長期レビュー

パナソニック「NA-FR70S2」

~夜でも使える、静かな縦型洗濯乾燥機
by 正藤 慶一
 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



忙しくて洗濯できず……夜でも使える静かな洗濯乾燥機が欲しい


今回レビューする、パナソニックの「NA-FR70S2」
 我が家の洗濯機は、無印良品の「M-AW70A」。リーズナブルな価格とシンプルな機能を備えた、これぞ“普通の洗濯機”というような製品で、特にこれまで不満なく使い続けていた。

 しかしこのところ、どうも「運転音」に不便を感じることがあり、もっと静かな洗濯機を使いたいと思うようになった。とはいっても、M-AW70Aは特別にうるさいというわけではなく、むしろ全自動洗濯機としては比較的静かな部類に入る。これは洗濯機側の問題ではなく、我が家の使用環境が問題だ。

 私が住んでいる部屋は、室内に洗濯機専用の置きスペースがなく、ベランダに設置している。そのため、夜遅くに洗濯機を動かすのは、近所迷惑を考えると憚られる。しかしそうなると、夜遅くに帰宅した場合には当然洗濯機は動かせず、それが何日も重なったことで、洗濯物がどんどん溜まってしまった。週末に洗おうとも、雨降りだったり用事が入ったりで、うまくいかない。早く起きて洗濯すれば良いのかもしれないが、洗濯の終了時間を待ちその後干す手間を考えると、出勤前の忙しい時間にはなかなか気が進まない。

これまで使っていた、無印良品の「M-AW70A」。普通に使うのであれば問題ないが、スタンダードな機種のため、夜間に使う仕様にはなっていない

 その結果、我が家の洗濯カゴは溢れに溢れ、ただでさえ狭い室内スペースは洗濯物に占領された。

 もちろん、こうなるまでほったらかしにしていた私のだらしなさが主な原因ではあるのだが、M-AW70Aはもともとスタンダードな製品であるがため、そんなダメな私に付いてきてくれるほどの特別な機能はなかった。忙しい日々でも快適な洗濯ライフを送るには、安さやシンプルさがウリの製品では、限界があることを悟った。

 それなら、運転音が静かな洗濯機を購入すれば、たとえ夜であろうと近所に迷惑をかけることもなく気兼ねなく洗濯でき、洗濯物を溜めることもないはず。おまけに乾燥機能も付いていれば、雨の日でも洗濯物を溜める心配はないだろう。というわけで、新しい洗濯乾燥機の購入に至ったわけである。

“低騒音だから、夜使える”はホント?


静音性に優れた「NA-FR70S2」を購入。M-AW70Aはまだまだ現役で使えるので、友人に譲渡した
 そこで今回購入したのは、パナソニックの縦型洗濯乾燥機「NA-FR70S2」だ。

メーカーパナソニック
品番NA-FR70S2
購入店舗yodobashi.com
希望小売価格オープンプライス
購入価格119,800円


 このNA-FR70S2の特徴は、洗濯時26dB、脱水時37dBという高い静音性が特徴。一般的に40dBは「静かな公園、図書館の中」、30dBは「ささやき声」とされているが、スペック的に見れば、M-AW70Aと比べてもよりも断然に低い数値となっている。同社でも、2月の製品リリース時点で「業界No.1の低騒音」としている。

 実はこの製品、パナソニックが4月頃から展開している広告プロジェクト「パートナー。 Panasonic」の商品として、洗濯機型のキャラクターとともに、街のポスターや電車広告などで広くアピールされていた。その広告内に“低騒音だから、夜使える”というキャッチコピーがあったが、「我が家のベランダ置きの環境でも、本当に夜に使えるのかな」と、ひそかに思っていた。

 果たして、広告のキャッチコピー通り、夜中に使えるほど静かなものなのか? 今回はこの「NA-FR-70S2」を購入し、3週に渡ってその使用感をレビューしたい。

 なお、NA-FR70S2の洗濯容量は7kg、洗濯~乾燥容量は4kg。洗濯が8kg、洗濯~乾燥が4.5kgの「NA-FR80S2」という機種もあるが、今回はM-AW70Aと同じ7kgタイプを選択した。

【10/5 追記】
 当レビューではNA-FR-70S2をベランダに設置しているが、説明書では、感電・火災の恐れがあるとして、ベランダへの設置は推奨されていない。ただし、屋外にしか設置できない集合住宅も多いため、実態に合わせて自己責任のもと使用した。


「NA-FR70S2」の広告ポスター。「低騒音だから、夜使える」というコピーが、以前から気になっていた「NA-FR70S2」の広告内キャラクターとして登場した「ウォシュリー」。ポスターや電車内広告で見覚えのある人もいるだろう


ドラム式でなく縦型を選んだ理由は「価格」と「静音性」

こちらはパナソニックが9月26日に発売するななめドラム式洗濯乾燥機「NA-VR5600」。洗濯乾燥機といえばドラム式というのが最近のトレンドだが……
 ところで、家電に詳しい方なら、「あれ、何で縦型の洗濯乾燥機? ドラム式じゃないの?」と思うかもしれない。洗濯乾燥機には縦型とドラム式の2つがあり、ドラム式は消費電力や使用水量などランニングコストの面、乾燥容量や仕上がりの面で、縦型よりも優れている傾向にある。そのため、このところの洗濯乾燥機のトレンドとなっている。

 それでも、ドラム式ではなく、縦型の洗濯乾燥機にした理由は、まず1つに価格の問題がある。最近は安い製品も出てきたものの、基本的にドラム式は高く、ハイスペックな機種なら20万円以上の出費は覚悟しなければいけない。

 もう1つが、NA-FR-70S2は「ドラム式よりも静か」という点だ。NA-FR-70S2の洗濯時26dB、脱水時37dBというスペック値は、パナソニックのドラム式洗濯機の最新モデル「NA-VR5600」の洗濯時32dB、脱水時41dBより優れている。もちろん、消費電力量や使用水量など、その他の値ではNA-VR5600の方が優れているが、NA-VR5600は実売30万円の“超高級機種”であるのでこれは当然(下のスペック表を参照)。それを考えると、NA-FR-70S2は実売10万円程度ではあるにも関わらず、このように高い静音性を備えていることは特筆に値する。「とにかく静かであることにこだわりたい」という人向けの製品であると言えそうだ。

【パナソニックの洗濯乾燥機のスペック比較】
メーカーパナソニック
タイプ縦型洗濯乾燥機ドラム式洗濯乾燥機縦型洗濯乾燥機
型番NA-FR70S2NA-VR5600LNA-FV55B1
運転音洗濯約26dB約32dB約33dB
脱水約37dB約41dB約46dB
乾燥約45dB約42dB約45dB
洗濯容量7kg9kg5.5kg
乾燥容量4kg6kg2.8kg
運転時間洗濯→乾燥時間約2時間50分約2時間28分約5時間半
洗濯のみ約46分約52分約42分
消費電力量洗濯→乾燥時間2,150Wh860Wh2,690Wh
洗濯のみ58Wh79Wh97Wh
標準使用水量洗濯→乾燥時間119L56L104L
洗濯のみ98L72L115L
実売価格(yodobashi.com)119,800円298,000円44,800円


 この静音性は、パナソニック独自のモーター「ハイパーウェーブインバーター」や、本体内部の制振材、サスペンションの改良など、内部にさまざまな静音機能を搭載していることが影響しているらしい。他社製品でも、ここまで運転音が静かな製品は少ない。

 ちなみに、パナソニックの調べによると、洗濯機全体におけるドラム式洗濯機の構成比は年々増えてはいるものの、設置性や使い慣れていることなどを理由に、市場の約83%が縦型となっているとのこと。まだまだ根強い人気があるようだ。

本体内部の制振構造の図解パナソニックの調べによると、洗濯機の総需要はドラム式よりも縦型の需要の方が高いという


実際に使ってみると……え、これ本当に動いているの!?

 さて、いくらスペック値で「静か」と言われても、使ってみてうるさかったら話にならない。というわけで、我が家に到着したNA-FR-70Sをさっそく使い、運転音を聞いてみることにする。

 操作は至って簡単。電源ボタンを押し、「洗濯」や「洗濯~乾燥」などのモードを選んだ後、スタートボタンを押す。その後、洗剤の投入量がモニターに表示されるので、後は洗剤を洗濯槽内の「洗剤ポケット」に入れ、2枚重ねのフタを閉じるだけ。これで完了だ。

 なお、洗濯~乾燥容量の上限である4kgの目安は、衣類を洗濯槽内に入れたときに、洗濯槽のステンレス部分の上端のラインになる。服を押しつけずに、このステンレスのラインの下まで衣類が収まれば、乾燥まで一気にできることになる。

フタは内蓋と外蓋の二重構造カゴに入れた洗濯物(上)を、槽内に入れたところ。衣類が槽内のステンレスの部分までに収まっていれば、乾燥まで使用できるという洗剤は槽内のケース内に投入する
運転をスタートすると、洗い/すすぎ/脱水/乾燥のランプが点灯。ボタンを押してそれぞれの運転時間を変えることもできる運転時間は、スペック表の「2時間50分」よりも10分長い「3時間」と表示された

 そうこうしているうちに、洗濯槽内に水が行き渡り、洗濯運転がスタートした。運転音は……これは本当に静か。「ゴロロロ」という洗濯槽が回転するような重低音は響かず、槽内に水が注がれる音や、槽の回転により波が立つ音、排水の音……など、水の音しか聞こえない。窓を閉じて室内側から聞けば、運転しているのかどうなのか、まったく分からない。この静かさにはびっくりしてしまった。これなら夜間の運転でも問題はないだろう。

 洗濯が終わった後は、すすぎ→脱水に入る。運転音は、こちらもまた静か。洗濯時と比べると、槽を高速で回転するため「ゴロロロ」という重低音がするが、本体がほとんど揺れないこともあって、そこまでうるさくは感じない。エアコン室外機と比べても静かな部類に入るだろう。窓を閉めれば音はかなり抑えられるため、個人的には夜間の使用も問題ないと感じた。細かい点を指摘すると、すすぎ工程では、水を頻繁に入れ替えるため、ジャバジャバという水音が気になった。

洗濯運転のようす。音はとにかく静かで、水のチャプチャプといった音以外はあまり聞こえない洗濯時と比べると、脱水時はさすがに洗濯槽が回転する音が聞こえる。それでも、本体の振動は少なく、静かである

 脱水が終わると、約2時間の乾燥運転に自動で切り替わる。ヒーターの「ゴー」という送風運転が加わるため、洗濯、脱水と比べるとさすがに静かとは言えない。しかし、やはり洗濯槽が回転する重低音はあまり響かないため、想像していたよりは静かだった。屋外で使うとなると、深夜帯では厳しいかもしれないが、まだ寝静まらない午後9時~10時くらいなら、近隣への迷惑にはならないレベルに感じた。室内の場合は、設置場所が寝室やリビングから離れていれば、睡眠やくつろぎの妨げにはならないだろう。

乾燥中は温風が槽内に吹き込むため、洗濯や脱水と比べるとさすがに音が大きくなる

総合的に音は静か。よほど深夜の時間帯でない限りは、夜の使用も特に問題はないだろう
 使ってみて気付いたのが、本体の揺れがとにかく少ないこと。洗濯槽自体はグルグルと回っているのに、本体は動じないため、洗濯物を置く地面に伝わる振動がほとんどない。これならマンションの下の階に住んでいる人にも、あまり迷惑は掛からないだろう。

 感想をまとめると、洗濯は「すっごく静か!」、脱水は「静か」、乾燥は「まあ静かな部類」といった印象だ。室内設置なら、夜中でも問題なく使用できるだろう。屋外設置では乾燥時の音が引っかかるが、洗濯→脱水の基本運転なら、本当に静かに運転できる。“低騒音だから、夜使える”という広告の謳い文句は、確かにその通りだと感じた。静かさにこだわりたい場合には、ドラム式よりも安く購入できるという価格面から見ても、十分に価値があると思う。


 運転音については以上だが、洗濯乾燥機の基本機能である洗濯、乾燥についてはちゃんと機能しているのだろうか。次回からは、洗濯と乾燥機能について見ていきたい。



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2009年9月9日 00:00