老師オグチの家電カンフー

スマホ用CDレコーダーをジャニオタの娘に与えた結果

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです
バッファロー「ラクレコ」(Wi-Fiモデルの実売価格は9,980円前後)

長女がとあるアイドルグループのファンをやってましてね。写真を見ていただければ一目瞭然ですが、ジャニーズの某グループです(写真にボカシを入れていますが、同じグループのファンなら分かると思います)。

メジャーデビュー時はミリオン達成させようと、ご多分に漏れずジャケ違いで何枚も同じCDを購入していました。そうして購入したCDですが、再生されることはありません。というのも、様々なデバイスでワイヤレス化、クラウド化が進んだ結果、CDをパソコンに取り込んで、それをスマホに転送するのは、かなり面倒な作業になってしまいました。そもそもCDと同じ曲がYouTubeの公式チャンネルで映像付きで聴けたりするわけで、CDを聴く必要性が低いんですよ。レンタルレコード屋に通ってはカセットやMDにダビングしていたような世代には意味不明です。

ご存じのように、ジャニーズ系のグループは基本サブスクにありません。ファンはCDを買うしかない。最近はジャニーズも嵐でサブスクが解禁されるなど、変化の兆しが見られるものの、メジャーデビュー間もないグループは望み薄でしょう。ちなみにAKB48グループは握手会(コロナ以降はオンラインお話し会)なるビジネスモデルがあるので、サブスクがあってもCDの売り上げを確保できますが、ジャニーズにはそれがないですからね。

サブスクにないからCDを買うしかないが、それを聴く環境はいまひとつという、よく分からない状況に置かれているんですね、ジャニオタの皆さんは。どうもCDはファンとして貢献したレシート、音楽データの入ったアクスタ(アイドルの写真がプリントされたアクリル製のスタンド)ぐらいの存在になっているようでもあります。

そんなジャニオタの娘に、バッファローのスマートフォン用CDレコーダー「ラクレコ」を与えてみました。何の情報も与えずに渡しましたが、アプリをインストールしCDを取り込むところまで全部自分でやって、「これは良いものだ!」と喜んでいます。飾りだったCDからコンテンツを取り込めたわけで、埋蔵金が発掘されたような感覚なのでしょうか。

スマートフォン用CDレコーダー「ラクレコ」(バッファロー)

ラクレコでは取り込んだ曲は専用アプリでしか再生できませんが、この点については「そりゃあ、iPhoneのミュージックアプリで再生できた方がいいとは思うけど、これはこれで別に構わない」とのこと。もともとが同じCDをジャケ違いで買うような不合理な世界に生きているオタクには、些末なことなのかもしれません。

「ほんとこれは良い」と何度も言うので、本心で気に入っているようです。パソコン老人の自分からすると、「CDから音楽を取り込んで喜ぶなんていつの時代だよ」ですが、オタク界隈は時空も歪んでいるのでしょう。世界は複雑です。

ちなみにラクレコではDVDもスマホやタブレットで再生できるようになっていますが、娘が購入したライブツアーのディスクはBlu-rayで、その恩恵は受けられず。DVDとBlu-rayの2種類があって「どうせならブルーレイ」と選んだ結果です。今後はBlu-ray版に加えて、ラクレコ再生用にDVD版を購入する、ダブル買いが同様のファンの皆さんに増加するのかもしれません。

正直、ラクレコのリリース時は、「今さらスマホ用CDドライブですか」と思いましたが、そうした需要もあってか、一時期は品薄になるほど売れているようです。バッファローさんはジャニーズ事務所に足を向けて寝られないんじゃないでしょうか。

Wi-Fiの帯域切替スイッチは「屋内用」「屋外用」、SSIDを「Wi-Fiの名前」、暗号化キーを「パスワード」と表記するなど、リテラシー低めでも設定が簡単になるよう工夫されています
嵐は例外的に、多くの楽曲がサブスク解禁されている。もう嵐ファンはCD買わないってことかな? わが家は6人まで共有できるApple Musicのファミリープラン(月額1,480円)にしています
小口 覺

ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱。新著「ちょいバカ戦略 −意識低い系マーケティングのすすめ−」(新潮新書)<Amazon.co.jp>