第44回:インバーターとは
パナソニックの欧州向け洗濯機にも「インバーター」の文字が刻まれている |
今回は、エアコン以外の家電で搭載されるインバーターの役割を見てみましょう。
●モーターの回転数を制御し、ムダを抑えた省エネ運転を実現する「司令塔」
冷蔵庫でいえば、庫内の温度を常に一定に保てるのがインバーターの役割(写真は三菱電機の冷蔵庫「「MR-E」シリーズ) |
家電製品ではモーターを搭載する機器が多くなっています。例えば冷蔵庫では「コンプレッサー(圧縮機)」という装置で冷媒を圧縮することで、庫内を冷却しますが、このコンプレッサーは本体に内蔵されたモーターで動作します。洗濯機では、洗濯槽やパルセーター(洗濯槽の底にある羽根)も、モーターによって回転しています。つまり、モーターの回転をきめ細かく制御することが、家電の性能の差に関わってくるのです。
インバーター自体は、写真のような電子部品となる(写真はダイキンのエコキュート「Pシリーズ」のインバーター) | インバーターの性能は、モーターとともに省エネ効果の差に大きく関わっている(写真は日立のエアコン「白くまくん Xシリーズ」の発表会パネルより) |
家電で搭載されているモーターの多くは「交流モーター」というものです。家庭のコンセントから供給される交流電力で動作できますが、この交流モーターを制御するには、電力の周波数をコントロールする必要があります。しかし、コンセントから供給される電力は、東日本では50Hz、西日本では60Hzに常に固定されており、そのままではモーターの回転数は変化しにくくなっています。
ここでインバーターは、コンセントからの電気をいったん直流に変え、更に周波数の異なる交流電力に作りかえることで、モーターに供給する電力を制御しています。
インバーターが搭載されていない製品では、モーターの回転は単純なON/OFF制御しかできませんでした。というのも、ONになると常にフルパワーで動作してしまうので、冷蔵庫でほんの少し温度を調節したい場合でもフルパワーで動作してしまい、電力消費のロスが大きくなってしまいました。
インバーター搭載の機種であれば、電力の周波数を変えることで、モーターの回転数を使用場面に応じて最適にコントロールできます。例えば冷蔵庫では、庫内を設定温度に保つようモーターをコントロールできるため、「冷やしすぎ」のような無駄なパワーも使わなくなり、省エネ性能が向上します。
また、インバーターを搭載した洗濯機では、洗濯槽やパルセーターの回転をきめ細かく調節できるため、必要なパワーだけが出せるようになり、使用電力の無駄が少ない効率的な運転ができます。これに伴って、振動や騒音を低減する効果もあります。さらに、やさしく洗いたい場合やしっかり強く洗いたい場合など、洗い方に調節がつけられるため、衣類に応じた洗濯もできます。
冷蔵庫では、インバーターで圧縮機の回転数をコントロールし、冷やしすぎを防ぐことができる(写真は東芝の冷蔵庫「保湿鮮蔵庫 置けちゃうビッグ GR-Xシリーズ」の冷蔵用冷却器) | 東芝のドラム式洗濯機「TW-3000VE」のカットモデル。洗濯槽を回転するモーターをインバーターで制御することで、省エネ性と静音性を向上している |
●モーターの回転数を制御し、ムダを抑えた省エネ運転を実現
実はインバーターは、モーターの制御にのみ利用されているわけではありません。
東芝の電球形蛍光灯では、口金内部にインバーターを搭載。交流電力を高周波に変換し、明るさのアップとチラツキの抑制とともに、製品自体の小型化も図っている |
同様の例ではIHクッキングヒーターがあります。IHクッキングヒーターもモーターを使用しませんが、インバーターを利用することで、鍋自体を発熱するためにコイルに供給する高周波交流電力を作り出しています。
【インバーター】の、ここだけは押さえたいポイント
・モーターの回転数をコントロールすることで、ムダな電気を使わない省エネ運転ができる
・冷蔵庫では、庫内を適温に保ち、冷やしすぎを防ぐ効果がある
・洗濯機では省エネ効果に加え、運転音や振動を抑えられる
・蛍光灯はモーターを使わないが、周波数を高めて明るさをアップし、チラツキも抑制
・冷蔵庫では、庫内を適温に保ち、冷やしすぎを防ぐ効果がある
・洗濯機では省エネ効果に加え、運転音や振動を抑えられる
・蛍光灯はモーターを使わないが、周波数を高めて明るさをアップし、チラツキも抑制
2009年4月24日 初版
2009年4月24日 00:00
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