長期レビュー

東芝「TORNEO W VC-SG711」 前編

~フィルターがない「本格サイクロン」の高級掃除機
by 阿部 夏子

 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、お届けする記事です。(編集部)



東芝「TORNEO W VC-SG711」

 今回から2回に渡って、東芝ホームアプライアンスのサイクロン式掃除機「TORNEO W(トルネオ ダブル) VC-SG711」を紹介する。トルネオ ダブルとは、東芝のサイクロン式掃除機の最上位機種として、3月1日に発売されたばかりの新モデルで、独自の「ダブル分離サイクロン」機構搭載により“吸引力が99%持続する”点が最大の特徴だ。

 高級サイクロン式掃除機といえば、イギリスのダイソンのものが有名だが、今回は日本のサイクロン式がどう進化しているのか、日本メーカーならではの「かゆいところに手が届く」最新機能を紹介していきたい。


メーカー東芝ホームアプライアンス
製品名TORNEO W VC-SG711
希望小売価格オープンプライス
購入場所ヨドバシ.com
購入価格84,800円


とにかくサイクロンシステムがスゴイ!

 製品本体の詳細に入る前にまずは、そもそもサイクロン式って? ということについてお話したい。サイクロン式掃除機は、竜巻(サイクロン)のように猛烈に回る空気の流れを作って、ゴミと空気を分離させている。

 なぜサイクロン式掃除機の吸引力が落ちにくい、あるいは落ちないかというと、紙パック式掃除機を例にとって考えてみるとわかりやすい。紙パック式掃除機では、紙パックの中にゴミと空気を一緒に取り入れ、ゴミだけを取り除き、残った空気は排気している。ただし、紙パックの中にゴミが溜まってくると、空気の通り道がなくなってしまい、それが吸引力の低下につながるのだ。

 一方、サイクロン式掃除機では、空気が回転する際に起こる遠心力を使ってゴミを空気を分離するため、空気の通り道をゴミで塞いでしまうことがなく、吸引力を持続することができる、という理屈だ。一口にサイクロン式といっても、製品ごとによってその方法は様々で、サイクロン式とは名ばかりで、実態はフィルターでゴミを濾しとっているだけ(つまり紙パック式と一緒)の製品や、中には竜巻すら発生させていないという製品もある。

 もちろん、東芝のような大手メーカーの製品はそんなことはなく、従来機種でももちろん竜巻を発生させて、ゴミと空気を遠心分離していた。ただし、サイクロン機構の上に、プリーツフィルターと呼ばれる、ミクロサイズのゴミを取り除くフィルターを搭載していた。ほとんどのゴミは遠心分離によって下のダストボックスに落ちていたが、遠心分離する際に上に舞い上がってしまう粉ゴミなど、ミクロサイズのゴミを分離でききれずに、フィルターを使っていたのだ。

 じゃあ、これが悪いことなのかと言われればそういう訳ではない。むしろ、この方式が日本のサイクロン式掃除機の主流だし、フィルターの目詰まりを防ぐために、運転終了後には自動でフィルター掃除を行なっている。

 ただ、フィルターを使っている点からいうと、吸引力が落ちる可能性は高くなるし、“純粋”なサイクロン式とはいえない。また、フィルター自動お掃除機能の音が気になるという声もよく聞く。

 そこで、今回のトルネオダブルでは、従来フィルターで濾していた細かいミクロのゴミ専用のサイクロン機構をもう1つ搭載。それが独自の「ダブル分離サイクロン」機構というわけだ。

 本体前方のダストボックスの中でゴミと空気を遠心分離する機構は、一般的なサイクロン式掃除機と同じだが、トルネオダブルでは後方にも、サイクロン機構を搭載。円筒形の筒が12個並んだ12気筒のサイクロンで、前方のサイクロンで取り除けなかった細かいゴミを分離するという。

従来から採用している遠心分離機構の「デュアルトルネード」システムを搭載したダストボックスミクロサイズのゴミを取り除くために搭載した12気筒のサイクロン「ミクロトルネードシステム」12気筒の下には空気と分離されたミクロサイズのゴミが入るダストボックスが設けられている

 これら2つのサイクロン機構によって、ゴミと空気を徹底的に分離するため、トルネオダブルではフィルターを使っていない。つまり、運転運転終了後にカタカタとなる「自動フィルター掃除」機能も必要ないのだ。

 ただし、2つのサイクロン機構にはそれぞれダストボックスが設けられているので、ある程度の手間は必要になる。といっても、12気筒サイクロン機構で分離するゴミはミクロサイズなので、ダストボックスもなかなかいっぱいにならない。今回1カ月ほど製品を使ったが、それでもまだ余裕がある感じだ。この調子だとあと3カ月くらいはゴミ捨ての必要がなさそう。

 と書くと、「え? とったゴミを3カ月もそのままにしておくなんて!」を思われる方もいるかもしれないが、トルネオダブルではそこも配慮されている。12気筒サイクロンにより分離したミクロサイズのゴミが入るダストボックスの上にUV除菌ライトを搭載し、菌を素早く除菌するという。

豊富な付属品にびっくり

 前置きがかなり長くなってしまったが、ここからは本体を見ていこう。本体サイズは268×410×280mm(幅×長さ×高さ)で、本体重量は4.5kg。本体カラーは、ツヤのあるグランレッドの1色のみとなる。

 本体は、サイクロン機構を2つ載せているだけあって、大きくてゴツめの形に、背中にはシルバーに光り輝く12気筒のサイクロンを背負っている。

製品本体本体上部。12気筒のサイクロン部が見える本体側面
本体後方。大きな排気口が設けられている本体背面大きなキャスターが中央に配置されている
本体からダストボックスを取り外したところダストボックスの取り外しは、ボタン1つで簡単にできる本体操作は手元スイッチで行なう

 驚いたのが、付属品の多さ。ロングブラシ、ふとん用ブラシ、洋服布用ブラシ、丸ブラシの4つのアタッチメントのほかに、アタッチメント専用のホースや、伸縮ノズルまでがついてくる。さすがにこれだけ多いと、管理するのが大変! と思っていたら、本体には、これらの付属品を入れるため専用のバッグまでついてくるのだ。

 最近の掃除機のアタッチメントは優れているものが多いが、本体に収納できないタイプがほとんどなので、使いこなせないことも多い。専用のバッグがあれば、たくさんあるアタッチメントをなくすこともなさそうだ。

本体にはロングブラシ、ふとん用ブラシ、洋服布用ブラシ、丸ブラシの4つのアタッチメントのほかに、アタッチメント専用のホースや、伸縮ノズルなどが付属するアタッチメントを収納するための専用袋が付属するアタッチメントをすべて入れたところ。細長くて、サイズがぴったりだ

確かな吸引力

 使ってみた第一印象は、「やっぱり吸引力あるなぁ」ということ。特に、実感したのは、毛足が長いラグの上を掃除した時。1週間に3回ほどは掃除機をかけているはずなのに、トルネオダブルのダストボックスにはみるみるうちにホコリが溜まっていく。

 掃除しながら、ゴミの取れ具合が確認できるのは、サイクロン式ならではの利点だが、トルネオダブルでは、もっとわかりやすくゴミが吸えているかのかが確認できる「ゴミ残しまセンサー」なるものがついている。これは、本体吸い込み口先端に配置された赤外線方式のセンサーがゴミやホコリを感知し、ランプを点灯するというもの。ゴミがなくなると、消灯する仕組みなので、畳や絨毯、ラグなど、肉眼ではゴミが見えにくい場所を掃除するのに便利だ。

使っているところセンサーがゴミやホコリを感知すると点灯する「ゴミ残しまセンサー」

 もう1つ便利だったのが、ヘッドに搭載されている床を照らすためのLED。最近の高級掃除機によく搭載されている機能だが、使ったのは初めて。最初は、「わざわざ掃除機にライトをつけなくても、部屋の明かりで十分なんじゃないか」と思っていたが、使い始めてみると思っていたよりもずっと良い。感動したのは、ベッドの下を掃除したとき。普段は見えない細かいホコリがライトによって照らされて「こんなに汚れていたの?」とびっくりしたくらいだ。

ヘッド部のすぐ上に設けられているLEDライトヘッドの先方を照らす室内の灯りが届かないベッドの下などを掃除するのに便利。灯りによってホコリやゴミが照らし出される

 また、ヘッド部分の操作性も良い。最近の掃除機はほとんどがモーター搭載で、自分でどんどん動いてくれるのはいいのだが、逆にコントロールしづらいことがある。その点、トルネオダブルのヘッドは、軽すぎることもなく、自分でしっかり操作できるという印象。机の下など低い場所も掃除しやすかった。

マイナスイオン発生器を内蔵した「Agパワーイオンヘッド」。上部には、浮遊ゴミを吸い込む「床上ダストゲッター」も搭載しているブラシ側。小さいキャスターを5個搭載しており、小回りがきく印象だハンドル形状も持ちやすい

全部入りの贅沢な掃除機

 本体デザインはなんだかガンダムのようなメカっぽい印象があるが、使い始めてみてもその印象は変わらない。最新の機能が盛りだくさん搭載されているだけでなく、ヘッド部分やハンドル部の構造など、使い勝手をよくするためのギミックがあちこちに詰まっている。

 実は、私はダイソンのサイクロン技術に惚れ込んで、ここ数年はダイソンの製品を使っていたのだが、トルネオダブルを使ってみて、日本のサイクロンもここまで進化しているんだなということを改めて実感した。吸引力はもちろん、細かな使い勝手まで配慮されているのは、国内メーカーならではの強みだ。

 明日掲載の後半では、豊富なアタッチメントの使い心地や気になるお手入れ方法についてご紹介する。



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2012年4月16日 00:00