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【和菓子歳時記12】冬至の風物詩・ユズを形どった「ユズ饅頭」と冬至

12月の日本の風物詩として知られる習慣に「冬至のユズ湯」があります。今回は、この冬至の時期に和菓子屋に並ぶ、ユズを形どったお菓子「ユズ饅頭」と、ユズと冬至の関係をご紹介します。クリスマスの影で忘れられがちな「冬至」ですが、この日を境に日が長くなることから、太陽の力が増し運気が上向くと言われています。寒さが厳しくなる時期ですが、昔の習慣にならって身体にいい食材を食べながら、運気上昇を祈ってみるのはいかがでしょうか。

 

2016年の冬至は12月21日、1年で最も夜が長い日

冬至は北半球で太陽の位置が最も低くなり、日の出から日没までが1年で最も短くなる日です。古代の中国や日本では、日が短くなるにつれて弱まっていた太陽の力が、この日を境に再び強まり、運気が上向くと考えられていました。そのため翌日からの運気を呼込むためのゲン担ぎで、魔除けの力がある小豆と一緒にカボチャを煮た「いとこ煮」や、「なんきん(カボチャ)」のように名前に「ん(運)」が2回付く食材を食べる習慣があります。

 

冬至の習慣「ユズ湯」は、語呂合わせだけでなく湯冷め防止も

また冬至にはユズを浮かべて入浴する習慣があり、「ユズ湯に入れば風邪を引かない」と言われます。この習慣は、江戸時代ごろの銭湯で始まったと言われていて、冬至は「湯治」、ユズは「融通」が効くという語呂合わせからきているとも言われますが、ユズの果皮に含まれるクエン酸やビタミンCが、ひびやあかぎれを改善したり、皮の芳香油が湯冷めを防いでくれる効果もあります。

 

冬の日本料理に欠かせない薬味「ユズ」は風邪の予防にも

ユズは皮と果実の両方に強い酸味があり、爽やかで独特な香りと果皮の色合いは、冬の日本料理に欠かせない薬味になっています。また、柑橘系の果物のなかでもビタミンCを多く含むので、風邪の予防効果が期待できる食材です。ビタミンCは果実よりも皮に多く含まれるので、薬味のほかマーマーレードなどに加工して、パンに塗ったりユズ茶にするのも良いですね。ユズ風味の和菓子を作るときも、果実より皮の部分が多く使われます。

 

ユズの和菓子、黄ユズの実を形どった「ユズ饅頭」

ユズ風味の和菓子は人気があり、1年を通して販売されていますが、10月過ぎから市場に出回る、完熟した黄ユズの実を形どった「ユズ饅頭」は冬の和菓子として作られます。ユズの皮や果汁で風味付けしたあんを、小麦粉や米粉を使って淡い黄色に色付けた饅頭皮で包み蒸し上げます。表面に小さな穴を開けたり型を押し当て、ぼこぼことしたユズの皮や形を表したりと、工夫を凝らした愛らしいお菓子です。お店によっていろいろな形があるので、見比べてみても楽しいですよ。

 

まとめ

ユズの花は夏、ユズの実は秋、ユズ湯は冬の季語となります。ユズ(黄ユズ)の爽やかな香りと黄色い色は冬を連想させますね。冬至の日にはゆっくりとユズ湯に浸かって温まり、行事食やユズを薬味にした鍋料理やお菓子を食べて冬の夜長を楽しみたいですね。

 

 

石原マサミ(和菓子職人)

創業昭和13年の和菓子屋・横浜磯子風月堂のムスメで、和菓子職人です。季節のお菓子や、和菓子にまつわる、歳時記などのご紹介を致します。楽しく、美味しい和菓子の魅力をお伝えできたら、嬉しいです。石原モナカの名前で、和菓子教室も開催中。ブログはこちら