老師オグチの家電カンフー

「スマート耳かき」で時代にアップデートする!

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです
MAXEVIS「スマート耳かき」3,890円。取り扱いはBBソフトサービスのプラススタイル事業部(+Style)

ここ数年、自分も気をつけなければと思うのは「発言」です。

立場のある人がウケ狙いで不謹慎なことを言って大いに炎上する。そんな事例がキリがないほど続いています。オッサンとして理解や同情はします。本人は良かれと思って言ってるんですよ。理解しやすい例え、話のスパイスとしてという親切心、そしてウケたいという承認欲求の表れでもあります。

しかし今の時代にはそぐわない。絶対的な善悪の話ではないんですが、時代に合わせてアップデートしていかないと生きていけません。言いたいことも言えないこんな世の中ですが、聞きたくないことも聞くべきではあろうかと。

というわけで、耳の穴かっぽじって世間の声を聞くために、「スマート耳かき」を購入してみました。

LEDライトと超小型カメラを搭載し、スマートフォンで耳の穴の中を確認しながら、耳かきできる製品です。もちろん物理的に耳の穴を掃除したからといって聴力が上がるわけでも、理解が深まるわけでもありませんが、意識の問題です。

先端にはLEDで明るく光る着脱可能な耳かき。カメラは300万画素で、1080pの画像で確認できる
スマホとはWi-Fi接続。バッテリー残量や使用可能時間も表示される
キーボードについたホコリが見えるほど高精細

これ3,000円台の製品にもかかわらず非常によくできています。ジャイロセンサーが搭載されていて、耳かき作業がしやすいよう、画像の向きが自動調整される(右耳モード、左耳モードをアプリ上で選択)。画像も鮮明で、医療用のレベルじゃないかと思うほどです。

いずれは胃カメラなどの内視鏡も、このように自分で扱うことができるようになるのかなと想像します(もちろん診断はできませんけど)。カプセル型の胃カメラも実用化されていますし、自分で体の内部が見られるのは、まるで昔のSF映画「ミクロの決死圏」の世界です。

ところでスマート耳かきで映し出された耳の内部の画像ですが、これは見せちゃいけないやつですね。しっかりとボカシを入れてから、編集者に送ります。でないと、何かしらのハラスメントになりかねませんからね。

いや、自分の汚い部分を見せたいわけじゃないですよ。普通に恥ずかしいし。しかし、これが30年ぐらい前であれば問題にはなりませんでした。雑誌にも余裕で掲載できましたし、「汚いから見せられない」なんて言えば、「何おまえ恥ずかしがってんの?」と返ってきたでしょう。しかし今は、少しでも人が不快に感じるものは見せてはいけない時代です。殺虫剤のテレビCMでもゴキブリを出したらクレームが来る時代。私も、耳の穴かっぽじったのでアップデートされました。

実際の耳の穴はえげつないので見せられません。汚れもそうですが、細かい毛がいっぱい生えています
小口 覺

ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱。新著「ちょいバカ戦略 −意識低い系マーケティングのすすめ−」(新潮新書)<Amazon.co.jp>