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[ダウン症児と私45]訓練中に「転んで舌を切ってしまう」ママも気が動転

子どもは、大なり小なりケガをするものですが、大ケガには一緒にいるママも慌ててしまうもの。今回は、ユキトくんが頑張っていた歩行訓練中に転んで大ケガをしてしまったときのお話を伺いました。ナナさんが、そのときどんなことを考え、どんな行動をしたかなど、詳しくお伝えします。

 

療育施設の歩行訓練で、顔面から転んで大けが

ユキトは月に2回、療育施設で歩く訓練をしていて、マイペースですが、だんだんと歩けるようになっていました。1人で10歩くらい歩けるようになったので、療育施設の外へ出て、歩いてみることになりました。訓練は、作業療法士の先生、ユキト、私の3人で行ないます。季節は秋。ユキトと手をつないで外に出ると、秋風がとても気持ちが良かったです。

ユキトは、2歳半ごろからつかまり立ちとつたい歩きを始め、2年以上が経ちました。やっと独歩ができ、3歩、5歩、10歩と歩ける距離が伸びてきていたので、「やっとここまできたか」と嬉しく思った瞬間、ユキトが私の手を強く振り払いました。「あっ!」と思ったらユキトがバランスを崩して、アスファルトの地面に顔から転んでしまいました。

 

口の中から大量の出血、ユキトは大暴れ

ユキトを起こしてみると、口の中からたくさん血を出しながら、大泣きしていました。よく見ると、唇ではなく舌が切れていて、深そうでした。そこで、ユキトが口元を触らないように、後ろから抱っこしてユキトの手を固定しながら、作業療法士の先生と一緒に医務室に連れていきました。看護師さんたちが、ユキトの口を水で洗うと、舌の大きな傷がはっきりと分かりました。

出血はとてもひどく、このままでは止まりそうにありません。療育施設のお医者さんに見てもらおうとしましたが、ユキトは固定されるのをとても嫌がって、今にも暴れそうです。そんな状態では、ユキトを固定して、舌を引っ張り出して縫うのはとても難しいので、専門医に見てもらうことになりました。

 

受け入れ病院の場所も知らぬままタクシーで向かう

看護師さんたちが、急いでユキトを受け入れてくれる病院を探し始めました。「かかり付けの病院はどこですか?」と何度も聞かれましたが、私は気が動転してしまい、「分かりません。ありません」と答えました。看護師さんたちが病院を探している間に、お医者さんはそこに持っていく紹介状を書いてくれました。そして、やっと障害者の専用の口腔外科が受け入れてくれることになり、すぐに行って縫ってもらうことになりました。

受け入れてくれる病院の場所も分らないまま、タクシーでその病院へ向かいました。パパはその日、たまたま休みで自宅にいたので、病院へ直接来てもらって落ち合うことにしました。私はタクシーの中でも、舌を触らないようにユキトの両腕を強く固定し続けていました。病院に着いたものの、ユキトを押さえているので荷物やベビーカーを降ろせず困っているところに、パパが到着したので手伝ってもらいました。

 

病院へ到着、出迎えてくれてた先生たちに安心

受付まで行くと「大丈夫ですか?」と、3人の先生が笑顔で迎えてくれました。私は、一瞬ですがホッとしました。先生は、麻酔科、口腔外科、歯科の3人の先生でした。でもまだ、ユキトを固定したままなので、私の腕の力は抜けません。

そして先生は、1言目に「なぜ、かかり付けの総合病院に行かなかったのですか?」とおっしゃいました。あとから考えると、ユキトは大きな総合病院で歯科も診てもらっているので、療育施設の看護婦さんへそう答えるべきでした。ですが私は、縫合手術は外科でするものと勝手に思い込んでいて、総合病院で外科を受診したことがなかったので、「かかり付け病院はありません」と答えてしまったのです。

私が「出血が多くて、気が動転してしまい、かかり付け医がないと答えてしまい、この病院を紹介してもらいました」と答えると、お医者さんたちは笑顔で「大丈夫ですよ、もう安心してください」と言ってくださり、私はまた安心しました。

次回1月31日は、診察室で先生とのやり取りに焦ってしまったときのお話をお伝えします。

 

 

ナナ

5歳のダウン症の息子「ユキト」と、3歳半の弟「マサト」のママの「ナナ」と申します。ダウン症の子どもを育てている様子や、母親の気持ちなどを率直にお話ししたいと思います。