老師オグチの家電カンフー

また登場した新規格Matter(マター)で「スマートホーム」は死語になる!?
2025年4月30日 08:05
突然ですが、あなたは「新たな利便性」と「慣れ親しんだ生活スタイル」の、どちらをとりがちでしょうか? 新しく登場した便利なものは、時に面倒くささをともないがちです。いや、IoTやスマートホームの話なんですけどね。
スマートホームがいまいち普及していないのは、この面倒くささが最大の要因だと思います。多くの製品で、まずは「初期設定」の面倒くささがあり、使い始めて以降は、接続が何かの拍子で切れるなど「不安定になる」面倒くささが発生します。そして、そもそもメーカーごとに「アプリを使い分ける」面倒くささもあります。
ちょっと試してみたけど、もう懲り懲りという人もいるでしょう。まぁまぁ不適切なたとえですが、「家事をしてもらうために知らない人と結婚すれば、超面倒なことになるのは当たり前」です。スマートホームとは、根気強くてスマートな(頭の良い)人にしか使えないと言えば、皮肉りすぎでしょうか。
とはいえ、2022年10月に利用開始されたスマートホームの標準規格「Matter(マター)」によって、この状況も変わるはずです。先に述べた3つの面倒くささが解消されるからです。
まず初期設定ですが、スマホから製品に貼られたQRコードを読み込む仕組みがあり、ハードルが下がっています。そして、接続の安定性を高められる「Thread(スレッド)」を採用。Xに似たSNS「Threads(スレッズ)」とは関係はなく、スマートホーム向けの近距離無線規格です。
低消費電力などBluetoothに似た特徴を持ちながら、機器同士を接続するメッシュネットワークをサポートしているそうです。さらに、複数のプラットフォームを相互に接続できる「MultiAdmin(マルチアドミン)」機能により、「A社のセンサーが検知したらB社の機器を動かす」といった連携も可能になりました。これらを鉄道にたとえるなら、紙の切符や定期券が、SuicaやPASMO、ICOCAといったICカードに置き換えられ、地域や会社を問わずに改札を通れるようなものでしょうか。
Matterは、照明機器やスマートロックといったスマートホーム関連製品のイメージが強いですが、規格としては冷蔵庫やロボット掃除機、洗濯機、電子レンジといった調理家電にも対応が進められています。IoTやスマートホームが普及していくほどに、Matterの名称も広く認知されるようになるはずで、将来的には、「スマートホーム」も死語になるでしょう。
だって、スマートホームって日本語(カタカナ)で書くとちょっとダサくないですか? 長いし、かといって略すと「スマホ」になってしまうし、言葉として生き残れる気がしません(笑)。
そういえば先日、知り合いの編集者さんが、中学生の娘さんに「ママってWi-Fiのことを無線LAN無線LANって言うのほんとウザイ」と言われたらしく、インターネット老人たちの笑いを誘っていました。若い世代にとってネット接続が無線なのは当たり前なように、家がスマート化されているのが当たり前になれば、わざわざスマートとは言わず、「Matterにつなぐ」などと言われるんでしょう。そして、「ママはMatterのことをスマートホームって言うのほんとウザイ」と言われるマター(問題)が起こるわけです。