老師オグチの家電カンフー

AirTagを使って妄想した「リアルAppleWallet」

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです
Appleの「AirTag」

今さらですがAppleの「AirTag」を買ってみました。忘れ物トラッカーの類はこれまでも何個か使用していますし、何なら人生で一度も財布を落としたことないんですけどね。

通常の忘れ物トラッカーとの最大の違いは、第三者のiPhoneやMacデバイスを介して、位置情報を追跡し続けられる点です。細かい仕様や使い方は鬼のように出ている他の記事に譲るとして、軽く使ってみて湧き起こった妄想を書きます。

緊急事態宣言以降、ほとんど家に引きこもりの生活のため、(許可を得て)子どものカバンに忍ばせて実験してみました。娘はiPhoneユーザーということもあり、ほとんどリアルタイムに位置情報が更新されていきます。Androidユーザーの息子でも、通う高校の位置情報が送られてきました。校則でスマホは電源切るようになっているはずですけどね(先生のiPhoneかな?)。少なくとも繁華街ではかなり実用的です。

ちょっと出遅れて購入
娘が横浜に遊びに行くというので追跡。渋谷の待ち合わせ場所も正確に表示されました
近くにある場合は方向と距離も示してくれます

そして思ったのは、探偵やストーカーには無茶苦茶便利なアイテムじゃないかと。自分の所有しないAirTagが一定期間近くにあると、スマホに警告を表示するという対策は一応ありますし、警察などしかるべき機関が調査すれば悪用はバレるとのことですが、ちょっとした事件は起きそうな気がします。

逆に、窃盗犯は仕事はやりにくくなるでしょう。盗んだ物にAirTagが仕込まれている可能性を考えると、iPhoneを使うのはやめたほうがいいかもしれません(笑)。これまでの忘れ物トラッカーは、最後にスマホと接続していた場所がわかるのみ。道に落とした、居酒屋に置き忘れたといったシチュエーションでは役立ちますが、物が移動し続ける窃盗に対してはAirTagの追跡機能が優れていますから。

財布を盗まれたとき、割とよくあるパターンは現金だけ抜き取られて捨てられるケース。せめて身分証明書やクレジットカードだけでも返してほしいと思うものですが、AirTagがあれば見つかる可能性も高まるでしょう。何なら、「監視カメラ作動中」のように、財布に「AirTag追跡中」の表示があれば、盗難自体を阻止できるかもしれません。

もうAppleには、AirTag機能内蔵の財布自体を作ってほしいですね。エルメスのアクセサリーも作ってるんだから。どうせなら、USBで充電できるようにして、FeliCa機能も内蔵して、各種電子マネーカードを使えるようにして。スマホだと落下させて壊してしまうリスクがあるけど、財布だとそれがない。あと、このコロナ禍で、耳や口の近くで使うスマホをあちこちのカードリーダーに接触させるのも抵抗が出てきましたし。

将来的には、中に入れた紙幣の情報も記録できるといいですね。ユーロ紙幣は偽造防止のためにFRIDタグを埋め込む計画があるそうです。持っている金額を財布が記録し、一定額を下回ったらスマホに通知されるようにすれば、現金の持ち合わせが不足する事態も回避できます。さらに、紙幣の記番号をFRIDで記録できれば、盗まれて使った場所も追跡できるかもしれません。

そんな財布が普及すれば、誰も財布を盗まなくなる世界が実現しそうです。

「ぼくのかんがえたリアルAppleWallet」。USB充電/NFC/FeliCa機能/AirTag機能/Bluetooth機能。スマホから各種電子マネー、ポイントカードの機能を転送できます。電子マネーを使うとリンゴの葉の部分が光る
小口 覺

ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱。新著「ちょいバカ戦略 −意識低い系マーケティングのすすめ−」(新潮新書)<Amazon.co.jp>