藤原千秋の使ってわかった! 便利家事アイテム

どこでも使える洗剤「万能職人」がまさに万能だった

家事アイテムオタクなライター藤原千秋が、暮らしの不具合等々への現実的対処法とともに、忌憚ないアイテム使用感をご紹介していく連載記事です
技職人魂 万能職人

もう四半世紀ほど前の春のことだが、都内某所にある1LDKのマンションを借りることになった。決め手は「即入居可」。不動産屋によれば直近数か月空いていたというが、築年数の割にリフォームしたばかりで内装は新しめだった。

引っ越しの前日、荷物を入れる前に軽く掃除でもするかと部屋に入ったときのことだ。内見のときにも来てはいたが、パッと見はふつうに綺麗だった。しかし改めてまず床の水拭き掃除を始めてみたところ、拭いても拭いても、拭いても拭いても拭いても……雑巾が真っ黒になる。

「なんだこれ……」

思えば部屋から200メートルほど離れてはいたが、近くを環状×号線が走っていた。なので今なら容易に「煤煙のしわざだな」と分かるのだが、若くて物知らずだった当時の筆者に知る由もない。

床のみならず一見真っ白なはずの壁も、風呂場のタイルも拭けば拭いただけ雑巾が黒くなるので、閉口し途方に暮れた。予定としては1時間程度でちゃっちゃっと終わりにするつもりだった掃除に結局半日費やした挙句、「まだ全然汚いのに……」と思いながら引っ越しすることになった。

「ぱっと見綺麗」であっても、たとえ閉めっきりであっても、なんかしらのなにかの隙間から空部屋に入ってくる汚れはあり、それはどうにも落としにくいものだから注意しなければならない。

特に街場のそのような汚れは、微細であるくせに油性であることを筆者は学んだ。ベタベタした「すす」、要は「排気ガス」由来の汚れなのだが、これは住んでいるそのあいだにも家の中に入り込み続け、予想外の場所を汚す。例えば押入れの壁だ。

久しぶりに荷物を出して拭き掃除をすると「こってり」というテクスチャーを示す。こんな汚れには文字通りの「水」のみの「水拭き」では歯が立たず、適度な界面活性剤かアルカリ、ないし溶剤が必要になる。

「技職人魂」シリーズの洗剤は用途別にいろいろ出ていて、長年パッケージのインパクトが効いておりなかなか強気でクセが強い印象だった。この「万能職人」はその中においては比較的無難なマルチパーパス洗剤の位置付けであるが、個人的に痺れたのは「賃貸物件の退室後の清掃をする現場から開発!」というコピー文だった。

読んで蘇ってきたのは、「退室後」ではなく「入室前」だったが、かつて途方に暮れたあの部屋の煤煙の黒さ。あのとき、あの部屋にこの洗剤があったら、まさにドンピシャだったのになあ、と思ったのだ。

アルカリ性の洗剤。どこにでも使える

「万能職人」は居室の汚れのみならずキッチン、風呂、トイレと「水拭き」「浸け置き」が可能な部位であればどこにでも使える。アルカリ性なので畳はやめておいたほうがいいと思うが、あとはフローリングだろうとクッションフロアだろうと、ピニールクロス、タイル、ステンレス、陶器、琺瑯、プラスチックなどなど汎用性高く使用できるだろう。

「こってり」した有機汚れを「ふわっと」浮き上がらせる。値段はややかさむが500ミリとたっぷりの容量からすれば妥当な印象ではある。ああ、これ一本あったら、あの日うんと効率的に掃除できたのになあ。

とはいえ今使うにしても特にビニールクロスの汚れにすこぶる良い。築21年にもなる我が家のビニールクロスは元は白色なのだが、過去のどこかで何かが飛び散って付着して拭いたけどまた数年後浮き上がってきてしまった古傷ならぬ古シミがところどころ目につく。そんなやつらをシラミ潰しに、マイクロファイバークロスとのタッグで拭いているのだが、泡切れも良くなかなか言うことを聞きやすい。

春からの新生活に際し、掃除全般一本の洗剤で済ませたいというニーズにも合致する。傍にあって心強い、文字通りの万能職人なのである。

藤原 千秋

主に住宅、家事、育児など住まい周りの記事を専門に執筆するライターとして21年目。リアルな暮らしに根ざした、地に足のついたスタンスで活動。現在は商品開発アドバイザリー等にも携わる。大手住宅メーカー営業職出身、大1、中3、小5の三女の母。『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)、『ズボラ主婦・フニワラさんの家事力アップでゆるゆるハッピー‼』(オレンジページ)など著監修書、マスコミ出演多数。