2010年度グッドデザイン大賞は、ダイソンの“羽根のない扇風機”に決定

グッドデザイン大賞を受賞したダイソンのエアーマルチプライアー(左)と、授賞式でプレゼンテーションを担当したダイソンのデザインマネージャー Adriano Niro氏

 日本デザイン振興会は、2010年度のグッドデザイン大賞をダイソンの「エアーマルチプライアー」に決定したと発表した。

 グッドデザイン大賞とは、グッドデザイン賞を受賞した1,110件のうち最も優れたデザインに贈られる賞で、デザインの完成度に加え未来への提案性なども評価される。エアーマルチプライアーは、独自の機構を搭載した“羽根のない扇風機”として注目を集めた製品。エアーマルチプライアーのラインナップとして展開されている「テーブルファン AMO1」「タワーファン AMO2」「フロアーファン AMO3」の3機種すべてが受賞した。

グッドデザイン大賞を受賞したダイソンの「エアーマルチプライアー」左から「テーブルファン AMO1」「タワーファン AMO2」「フロアーファン AMO3」

 2010年のグッドデザイン賞全体では、3,136件の審査対象のうち、1,110件が同賞を受賞している。大賞の候補となるベスト15が選出されている。本日行なわれた表彰式では、事前にベスト15のデザイナーがプレゼンテーションを行ない、その後の投票で大賞が決定する。

 ダイソンのプレゼンテーションは、デザインマネージャー Adriano Niro(エイドリアーノ・ニロ)氏が担当。プレゼンでは、ダイソンの創業者で会長のジェームス・ダイソン氏が動画で登場。エアーマルチプライアーの仕組みや特徴などを自ら説明した。

 エイドリアーノ・ニロ氏は、ユーザーからの反応について「最初消費者はエアーマルチプライアーが何か分からなかった。それにも関わらず、エアーマルチプライアーに対し、興奮と驚きを感じてくれた。発売時に用意していた製品は1カ月で売り切れたほか、エンジニア自らが製作したエアマルチプライアーの動画が動画サイトのYouTubeでの再生回数が120万を越した」と紹介。全く新しい機構を搭載したエアーマルチプライアーへの注目度の高さを披露した。

プレゼンテーションではダイソンの創業者で会長のジェームス・ダイソン氏が動画で登場部品のちょっとした形状で、風量が変わるため全ての部品において何度も調整を重ねたというAdriano Niro氏によるプレゼンの様子。エアーマルチプライアーの大きな特徴の1つは優れた安全性であるという

 大賞選出に当たっては、会場で各デザイナーがプレゼンテーションを行い、その後の投票で決定する。投票はプレゼンテーションの後に2回に渡って行なわれる。まず1回目の投票で、候補を15件から5件に絞り、2回目で上位5件から再投票を行ない大賞を決定。大賞受賞には2位以下と100票以上の差があることが条件となる。ダイソンのエアーマルチプライアーは、いずれの投票でも大差を付けて、大賞に選出された。

 ベスト5に選出された企業と案件名、票数は以下の通り。

ベスト5
1.ダイソン「エアマルチプライアー」 437票
2.キュービック「カプセルホテル9h(ナインアワーズ) 300票
3.ソニー「ハイビジョン液晶テレビ」 198票
4.富士フィルム「汎用超音波画像診断装置」 135票
5.日産自動車「日産リーフ」 111票

キュービック「カプセルホテル9h(ナインアワーズ)」。ホテルを滞在するところではなく、機能するものとして、余計なものを極限まで削った機能的なカプセルホテルソニー「ハイビジョン液晶テレビ」。トレンドに左右されないために余計な装飾を一切排除。1枚のガラスプレートを意識したという富士フィルム「汎用超音波画像診断装置」。検査が必要な場所に持ち運んで、すぐに使えるコンパクトな超音波画像診断装置。医者だけでなく技師でも使えるシンプルな構造とした
日産自動車「日産リーフ」。自社の電気自動車の取り組みだけでなく、世界各地への普及に取り組んでおり「環境に優しいだけでなく、大きな将来のビジョンがある車」として紹介していた投票はこのような小型のデジタル投票機を使って行なわれた投票機の使用テストのため、審査員の年齢層と性別を打ち込むテストが事前に行なわれた
ベスト15の投票結果。ダイソンはこの時点で投票数1位を獲得2回目の投票結果。2位と137票の差を付けてダイソンのエアーマルチプライアーが選出された
ダイソンのエイドリアーノ・ニロ氏

 ダイソンのエイドリアーノ・ニロ氏は受賞について、「イギリスの会社である私たちが日本でこのような賞をもらうということは、格別の意味がある。このように日本で認知されていること大変嬉しく思っている。ジェームスダイソンもとても喜ぶだろう」と語った。

 審査委員は「世界一安全な扇風機を開発した。その安全性を評価したい。ある意味、扇風機の『革命』ともいえる大胆で斬新な発想は、現代のエンジニアやデザイナーに刺激を与えてくれている」とコメントを発表している。

大会審査員長を努めたプロダクトデザイナーの深澤直人氏

 審査員長を努めたプロダクトデザイナーの深澤直人氏は、エアーマルチプライアーの受賞について、「非常にグッドデザインらしい結果。カテゴリーが違うところから大賞を選ぶのは難しいが、審査をしていると、これが大賞になってほしいなというみんなの想いが出てくる。それが形になったと思う」と述べた。

 また、今大会の総評としては「ものというよりことが多かったかなと思う。デザインというものがカテゴリーを越えて認知されてきたのではないか」と、語った。審査については「今大会では、本当の生活の豊かさを追求しているかということを大事にした。また、この大会自体の質を高めるという意味で、グッドデザイン賞自体をグッドデザインするということもことも意識した」と話した。

 なお、大賞に選出されなかった「ベスト15」は、次点となるグッドデザイン金賞を受賞する。金賞は以下の通り。

  ・ヤマハ「電子ドラム DTX950K」
  ・日産自動車「日産リーフの普及とゼロ・エミッション社会の推進のための包括的な取り組み」
  ・本田技研工業「ハイブリッド乗用車 CR-Z」
  ・三浦工業 「蒸気ボイラシステム」
  ・日比谷歌壇「ヒビヤカダン 日比谷公園店」
  ・キュービック「カプセルホテル 9h(ナインアワーズ)」
  ・Vibringe BV「歯科用超音波洗浄器 Vibringe」
  ・富士フイルム「汎用超音波画像診断装置 FAZONE CB」
  ・宇宙航空研究開発機構「宇宙実験施設 きぼう 日本実験棟」
  ・ソニー「レンズ交換式デジタルカメラ/ビデオカメラレコーダー NEX-5/NEX-3/NEX-VG10」
  ・ソニー「ハイビジョン液晶テレビ ブラビア NX800シリーズ」
  ・Dell「教育用ノートパソコン Latitude 2100」
  ・コニカミノルタ「モノクロ複合機 bizhub 423/363/283/223」
  ・AKS「エンターテインメントプロジェクトデザイン AKB48」





(阿部 夏子)

2010年11月10日 19:21