪にもかかりますよね。そこで、改めて髪への効果を検証してみよう、という流れになりました。

 その後、ドライヤーの製品化が決まって、社内公募で商品企画・開発チームが立ち上がり、発売まで約2年かかりました。年末商戦まっただ中の12月というのは、本来なら、新製品を出す時期ではありませんが、出来るだけ早くに消費者の皆様のお手元に届けたかったので、この時期になってしまいました。

――開発に当たって苦労された点はどこでしょう?

 何しろ、ドライヤーを作るのは15年ぶりだったので、試行錯誤の連続でした。特に大変だったのは、ドライヤーそのものの形状を決めるまでですね。プラズマクラスター発生ユニットをどこに設置するかというところでは、技術部と何度も話し合いを重ねました。

 本体内部にユニットを取りつけるか、外に出して別にイオンの発生口を設けるかという点では、特許問題などもあり、かなり議論した部分です。結局、プラズマクラスターイオンが髪に行き渡ることを優先として、本体内の一番奥の吸込み口のすぐ近くに設置することにしましたす。ユニットが本体に内蔵されてるので、本体から出る風には、常にイオンが風に混ざり合っている状態となります。ドライヤーを振りながら使う必要もありません。

 もう1つ苦労したのは、吹き出し口の形状ですね。デザイン性だけでなく風量とも関係してくるので、最適化を図るのに時間がかかりました。

プラズマクラスタードライヤー開発のきっかけになったというモバイルタイプのプラズマクラスターイオン発生機プラズマクラスター発生ユニットは本体の一番奥、吸込み口のすぐそばに配置されているプラズマクラスター発生ユニットを取り外しても使える

――一般的なドライヤーには搭載されていない「地肌エステモード」についてはいかがですか。

 「髪の表面だけ乾かしておしまい」という乾かし方の人が多いので、髪を傷めずに地肌までしっかり乾かしてほしいとつけた機能です。髪の主成分であるケラチンは湿った状態では約55℃から変性が始まるといわれているので、50℃の“髪にやさしい温風”にすることにこだわりました。高温にすることは簡単ですが、ぬるい温風にきっちりと制御することは技術的にとても難しいことなのです。

 洗髪後に地肌まで乾かす際に使うほか、朝、髪が乾いた状態で使用することもできます。静電気の抑制効果で髪が首にまとわりついたりすることを防ぎ、指通りのスムーズな髪になるのでおすすめです。

“すっぴんを美しくする”ドライヤー

――美容家電コーナーではピンクなどの派手なカラーのものが多いですが、プラズマクラスタードライヤーは、ナチュラルなカラーが多いですよね。

 プラズマクラスタードライヤーのコンセプトは“すっぴんを美しくする”ということです。つまりメイクアップではなくスキンケアという位置づけなんですね。

 先ほどもお話ししたモバイルタイプのイオン発生機はメインターゲットが20代ということもあり、店頭で目立つようにと色味の強いピンクのものも投入し、それがシンボルカラーとなっています。でも、このドライヤーは20代の女性だけでなく、30~40代の女性にぜひ使っていただきたいということで、落ち着いた感じのピンク、ゴールド、ホワイトシルバーといったナチュラル感のあるカラーを選びました。弊社の女性社員へのアンケートでも、こうしたカラーへの評価が高かったのです。

ハイエンドモデル3機種。いずれも柔らかな女性らしい色を採用する。奥からピンク、ホワイトシルバー、ゴールド地肌エステモードを省略したスタンダードモデル「IF-PD1」。カラーはシルバーとピンクを揃える

――本体もグリップも、丸みのあるデザインが印象的ですね。

 本体のデザインとのバランスも考えながら、女性でも握りやすいようにと丸みのある形状のグリップを採用しました。初代の売れ行きを見てということになりますが、今後はプロ仕様のものや、携帯にも便利な小型のものも作っていければと思っています。

――プラズマクラスターイオンというと除菌のイメージを持たれている方も多いかと思いますが、それについての戦略はありますか?

 空気清浄機に搭載されて、広く知っていただいたプラズマクラスターイオンなので、“除菌・脱臭”というイメージが強いことは承知しています。昨年モバイルタイプのイオン発生機を発売して“保湿”という点も徐々に浸透してきていますので、それに加えて髪の静電気抑制という点をしっかりアピールしていきたいですね。

 静電気の抑制というのは分かりにくいようにも思われますが、静電気抑制効果の実験をすれば一目で分かっていただけます。静電気が抑えられれば、クシ通りや指通りもよくなり、枝毛・切れ毛の防止にもつながります。まずはブロガーさんなどへのクチコミなどで、使用感が広まればと考えています。

プラズマクラスターの大きな特徴の1つに静電気抑制がある。川村さんに実験してもらった。まず、プラスチックの板に髪の毛を挟んで摩擦させるその後、プラズマクラスタードライヤーの風を当てるというもの
こちらはイオン発生ユニットなしで風を当てたもの。髪の毛が広がって、プラスチックの板に張り付いてしまっているプラズマクラスターイオンありの風を当てたところ。髪がまとまって、板に張り付くこともなかった

化粧品と同じで、いいものを使い続けることが髪の美しさにつながる

川村さんは、ご自身の髪で効果を検証しているという。プラズマクラスターありと、なしでは髪の指通りの良さや、うるおい感に大きな違いが出るという

――ご自身もプラズマクラスタードライヤーの効果を実感されていますか?

 はい。やはり、まずは自分で効果を実感したいという想いがあったので、製品化されてからはずっと使っています。実は、より効果を分かりやすくするために、髪の右半分はプラズマクラスターイオンなしで、乾かして使用感の違いを比べているんです。実際、左右ではっきりと差が出ていて、特に指通りのよさ、うるおい感については、驚くほど違います。自信を持っておすすめできますよ!

――髪を傷めない上手な乾かし方を教えてください。

 シャンプー後にタオルで水分をよく拭きとったら、ターボモードで髪の表面をザッと乾かしてから、地肌エステモードに切り替えて、地肌も髪もじっくりと乾かしてください。ターボを使うことでスピーディに乾かせますし、地肌エステモードなら、髪のタンパク質を傷めません。

 化粧品と同じで、ドライヤーもいいものを使い続けることが大切。キューティクルを引き締めて水分を逃がさないようにすれば、潤いのある健康な髪へとつながります。このドライヤーがそうした美しい髪へと導くきっかけとなればうれしいですね。

――本日はありがとうございました。






2011年12月16日 00:00