セールス・オンデマンド、価格を抑えた「ルンバ600シリーズ」を投入

~医療用遠隔操作ロボットも披露

5万円台前半のルンバが登場

iRobot(アイロボット)のCEO(最高経営責任者)のColin Angle氏(コリン・アングル)と、ルンバ630

 セールス・オンデマンドは、基本機能はそのままに従来より価格を抑えた米国アイロボット社のお掃除ロボット「ルンバ600シリーズ」2機種を10月19日より発売する。価格はオープンプライス。直販サイト「アイロボットストア」での販売価格は上位機種の「ルンバ630」が54,800円、交換用のフィルターが付属しない「ルンバ620」は49,800円。

 アイロボット社独自の「人工知能 AWARE」と数十のセンサー(センサーの数は未公開)により、室内を検知、自動で掃除を行なうロボット掃除機。ルンバ600シリーズは、ロボット掃除機のさらなる普及拡大を目指し、基本機能はハイエンドモデルの「700シリーズ」と同等としながらも販売価格を2万円以上大幅に下げた点が特徴。

 700シリーズとの細かい機能の違いはあるものの、人工知能を用いた自動掃除機能は同等で、ゴミの除去率は99.1%で、ハイエンドモデルの700シリーズより新たに搭載した「高速応答プロセス iAdapt(アイ・アダプト)」も搭載する。iAdaptとは、人工知能 AWAREが毎秒60回以上行なう状況判断と、数十のセンサーによる検知結果を、高速で処理し、本体に搭載されている40以上の行動パターンから最適な動作を選択するもの。これにより部屋の環境や家具の配置を考慮しんがら、常に最適な掃除を行ない、ゴミを残さず除去するため、同じ所を平均3回以上掃除するという。

ルンバ630ルンバ620ルンバ630、本体正面
本体裏側ペットの毛なども絡み取る高性能ブラシを採用上位機種の700シリーズではタッチパネルを採用するが、600シリーズではボタンになっている

 上位機種と異なるのは、タイマーであらかじめ予約しておいた時間に掃除が始まる「スケジュール機能」、赤外線でルンバの動きを制御し、複数の部屋を効率良く掃除できる「ライトハウスモード」機能、ダスト容器がゴミで一杯になるとランプで知らせる「ゴミフルサイン」機能、軽く触れるだけで簡単に操作できる「タッチパネル」機能などが省略されている点。また、本体に搭載しているゴミセンサーが上位機種の700シリーズが2つなのに対して、600シリーズでは1つになっている。

 付属品に関しては大きく異なる。700シリーズでは、交換用のメンテナンス品としてフィルターセットやエッジクリーニングブラシ、メインブラシ、フレキシブルブラシなどが付属するが、ルンバ630ではフィルターのみが付属、ルンバ620では交換用のメンテナンス品が一切付属しない。これらの付属品は使い続けることで、交換が必要な部品のため、別に購入する必要がある。

 本体サイズは340×92mm(直径×高さ)で、重量は3.7kg。充電時の消費電力は33W。バッテリーは充電式ニッケル水素電池で、充電時間は約3時間。

 なお、赤外線によりルンバの経路をコントロールする「バーチャルウォール」はルンバ630に2つ、ルンバ620に1つ付属する。

 また、ルンバは2012年9月17日で発売10周年を迎える。セールス・オンデマンドでは、これを記念した「ルンバ 10th Birthday 限定モデル」を10月19日より、直販サイト「アイロボットストア」にて発売する。ルンバ630をベースにした限定モデルで、全8色のカラーバリエーションを用意する。1色限定100台で、販売価格は56,800円。本体カラーはロイヤルブルー、オリエンタルグリーン、ディープレッド、パッションピンク、ラベンダー、シルバーブラウン、シャンパンゴールド、ターコイズブルー。

ルンバ発売開始10周年を記念して、限定カラーモデルを発売するカラーはロイヤルブルー、オリエンタルグリーン、ディープレッド、パッションピンク、ラベンダー、シルバーブラウン、シャンパンゴールド、ターコイズブルーの全8色ベースモデルはルンバ630

日本マーケットでさらに市場を拡大したい――iRobot CEOコリン・アングル氏

Colin Angle氏(コリン・アングル)

 会場では、iRobot(アイロボット)のCEO(最高経営責任者)のColin Angle氏(コリン・アングル)が登壇。発売開始から10年が経過したルンバの歴史を振り返りながら、今後の製品展開、日本マーケットの重要性などを語った。

 iRobotは、ルンバのような家庭用ロボットだけでなく、軍事用、政府関連のロボットも多く手がけることで知られる。コリン氏はiRobotの主要ロボット2つとして世界50カ国で発売しているルンバと、東日本大震災による原発事故の事後処理で活躍したバックポットを挙げる。「ロボットはよりよいやり方で問題を解決する方法の1つで、ただかっこいいものではなくて、役立つものであるべき」と語り、ロボットは実用性が第一であることを語った。

 「ルンバは既に世界で800万台以上もの製品を売ってきた。つまりこの10年間、ルンバは掃除だけを一生懸命やってきたのだ。その一方、家庭の中でルンバを使い続ける人にとっては、掃除だけでなく、人生の一部になっているのも明らかだ。ルンバと一緒の動画を(動画投稿サイト)YouTubeにアップする人も多く、中にはなくしたはずの結婚指輪をルンバが探し出してくれたという話も聞いている」

iRobotが開発した偵察用小型ロボット「FirstLook」。全長わずか25cmで、窓から放り込んでも問題なく動作するほど、頑丈な造り。胴体部にカメラが搭載されており、操縦者はそのカメラの映像をモニターで確認できるFirstLookのリモコン。カメラ映像が確認できる福島原発でも活躍した「パックボット」

 その一方、発売当初は苦労したことも明かした。「ルンバの発売当初は値段も高く、なかなか市場に受け入れられなかった。そこで、まずハズブローという会社と提携し、生産工程を応用、その後掃除用具や洗剤メーカーとして知られるSC.Johnsonと提携した。SC.Johnsonの社長であるVic thomas氏が私に教えてくれたことは、ルンバ開発の上でとても役に立っている。それは『ユーザーにとって掃除するのがロボットであるということは問題ではない、きれいにそうじできるということが重要なのだ』というものだ。その言葉を聞いてから、何千、何百というテストを繰り返し、勤勉に掃除するということだけに注力してきた」と話し、ルンバの掃除性能が年々上昇してきていることをアピールした。

 プレゼンテーションでは、世界の様々なメーカーがルンバのようなお掃除ロボットを開発、発売していることに関しても触れた。「ロボット掃除機を作るメーカーが増えてきたということは歓迎すべきこと。ロボットに関心が集まるのは良い。それらのメーカーに私がアドバイスするとしたら、時間をかけすぎだということ。色々な機能を搭載していても、肝心の掃除機能が備わっていない。自社でそれらのロボット掃除機をテストしたところ、ゴミ収集率は全て80%以下だった。iRobotはロボット掃除機のリーディングカンパニーであるというだけでなく、能力が圧倒的に優れている。それが世界のマーケットシェア80%を独占するという結果にも表れている」と自信を見せた。

2002年に発売した初代ルンバこれまでに発売した様々なモデルを常に改良してきたSc.Johnsonの社長からの助言に乗っ取り、掃除性能の向上に努めた。現行モデルでは99%以上のゴミ除去率を実現

 また、日本のマーケットについては「日本はアメリカに次いで、世界2位の売上を誇る国。日本ユーザーは性能や機能に関する要求も高く、メーカーとしては非常にやりがいのある国。ただ、製品の普及率を見ると、まだ全体の1~2%に過ぎない。価格を抑えた600シリーズを投入することで、さらなる成長機会を得られるだろう」と述べた。

遠隔地の往診ができる医療用ロボット

 コリン氏はまた、「次のミッション」として、医療用ロボット「RP-VITA」を紹介。これは高性能カメラとコミニュケーション機能を備えたロボットで、離れた場所でも医師の診断などを受けられるロボット。自身のセンサーにより本体周囲を自動でマッピングし、実際の配置と相関させることができる。

医療用ロボット「RP-VITA」相手の顔が表示される画面カメラとセンサーを搭載する

 会場では、実際に米カリフォルニア州・サンタバーバラにある病院と通信、デモンストレーションを行なった。本体操作はAppleのiPadで行なう。病院に配置されたRP-VITAを通じて、会話や診断ができるほか、病院内の配置図もRP-VITAが把握。たとえば、入院中のスミスさんに会いたいと言うと、RP-VITAが自動でスミスさんのベッド前に行って、スミスさんの顔や患部など細かいところまでカメラに映し出す。カルテや血圧、心拍数などの情報も瞬時に確認できるため、わざわざ遠くの病院まで足を運ぶ必要がないという。

米カリフォルニア州・サンタバーバラにある病院と中継し、RP-VITAの機能を説明。RP-VITAに誰々の診察をしたいと言えば、RP-VITAがマッピングしたデータに基づき、その患者のベッドまで自動で動くマッピングデータを表示したところ患者のカルテの情報も表示できる
血圧や脈拍も表示できる脳派などのデータも1つの画面で確認できるまつ毛の数を数えられるくらい、ズームできるので、患者の表情や患部の状態を見逃すことがないという
セールス・オンデマンド 副社長 室崎肇氏

 セールス・オンデマンド 副社長 室崎肇氏は、日本におけるロボット掃除機市場が大幅に拡大していることを指摘。掃除機全体の市場において、2008年のシェアはわずか1%だったが、2011年は10%まで拡大、台数ベースにおいては14.1倍の急成長を続けているという。「ルンバは日本の床室やゴミの性質などを理解した上で様々な改良を加えてきている。今回価格を抑えた600シリーズを発売することで、さらに普及率が拡大するとみている」と自信を見せた。

ロボット掃除機のカテゴリシェアは近年飛躍的に上昇している日本におけるルンバの販売台数は60万台を達成





(阿部 夏子)

2012年9月11日 15:53