老師オグチの家電カンフー

裏のおじいちゃんでもわかる「Clubhouse」

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです
話題の「Clubhouse(クラブハウス)」を解説します

今、ネットで話題の音声SNS「Clubhouse(クラブハウス)」。この記事が公開された時点で一段落しているのか、さらに人気が加速しているのかはわかりませんが、このビッグウェーブには乗るしかありません。

起業家やインフルエンサーといった、いわゆる“界隈の人ら”が先鞭をつけ、フォロワーが続々と参加し、芸能人も加わることでお祭り状態に発展しています。現時点でアプリはiOSのみ対応で、アカウントは既存ユーザーからの承認が必要なため、飢餓感も相まって異様な盛り上がりを見せているのでしょう。

さて、Clubhouseへの参加方法や利用方法については他の記事をご覧いただくとして、まだやったことのない人にもわかるよう、(自分の親に言うようなつもりで)説明してみますね。

Clubhouseは、電話とラジオの機能をかけ合わせたようなスマホアプリです。電話のように友だち同士で会話でき、その会話をラジオのように一般公開できる。と言えば、裏のおじいちゃんにもわかるかな?

アプリでチャットルームやラジオの番組に相当する「ルーム」を開くと、参加しているユーザーのアイコンが表示され、音声が流れてきます。参加ユーザーは、会話に参加できる「スピーカー」と、聞くだけの「オーディエンス」に別けられています。ラジオでいえば、出演者とリスナーとの関係ですね。

ラジオとの違いは、参加者全員がスピーカーの時もあれば、1人がスピーカーでその他全員がオーディエンスの時もあるという設定の自由度です。閉じたルームで知り合いだけで話していれば「電話」に近いですし、少人数のトークを大人数のオーディエンスが聞いていれば「ラジオ」に近いわけです。

スピーカーの中には、アイコンに「*」マークが付いている「モデレーター」と呼ばれる人がいて、オーディエンスの人をスピーカーに呼び込む権限が与えられています。ラジオにたとえると、リスナーと電話をつなぐような感じです。もうちょっとイメージが近いのは、新宿などにあるトークイベント用のライブハウス「ロフトプラスワン」でしょうか。ニッチでありディープなテーマでイベントを設定し、舞台上で演者がトークし、観客が舞台へと上がってトークに加わることも可能です。この例えでは裏のおじいちゃんは理解できないかもしれませんが。外出やイベントの開催に制限がかかっているからこそ盛り上がっているのがお分かりいただけたでしょうか。

また、Clubhouseにはトークを残す録音の機能がなく、参加者の同意なく外部への情報流出を禁じる規約があります。これもクローズドなトークイベントに近しいところです。とは言っても、芸能人や政治家の失言なんかは容赦なく週刊誌にすっぱ抜かれるはずで、狙われそうな人は気をつけた方が良さそうです。聞くところによると、実際に文春の記者があちこちのルームに出現しているそうですし。

サービス名のクラブハウスは、ゴルフやテニスなどを楽しむ会員制クラブに由来しています。選ばれし紳士が集うような上級のイメージですね。ですが、日本人には、トーストしたパンを使用したサンドイッチを連想する人も多いのではないでしょうか。クラブハウスサンドは、アメリカのカジノ「サラトガクラブハウス」で考案された説が有力ですが、サンドイッチがポーカーをしながら食べられるよう考案されたように、Clubhouseも音声のサービスゆえ、歩きながら、自動車の運転をしながら、家事や仕事をしながらといった“ながら”で使うのにはサイコーです。結局、サンドイッチみたいなSNSといっても、別にいいんじゃないですかね。

というわけで、デニーズにやってきました。さすがにファミレスのような他人がいる場所ではスピーカーとしての参加は躊躇します。ちなみに、オグチのユーザーネームは@oguyanです。

小口 覺

ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱。新著「ちょいバカ戦略 −意識低い系マーケティングのすすめ−」(新潮新書)<Amazon.co.jp>