パナソニック、太陽光発電で作った電気を蓄える住宅用蓄電システム
パナソニックの「住宅用 創蓄連携システム」。右がリチウムイオン蓄電池ユニット、左が「パワーステーション」 |
パナソニックは、太陽光で発電した電気を蓄電池に蓄え、停電時や平常時に利用できる蓄電システム「住宅用創蓄連携システム」について、3月21日に受注を開始する。希望小売価格は、リチウムイオン蓄電池ユニットが1,218,000円、蓄電池と太陽電池のパワーコンディショナーを兼ねた「パワーステーション」が672,000円。モニターなどを含めたセット価格は2,110,500円。
太陽光発電システムと組み合わせられる蓄電システム。パワーステーションで太陽光パネルと蓄電池を連携し、太陽光パネルで発電した電気を蓄電池に溜めて、停電時のほか、平常時の電力としても使用できる点が特徴となる。
リチウムイオン蓄電池ユニット。容量は4.65kWh | 太陽光とリチウムイオン蓄電池ユニットのパワコンを兼ねた「パワーステーション」 | 左の2ユニットに、同社製の太陽電池を組み合わせて使用する(太陽電池は別売り) |
パナソニック まるごとソリューションズ本部 住宅システム企画グループの磯崎典夫グループマネージャー |
本製品を開発した狙いについて、パナソニックのまるごとソリューションズ本部 住宅システム企画グループの磯崎典夫グループマネージャーは「太陽光単独だと、停電時に安定して電力が使用できなかったり、自立運転用の非常コンセントに繋ぐなどの問題があった。一方、蓄電池単独では、電力会社からの電気でしか溜められないため、停電時は電池を使いきってしまったら再充電できない。本製品は、その両方を一体化することで、蓄電池の電気を使った後に、太陽光発電で蓄えられる点が特徴」と説明した。
システムの概略図 | 停電時、平常時の電力の経路 |
■停電時は約2日間の電源を確保。電池が空になったら太陽光で充電
停電時の場合、朝~昼間は太陽電池と蓄電池ユニットを連携し、生活に必要な電力を供給。余剰電力は蓄電池に充電する。また、晩~深夜は蓄電池の電力を供給する。蓄電池が満充電の場合、停電時でも約2日間の電源が確保できるという(冷蔵庫/テレビ/照明/携帯電話の充電に使う場合)。
また、バックアップ用の分電盤を配電設計に組み込むことで、停電時にもコンセントの差し替えなしで使用できる。コンセント式でない照明機器も利用可能という。停電時の自立運転に切り替えるには、安全のため、手動でパワーステーションの電源を切り替える必要がある。
なお、リチウムイオン蓄電池ユニットの容量は4.65kWh。電源にはパナソニックのノートパソコンに採用されているリチウムイオン電池120本を4セット組み合わせたモジュールを採用している。電池には短絡防止機能を備えており、満充電地でも長期間維持するという。
昼間の停電時には、太陽光発電と蓄電池の電力で家庭内の電気をまかなう。バックアンプ用分電盤に接続すれば、コンセントの差し替えがなくても使用できる | 夜間は蓄電池からの電池を使用する。約2日間の電源が確保できるという |
電池はパナソニック製のリチウムイオン電池を使用。ノートパソコンにも使用されているという | リチウムイオン電池のモジュール |
■平常時には電気代が抑えられる。“自分で作った電気”だけで生活することも
平常時には、ユーザーのライフスタイルに併せて、(1)経済優先モード、(2)環境優先モード、(3)蓄電優先モード」の3種類のモードが利用可能。
(1)経済優先モードは、夜間の安い電気料金を利用して、蓄電池を充電。昼間の電気料金が高い時間帯に放電することで、買電量が抑えられる。また、余剰電力を売電したり、電力需要のピーク時に系統電力の使用を控えることによるピークシフト効果もあるという。
(2)環境優先モードは、昼間に太陽電池で発電した余剰電力を蓄電池に蓄え、夜間に蓄電池の電気を使用するモード。昼間も夜もクリーンエネルギーを使用することができるモードとなる。
「環境優先モードでは、太陽光で作った電気を、売電ではなく蓄電池に溜める。自分で作った電気で生きていく“地産地消”のような使い方になり、結果的にCO2削減にもつながる」(磯崎グループマネージャー)
経済優先モード。電気料金が安い深夜電力で電気を蓄えて、昼間に放電することで、電気料金が抑えられるという | 環境優先モードは、昼間に発電した余剰電力を蓄電池に溜め、その電気を夜使用する |
(3)蓄電優先モードは、停電や災害に備えて、蓄電池が常に満充電になるように動作するモードとなる。なお、そのほかのモードでも、非常時の動作を考慮し、充電池は必ず一定の容量が残る仕様となっている。
このほか、エネルギーの使用状況が確認できるワイヤレスモニターも用意。さらに、Android端末の携帯電話やパソコン、同社のデジタルテレビ「ビエラ」でも確認できるモニタリングアダプタも発売される。モニターでは、好みの写真がトップ画面に設定できるフォトフレーム機能や、電気の流れをわかりやすく表示する画面などが搭載される。
モニター用の電力検出ユニット | 発電量や蓄電量は、テレビやスマートフォンで確認できる |
リチウムイオン蓄電池ユニットの本体サイズは450×156×600mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は60kg。電池容量は4.65kWhで、充電時間は約4時間。期待寿命は約10年。設置場所は屋内。
パワーステーションの本体サイズは630×250×1,500mm(同)で、重量は65kg。定格出力は5.5kW。自立運転時の出力は2kVA。定格入力電圧は系統電源がAC単相200V、太陽電池がDC250V。設置場所は屋外。自立運転への切り替え時間は約10秒。
販売ターゲットは新築住宅がメインだが、既設でも対応可能。燃料電池、または他社製太陽光パネルとの連携には対応しない。
■2012年は“スマートハウス元年”。蓄電池には補助金も検討されている
パナソニック エコソリューションズ社 長榮周作社長 |
パナソニック エコソリューションズ社の長榮(ながえ)周作社長は、発表会の冒頭で「東日本大震災に端を発した電力不足により、昨年の夏は我慢の節電を強いられた。みなさんの意識が省エネやエコ、安全な発電に高まってきている。我々はエネルギーの消費を抑えるライフスタイルを提案していかなればいけない」と、エネルギー関連製品の重要性を指摘した。
また、創蓄連携システムの意義については「当社では太陽光発電システムやオール電化、LED照明、自動車の充電システムを扱っており、昨年夏には蓄電システムを発表した。しかし、これまでは創エネと蓄エネを分離して考えていた。(エネルギー関連の)商品が揃ったことで、それを繋げていきたい」と説明した。さらに長榮社長は、エネルギーの「創る」「溜める」「繋ぐ」「上手に使う」ができる家「スマートハウス」について、2012年を“元年”と設定。今後は海外も含めて、本システムの普及促進を図る意向を示した。
長榮社長は2012年を「スマートハウス元年」とした | パナソニックでは、太陽光発電システムや蓄電池など、既にエネルギー関連の商品を発売している | 創蓄連携システムは、これまで分離していた「創エネ」商品と「蓄エネ」商品を連携することから生まれた |
約200万円という価格については、磯崎典夫グループマネージャーは「市場には多くの蓄電池が出ているが、価格は4kWh~5kWhで200万円クラスのものが多い。当製品は太陽光と蓄電池のパワコンがセットで、200万円を切る価格となっている」とアピール。さらに、「蓄電池は政府から、(購入額の)1/3の補助金が出る方向で検討されている」と、補助金によるサポートが受けられる可能性を示した。
発表会には、フリーアナウンサーの中井美穂さんと、節約アドバイザーの和田由貴さんが登壇。中井さんは「空気清浄機みたい。これくらいの大きさならいいですね」と、屋内に設置するリチウムイオン蓄電池ユニットのコンパクトさを評価。また和田さんは、「お財布にやさしいのが一番うれしい。今後は原発が縮小し、石油や天然ガスの高騰で、電気代の値上げも考えられますが、たくさんの人が使えば、ひとりひとりの力が足りなくても、ピーク時の電力を抑えられて、ゆくゆくは電気料金の値上げも抑えられるのでは」と、ピークカットと電気代の節約に繋がる点を歓迎した。
フリーアナウンサーの中井美穂さんは、リチウムイオン蓄電池ユニットのコンパクトデザインを評価 | 節約アドバイザーの和田由貴さんは、節電に効果がある点を評価した | 発表会では「24時間太陽のエネルギーを活かす暮らし」というキャッチコピーが用意されていた |
(正藤 慶一)
2012年2月23日 18:42