藤原千秋の使ってわかった! 便利家事アイテム

心配性の災害対策グッズその3「ソーラーパフ」

家事アイテムオタクなライター藤原千秋が、暮らしの不具合等々への現実的対処法とともに、忌憚ないアイテム使用感をご紹介していく連載記事です

 漆黒の闇を見た。

 大袈裟でなく、あれはほとんど生まれて初めて見た「漆黒の闇」だったと思う。東日本大震災直後の、「計画停電」の夜のことである。

 わが家の地域は震度5強だったから、決して揺れなかったわけではなかった。けれど、幸い「これ」というほどの被災が無い土地だった。

 だから、震災の影響として身に染みたのは、しばらくの間不定期に続いた「計画停電」が主だった。特に堪えたのは夜間時の停電だ。

 自宅マンションのエレベーターは止まってしまう。水道ポンプも止まるので水が出ず、トイレも流せない。冷蔵庫内も真っ暗になり、テレビもパソコンも使えなくなった。そもそもこの停電の影響で、街全体の機能が停止してしまうのだ。街灯はおろか、信号機すら点かなくなる。危険なので、不要不急のクルマの往来も無くなる。計画停電の3時間、わが家の周囲、半径十数キロの地域は、一気に「真っ暗」になった。

 当時、生まれて半年足らずだった三女に、保育園児の次女と小学生の長女の生活を抱えていた。そんな中、計画停電の予定に合わせて必死になって、お迎えや宿題や明日の準備や洗濯、お風呂やら食事作りを(基本的に電気が落ちてしまうかもしれない18時20分までに!) 全て終わらせなくてはならない。(そうしないと、次に明かりが点くのは22時過ぎ!) あの切迫感と、続いていた余震への恐怖、その他諸々への畏れ……。思い出すだけでも苦しくなる。

 子どもたちの動物的センスか、ベランダからの「漆黒の闇」をことさら恐れていた。停電するやいなや、ありったけの「懐中電灯」や、当時は使用できたポータブルテレビやiPadなどを点け、眼が悪くなるからとも言えず寝室で見続けていたのを覚えている。

 そんな7年前の経験を経て、私が少しずつ収集してきた非常用の灯り、懐中電灯ではなく、暮らしに使い勝手の良い「ランタン」の類の中で、現況一番のお気に入りの商品を今回は紹介したいと思う。

 「ソーラーパフ」。その名の通り、軽くて柔らかくて水にも強くて形も愛らしい。ぱふっと畳んだとき、ちょっと折り紙の「風船」を想起させる形状に、そこはかとない懐かしさすら感じるが、性能には遜色がない。

ソーラーパフを点灯したところ
メーカー名Landport
製品名ソーラーパフ クールブライト
実売価格3,672円(税込)

 光色は数種類あるが、個人的には柔やかな黄色みのある光が好きだ。「非常用」になりはしても切羽詰まった感のない、普通のインテリアグッズにある温かみが前面に出ている灯りだ。

 USBなどの給電はできないが、8時間の直射日光のソーラー発電で、弱モードで12時間、強モードでも6時間の点灯が可能なので、「夜通し」点灯させておいても大丈夫。

 実は家に常備するほか、自宅以外で被災する可能性も考えて、私はカラビナで普段使いのリュックにもぶら下げ、都度出先で発電させている。重量たったの75gなので可能な所業だろう。

 正直、次の「もしも」の時のことはあまり考えたくはないものだが、こういった新しいガジェットに仄かに励まされながら、やっと今の暮らしを繋げている、そんな気がしている。

普段使いのリュックに「ソーラーパフ」をぶら下げている様子

藤原 千秋

主に住宅、家事、育児など住まい周りの記事を専門に執筆するライターとして17年目。リアルな暮らしに根ざした、地に足のついたスタンスで活動。現在は家事サービス、商品開発アドバイザリー等にも携わる。大手住宅メーカー営業職出身、中3、小5、小1の三女の母。『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)、『ズボラ主婦・フニワラさんの家事力アップでゆるゆるハッピー‼』(オレンジページ)など著監修書、マスコミ出演多数。