老師オグチの家電カンフー

アウトドアでも便利かもしれない途上国向け手洗い器「SATO Tap」

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです
2020年9月から生産が開始されるLIXIL「SATO Tap」。製造原価は1つ2ドル以下。まずはインドで製造し、徐々にアフリカ諸国などに製造拠点を広げていく計画

タピオカ屋なんかの店頭で販売される中華マスクの値段が暴落中です。1箱(50枚入り)が3,000円から2,000円へと下がり、昨日は1,200円になっていました。高値で仕入れた人はご愁傷様ですが、1箱500円ぐらいが適正価格じゃないですかね。

店頭販売といえば、近所の電器店ではアルコール除菌液が1,800円で売られていますが、これもずっと売れ残っています。異業種の店頭で販売されるコロナ関連の衛生製品には、すでに怪しいイメージが付いているのかもしれません。商売難しいね。

さて、ここに来てグローバルで評価されているのが、日本人にとっては当たり前の手洗い習慣です。アルコール消毒よりも石鹸と水洗いの方が新型コロナウイルスに対しては効果的という説もあり。日本人にとってタダ同然の水で疫病が防げるというのは、果報でしかありません。

とはいえ、世界的には水道が整備されていない地域がまだ多く、実に5人に2人、30億人は十分な手洗い環境がない状況にあります。そうした途上国における新型コロナウイルスの感染予防のために開発されたのが、LIXILの手洗いソリューション「SATO Tap(サトータップ)」です。

同社は、2013年に途上国向け簡易トイレ事業を立ち上げ、いままでにインドやアフリカ諸国、南米を中心に38カ国380万台、1,800万人が利用するまでに成長しています。

「SATO Tap」は、そのプロジェクトから派生したソリューションで、水を入れたペットボトルを装着することで簡易的な水道となるアイテムです。発展途上国でも容易に入手できるペットボトルを使用すること、シーソーのようなレバーを腕や肘で操作するため、手を介しての感染が防げること、また一度に出る水の量を極力抑えるよう設計されていることが特長です。

38カ国380万個が出荷されている発展途上国向け簡易トイレ「SATO」
水や排泄物の重みで弁が開き、下に落ちた後は自動で閉まるので虫や悪臭が防げる

「SATO Tap」を開発した石山大吾さんは、3月に新型コロナウイルスに感染した中、このプロジェクトを思いついたとか。なんだか神の采配っぽいストーリーじゃないですか!

まずはLIXILが1億円を投じ、50万個をインドで生産し、ユニセフなどのパートナーを通じて世界中に配布していきます。2021年には一般販売も開始。原価は一個2ドル以下で、流通コストを含めても5ドル程度には収まるそうです。

「SATO Tap」の使い方

水道の普及する日本では必要ないアイテムではありますが、キャンプやBBQなどアウトドアでは便利かも。見た目もかわいいし、小さい子どもに手洗い習慣と水の大切さを教える教材としても使えそうです。

もちろんプライオリティとしては発展途上国にベネフィットがあるべきソリューションです。これはジャストアイデアですが、1個買うと1個が発展途上国に寄付されるみたいなスキームがあってもサスティナブルかもしれません。

【訂正】初出時、LIXILの簡易トイレ事業に関する記述で誤りがあり、修正しました(9時10分)

小口 覺

ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱。新著「ちょいバカ戦略 −意識低い系マーケティングのすすめ−」(新潮新書)<Amazon.co.jp>