シャープ、かいてんユニットで釜内を攪拌する「ヘルシオ炊飯器」

~洗いすぎを防ぐため洗米工程も自動化
ヘルシオ炊飯器 KS-PX10A

 シャープは、回転ユニットを搭載したIHジャー炊飯器「ヘルシオ炊飯器 KS-PX10A」を9月20日より発売する。価格はオープンプライス。店頭予想価格は9万円前後。

 ムラの少ない洗米と炊飯を実現するために、独自の「かいてんウィング」で釜内を直接攪拌する「かいてんユニット」を搭載した炊飯器。かいてんユニットは、動物の動きを応用したネイチャーテクノロジーを採用しており、かいてんウィングは水の抵抗を減退する「ペンギンの後退翼」から、釜内で起こす水流は海中でらせん状に動く「魚群の習性」からヒントを得た。これらの技術により、釜内に3つの水流を発生、炊きムラのないおいしいごはんを炊き上げるという。

フタを開けたところ操作部は上面に備えられているフタの内側についているかいてんユニット。棒のような部分が「ペンギンの後退翼」を応用したというかいてんウィング
回転ユニットは取り外し可能使用後は毎回水洗いするかいてんウィングは水の抵抗を減退する「ペンギンの後退翼」から、釜内で起こす水流は海中でらせん状に動く「魚群の習性」を応用しているという

 炊飯工程だけでなく、洗米工程にもかいてんユニットを使用している。これは炊飯前の洗米工程も炊飯器で行なうというもので、業界初の取り組みとなる。

 シャープによると、本来米とぎは、精米後の米表面についている「肌ぬか」を落とすために行なわれるが、手研ぎで肌ぬかだけを取るのには高い技術が必要で、多くの場合、米を研ぎすぎて、うまみ成分や栄養素が豊富に含まれている「サブアリューロン層」まで取ってしまうという。ヘルシオ炊飯器では、センサーで回転数や回転時間をコントロールし、ビタミンB1やナイアシン、マグネシウムといった栄養素を保持しながら洗米する。

 具体的には、水と米を内釜でさっと洗い、水を取り替えてから、釜内にセット。スイッチを入れて約30秒ほど洗米したら、内釜を一度取り出し、水を替えて、再び本体にセットする。

米を研ぎすぎてしまと、米の表面にあるうまみ成分や栄養素が豊富に含まれている「サブアリューロン層」まで削れてしまうというヘルシオ炊飯器の洗米工程では、米のうまみ成分や栄養素を保持しながら洗米する手で研いだ時に比べて、様々な栄養素が多く残るという

 次に浸し工程では、かいてんユニットで釜内をかき混ぜ、「回転水流」「上昇水流」「吸い込み水流」の3つの水流を発生させ、米を一粒一粒引き離し、米の吸水を促す。

浸し工程では3つの水流で米をしっかりかき混ぜることで、吸水を促す米をしっかり攪拌するので、釜内の米が混ざり炊きムラが少ないという。写真は青く着色した米と普通の米を混ぜて炊いたもの。攪拌工程なしで炊きあげると、青い米が下に溜まってしまっているのがわかるこちらは釜内をしっかり攪拌しているので、青い米が全体に混ざっている

かいてんユニットで釜内を攪拌している様子

 加熱工程では、ごはんの甘みのもととなる「糖化酵素」を活発にするため、約60℃の温度帯を維持、その後の沸騰工程では、連続沸騰を行なう。沸騰工程では、かいてんウィングを収納し、上部のユニットだけを回転させる。これにより、沸騰中に発生するおねばの泡を切り、連続的な沸騰が可能になるという。

 これら3つの工程で、ごはんのうまみや甘みは、かいてんユニットなしの場合に比べて約32%向上したという。



かいてんウィングを収納して、かいてんユニットのみが回転。沸騰中に発生するおねばを消すことで連続沸騰を可能にするという

 かいてんユニットを搭載したことで、おかゆや炊き込みごはん、玄米などの炊飯メニューもよりおいしくできるようになったほか、従来の炊飯器ではできなかった「まぜ技クッキング」にも対応する。これは回転ウィングで釜内を攪拌することで可能になった調理メニューで、クリームシチューや肉じゃがなど、調理中にかき混ぜる作業が必要な料理や、クリームやつぶあんなども作ることができる。

 炊飯メニューは、通常より時間をかけて炊く「極上」メニュー、おいそぎ、おこげ、カレー用など全37メニューを用意、調理メニューはスポンジケーキやきのこの佃煮など全42メニューを備える。

従来の炊飯器の調理メニューではできなかった様々なメニューに対応する攪拌工程なしで作った肉じゃが。味が全体に染み渡っていない印象だ攪拌工程ありで作った肉じゃが。全体に味が染みこんでいる

 内釜は、熱に強く、強度に優れた厚さ3mmの「ハードガラス鉄釜」を採用。液晶は、4.3インチのバックライト液晶で、触ると文字が光る「静電タッチ式」の操作パネルを採用。

内釜は、厚さ3mmの「ハードガラス鉄釜」左右に取っ手が付いている手で持ちやすく、取り出しやすい

 本体サイズは263×347×230mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約6.8kg。炊飯容量は5.5合。消費電力は1,400W。本体カラーはレッド。

 下位機種として、液晶3.7インチ、炊飯メニュー31、まぜ技クッキングメニュー26の「KS-GX10A」も同時発売する。価格はオープンプライス。店頭予想価格は7万円前後。本体カラーはレッド系とホワイト系。

「KS-GX10A」ホワイト系レッド系
新潟大学 農学部 応用生物化学科 教授・農学博士の大坪研一氏

 会場にはヘルシオ炊飯器の開発段階から、アドバイスを行なってきたという新潟大学 農学部 応用生物化学科 教授・農学博士の大坪研一氏が登場。同氏は今回初めて搭載された洗米工程について「ほとんどの人が米を研ぎすぎている。特に最近はコシヒカリなど柔らかい米が好まれる傾向もあって、研ぎすぎると米が割れてしまうこともある。優しい水流で、米の表面を削りすぎることなく洗米するヘルシオ炊飯器は理想的」と語った。

 シャープ 健康・環境システム事業本部 調理システム事業部長 藤井正信氏は、「ヘルシオ炊飯器」というネーミングに関して「健康的な食生活を実現する調理機器という定義がウォーターオーブンレンジのヘルシオと合致すると考え、ヘルシオ炊飯器というネーミングを採用した。先日発表した低速ジューサーのジュースプレッソと合わせて、今後も健康をキーワードとした製品開発を進めていきたい」と語った。

シャープ 健康・環境システム事業本部 調理システム事業部長 藤井正信氏シャープのウォーターオーブンレンジ「ヘルシオ」の名前をブランド化していくという先日発売した低速ジューサーのジュースプレッソ(右)と合わせて、健康をキーワードとした製品開発を進めていくという

 会場からは、各メーカーが既に様々なタイプの高級炊飯器を出している中で、シャープは後発で不利ではないかという質問が出た。これに対して藤井氏は「もちろん、他社の状況も色々勉強してきましたが、健康という切り口で製品を発売しているのはシャープだけ。(オーブンレンジの)ヘルシオで築いてきた健康調理という分野を活かしていきたい」と自信を見せた。






(阿部 夏子)

2012年8月23日 14:50