老師オグチの家電カンフー

女子高生と制服とデジタル援助

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです

 釣りっぽいタイトルですが、まったく性的な話じゃありません。わが家の長女が高校に進学しまして、お金かかるなぁと。授業料は東京都から補助が出るみたいですが、入学金やら制服、教科書代など、それ以外に結構な出費があるんですよ。たとえば電子辞書。紙の辞書、電子辞書どちらも可なんですが、職業柄そりゃ電子辞書だろうとカシオの高校生用モデル「EX-word XD-G4800」を購入しました。

 娘の通うことになる高校はスマホの持ち込み禁止です。なので、腕時計も新宿まで買いに行きました。そして、ついでにiPhoneまで買わされる……。新品は高いので中古&格安SIM運用ですけどね。腕時計もカシオで、「BABY-G」にしました。昔のテレビCMの、「デジタルはカシオ」ってフレーズを覚えている人も多いかと思います(山口百恵や三原じゅん子が出ていました)。

 当時のデジタルに対するとらえ方は、今とはかなり違います。昔は、デジタルといえば7セグメントディスプレイ、三原じゅん子といえば(国会議員ではなく)、「顔はやばいよ、ボディやんな」(from「3年B組金八先生」)ですよね。今でも、電子辞書、腕時計、電卓はカシオが強いですが、これらは「3大古典デジタル」とでも呼べそうです。

カシオ「EX-word XD-G4800」。これが高校生モデルだなんて、1人で英語辞典を編纂したサミュエル・ジョンソン博士も激おこです

電子辞書のコンテンツデフレ

 高校生用の電子辞書だと、値段はだいたい3万円前後です。収録コンテンツ数は、130~170ぐらい。3万円を150コンテンツで割ると、1コンテンツ200円の計算です。高校生が一番使うのは英語の辞書だと思われますが、「EX-word XD-G4800』」に収録されている英語辞書のタイトルと、書籍版の価格を書き出してみましょう。

 「ロングマン現代英英辞典 6訂版」4,185円
 「ジーニアス英和辞典 第5版」3,780円
 「ウィズダム英和辞典 第3版」3,672円
 「オーレックス英和辞典 第2版」3,564円
 「ベーシックジーニアス英和辞典」2,916円
 「オックスフォード現代英英辞典(第9版)」5,796円
 「ジーニアス和英辞典 第3版」3,780円
 「ウィズダム和英辞典 第2版」3,672円
 「オーレックス和英辞典 新装版」3,564円
 「英語類語辞典」※書籍版の刊行なし
 「カタカナで引くスペリング辞典」1,080円(Kindle版)
 ※一部写真や図版、付録は除く

英語系コンテンツの一部。発音が収録されているのは紙の辞書にないメリット。自分が学生の時にこれがあれば、あんなに発音問題の点数低くなかっただろうに

 これだけで計36,009円と、すでに電子辞書の本体価格を超えています。とはいえ、英和辞典だけでも4冊入っており、かなり過剰な感じ。これだけの辞書コンテンツを使い分けられる高校生はいるんでしょうか。大人でも複数の英和辞典を使い分けする人は少数派でしょうからね。ジョン万次郎が電子辞書の存在を知ったら激怒しそうです。

 ですが、辞書なんてものは、必要な人が必要な時に必要な部分を使えればよくて、頭から読むような書物じゃありません。本来、知識とか情報も、自分にとって必要なものだけあればいいんです。

 オタクとかクイズ王みたいのは、無駄な知識の過剰さ故に、時にリスペクトされるわけですが、これは人間がコンピュータと違って記憶能力に限界があるゆえです。それに引き替え、電子辞書は100数十のコンテンツ数、トータルでものすごい情報量にもかかわらず、うちの娘のように「ふーん、すごいね」程度の感想で終わってしまう。ついでに割と高かった制服も、「かわいくない」と低評価。モノも親もちょっと不憫じゃないですか? おかしいお。

国語系コンテンツ。類語辞典なんかライターにも役立ちそう
山川の用語集、懐かしくないですか?

小口 覺

雑誌、Webメディア、単行本の企画・執筆、マンガ原作、企業サイトのコンテンツ制作を手がけるライター。日経MJの発表した「2016年上期ヒット商品番付」では、命名した「ドヤ家電(自慢したくなる家電)」が前頭に選定された。

Webページ「有限会社ヌル/小口覺事務所」
http://nulloguchi.wix.com/nulloguchi