老師オグチの家電カンフー

秒速でリラックスする「ネオノマド族」のすすめ

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです

 スーパー銭湯が好きでよく利用しています。ここ最近たまに見かけるのが、飲食やリラックススペースでノートPC広げて仕事をしている人です。画面を覗いて確認してはいませんが、スマホじゃなくてパソコンを使っている人はたぶん仕事です。

 実は私もメールを打ち返したり、原稿を書いたりする作業をスーパー銭湯でよくしています。世間では働き方改革が謳われているようですが、銭湯こそ最強の仕事環境だと言い切ってしまいましょう。

平日の日中なら休憩所やお食事スペースは空いている。飲み物も食べ物も運んできてくれるので、ワークスペースとしても最高

 少し前(2012年頃ですかね)、会社や自宅の外で仕事をするスタイルが「ノマド」と言われてもてはやされました。「スタバでMacBook広げてドヤ」の世界です。ノマドという言葉自体は割と早めに廃れましたが、PCを使って外で仕事をすることは一般的になり、日中のカラオケボックスやコンビニのイートインコーナー、居酒屋などに舞台が広がりました。鳥貴族などは店舗によって電源とWi-Fiを完備した一人席があり、お酒を飲みながら仕事が捗るらしいです。ノマド時代との違いは、カフェなどのおしゃれなイメージが薄れ、よりリラックスできる環境が求められていることでしょう。

 改めて言いますが、スーパー銭湯は最高にリラックスできる環境で、そこで仕事する人を「ネオノマド族」と名付けたいぐらいです。もちろん、かつて世を騒がせた与沢 翼氏などの「ネオヒルズ族」からとりました。

 ネオヒルズ族は、超高級車やタワマンなどの豪勢な生活を見せつつ高額な情報商材を販売していましたが、ネオノマド族は平日の昼間から温泉とは優雅だなと思わせつつ、実は仕事をしているワークスタイルです。

パソコンは恥ずかしいという人は、タブレットがおすすめ。このポンチ絵もタブレットを使ってスーパー銭湯で描いています

 働き方改革は、成果さえ上げれば、あとは自由にしていいという考え方ですよね。生産性は健康があってこそ。スーパー銭湯はかつて「健康ランド」と呼ばれていたぐらいですから、その点でも最適なはず。飲食も提供されるし、新聞、雑誌、テレビなどから情報収集も可能。無料Wi-Fiや充電用のUSBポートも多くの施設にありますし、もはや仕事のための施設のような気もしてきました。

 ただ、AC電源の有無などはまだ施設によって差があります。場合によっては、長時間駆動のPCに買い替えたり、パソコンでも使えるモバイルバッテリーを持参したりすると良いでしょう。

 また、リラックススペースにいるのは基本風呂上がりの人たちなので、カチャカチャターン! とキーボードの打鍵音を響かせるとひんしゅくを買う恐れがあります。パソコン作業が禁止されている施設もありそうなので、そこは確認が必要です。逆に、いびきをかいて眠っている人もいるので、ノイズキャンセリングイヤホンなどで対策もしたいところです。
 いいことずくめに思えるネオノマドですが、問題はリラックスしすぎて眠りに陥りやすいことでしょうか。シートを深く倒して油断すると、秒速で寝落ちしてしまいます。この原稿も、スーパー銭湯のリラックスシートで書き始めたのですが、結局寝落ち……。ドバイのリゾートでネオノマドできる日は遠そうです。

テレビが付いているリラックスシートなら情報収集(?)も可能。最近はAC電源やUSBポートを備えたシートも増えている。ただし、いびき対策と寝落ちに注意

小口 覺

ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱。新著「ちょいバカ戦略 −意識低い系マーケティングのすすめ−」(新潮新書)<Amazon.co.jp>