老師オグチの家電カンフー

お金持ちは「なんとかPay」を使わない

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです

 何年か前、「お金持ちは長財布を使っている」「長財布を使うとお金を稼げる」なんて話が広まりました。お札を折らないので、お金を大事にしていることになり、お金に愛されてお金持ちになれるという理屈です。

 これ……嘘ですね。

 自分自身、長財布を使っていた頃がいちばん貧乏でしたから。

 そもそもの理屈がおかしくて、仮にお金持ちが長財布を持っていたとして、それが稼いだ理由にはなり得ません。「ロールスロイスに乗るとお金持ちになれる」や「執事を雇うとお金持ちになれる」なら、誰でも嘘だなと思うでしょう。世界一の大富豪アマゾンのジェフ・ベソス、ソフトバンクの孫正義はハゲてますが、ハゲこそが稼ぐ道とか言われない。男性ホルモンが稼ぐ原動力と言えば、女性はお金持ちになれないことになる。

 確かに微妙なラインはあって、職種によっては服装や腕時計などの身なりにお金をかけると、ビジネスの相手などにナメられなくなり、稼ぐ可能性が高まるということはあるような気はしますけど。

 財布で大事なのは中身です。アメックスのセンチュリオン・カードを持っているのは超お金持ちですが、入会金100万円、年会費50万円ですからね。何かの間違いで平均的な所得の人が持つと、間違いなく貧しくなれます。

 もっと言えば、大富豪は「なんとかPay」の類は使ってないと思います。本当の金持ちは面倒くさいものを使わない(はず)。ワタシも使っていませんが、だから稼げるってことにはなりません。

 何にせよ、多くの人はお金が欲しいと思っていて、その煩悩ゆえにIQが下がってしまうんでしょう。それを長財布ブームで思い知りました。地に足着けて生きたいものです。サイフの形状なんかよりも、まずは財布をなくさないことです。

 つい先日も、知人がサイフとスマホを紛失して大変そうでした。スマホの場所はGPSで特定できたのですが、その後移動して消失。そうなると、誰かが交番に届けてくれることに望みを託すしかありません。見つからない場合はクレジットカードや各種身分証明書の再発行など、手間も相当なものになります。

 サイフや鍵などの紛失や盗難を防ぐアイテムとして、落とし物トラッカーがあります。Bluetoothでスマホと接続し、今ある場所、最後に接続されていた場所が特定できます。

 ここ数か月使っているのは、「FINDORBIT CARD(ファインドビットカード)」という製品ですが、カードサイズでサイフに忍ばせるには最適です。Bluetoothの通信が切れるとアラームを鳴らしてくれる機能もあって、たとえば酔っ払ってサイフの入ったカバンをお店に忘れたときなどに、スマホを持っていれば気付かされます。

 実際に忘れたことはありませんが、居酒屋でサイフを席に置いたままトイレに行くと、スマホがブーンブーンと通知してきて、機能を果たしていることがわかります。

長財布から移行したら売上げがマシになってきたのでずっと使っているサイフと「FINDORBIT CARD(ファインドビットカード)」公式サイトでの販売価格は6,980円(税込)
ある意味でブラックカード。右下の指紋のようなマークを押すと、スマホのアラームが鳴って場所を探せる
裏面。左下の端子にクリップ形状のUSB充電器を挟んで充電する(最大3ヶ月稼動)。技適マークも取得している
薄さは交通系ICカードとほとんど同じなのでサイフのカード入れに忍ばせられる

 また、スマホがあればある程度の決済ができる時代なので、サイフはカバンの中にあることも多い。外出したときに「あれ、サイフ入れたかな?」と不安になったときもスマホで確認できます。反対に、このカードからスマホを鳴らして発見する機能も備えています。

 お金持ちがこの手の落とし物トラッカーを使っているかは知りませんが、少なくともこれ以上貧乏になるのを防げるわけで、長財布よりはおすすめですね。

今ある場所、最後に接続が確認できた場所が地図上に表示される。家の中などで見つからない場合は、検索ボタンを押せばカードからアラーム音が鳴る

小口 覺

ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱。新著「ちょいバカ戦略 −意識低い系マーケティングのすすめ−」(新潮新書)<Amazon.co.jp>