ぷーこの家電日記

第604回

下町で切子体験 東京もふるさとだった!

数多ある、ふるさと納税の返礼品の中で、体験型の返礼品を選ぶことが多かった2024年。選んだ自治体に寄付をし、その地に行き体験して、その地の人と話したり、その地の物を食べたり買ったり、お土産とともに思い出を持ち帰ることができる、その地を知る入口でも架け橋でもある最高の返礼品だと思っている。

その最高の体験型の返礼品なのだけど、つい出不精が祟って、有効期限が切れそうなところで、慌てて駆け込んできたのが2026年1月。先週の醤油搾り体験に引き続き、今回は切子作りの体験談である。

切子とはガラスカット工芸品で、日本各地で作られている工芸品である。有名なのは「江戸切子」「薩摩切子」「小樽切子」など。それぞれ違う歴史や特徴を持つけれど、美しいガラスに、繊細で美しいカットが施されている切子は、どれもめちゃくちゃ綺麗だ。そして、その技術と手間のかかり方から、価格もそれなりにする。

そんなこともあり、私は切子のグラスは1つも持っていないし、あまり身近に感じたことはなかった。全然知らない切子ガラスの世界にちょっとでも触れられる体験は、この高い敷居を超えていいのか!? みたいなちょっと緊張を伴うワクワクであった。

尋ねた先は、東京都台東区の浅草駅のすぐ近く。1階が江戸切子をはじめ、いろいろなグラスが販売されている店舗で、2階部分で切子体験のワークショップが開催されているらしい。

切子体験はすごく人気なワークショップなのか、私たちが参加した回も6人、満席だった。時間は90分。削るグラスにマジックで模様を描き、描いた印に回転道具を当て、ガラスを削っていく。

高速に回転する砥石のような部分にグッとガラスを押し当てると、押し当てた部分のガラスが削れて模様がつく。仕組みはとてもシンプルで、頭ではバッチリ理解できているのに、これがまたなかなか上手くいかないのだ。

私が1番苦戦した原因はガラスの屈折による設地面の掴めなさ。思っていたところが削られず、どうにもズレてしまうのだ。非常に難しい。片目で見たり横から見たりしながら、なんとか練習の彫りを経て、いざ作品作り。

20種類くらいのグラスから、好きなものを選んで好きなデザインを彫っていくのだけど、私も夫も迷いなく日本酒用のお猪口を選んで笑ってしまった。そう、我々はマイグラスで冷酒を飲みたいのである。

迷ったり躊躇したりするほど技術がないからか、妙に思い切りだけは良く、それぞれ好きに描いて彫って時間にかなり余裕を持って一番乗りでマイグラスを完成させた。上手ではないけれど、大大満足! お互い褒めちぎり自画自賛し、そうそうに上機嫌で、教室をあとにしたのでありました。

帰りに「1階の店舗を見て帰ろう」とお店に寄ってみた。体験する前と体験後では切子を見た時に感じる「凄い!」という感動が雲泥の差。

モノでもコトでも、ほんの少しの体験だけで、こんなにも解像度が違うのかと、この「凄さの感じ方が全く違うという体験」こそが、今回の本当の体験型チケットの返礼品だったのじゃないかと思ってしまうほど、プロってめちゃくちゃ凄い! と感動した。今度、墨田区にある江戸切子館に行って、もう少し切子の世界を覗いてみよう!

東京に住んでいる私としては、ふるさと納税といえば普段触れられない、遠くの土地の名産品や食べ物などを通して、その土地を知るイメージだったけれど、よく考えてみるとこれだけ長く住んでいるのに東京を全く知らない。

夫なんか地元福岡で過ごした時間よりも東京で過ごしている時間の方がすでに長くなっているし、ある意味、第2のふるさとと言っても過言ではないだろうけど、ぜんぜん東京を知らないのである。

私は先日、ちょっとした用事で、生まれて初めて東急世田谷線というものに乗った。何というか、すごくのどかで「地元感」みたいなのを感じた。一瞬「東京らしくない」感じに親近感を覚えたのだけど、「いや、逆に東京らしい東京なのかもしれない」と思い直した。

私のような地方民は「東京らしさ」を、子供の頃から、テレビや雑誌の中で学んだ。テレビの中の知らない世界の東京は洗練され、お洒落で最先端でキラキラした大都会だった。

まさに私が子供の頃はバブル時代で、トレンディドラマ全盛期で、そんな時にこびりついた東京らしさの亡霊のようなものに、何十年住んでも取り憑かれたままだ。

当たり前だけど、東京にも普通に暮らし、根付き、当たり前の日常が当たり前に流れている、誰かにとってのふるさとでもあるし、当たり前にのどかな風景や日常があるのである。

ちょっと田舎にある私の地元の「らしさ」と言えば、きっと誰が見ても大きくは変わらない。でも東京って、住んでいる場所や年齢やルーツなど、人によって全然違う「らしさ」のイメージを持っているのだと思う。

「歴史のある街」と考える人もいれば「トレンドが集まる街」って考える人もいる。「希薄で冷たい」と感じる人もいれば「寛容で温かい」と感じる人もいる。両極端のようでどちらも成立しているし、その色んな「らしさ」が融合して共存しているからこそ、多様性に富んだ住み心地の良い街になっている気がする(もちろん住み心地が悪い人もいるだろう)。

灯台下暗しじゃないけど、外に目を向けるだけじゃなくて、自分の住む場所にも、もっと目を向けて色々知っていきたい。自分が彫った切子グラスは、思った通りという仕上がりでもないし、ちょっと下手なんだけど、見る角度や光の当たり方で、ぜんぜん違ったように見えるし、なんだか東京みたい、なぁんて思っちゃったりしたのでした。そして自分で彫った切子グラスで日本酒を飲むと、ちょっと贅沢で美味しく感じられて、ますます家飲みが捗るのであります(笑)。

切子体験をしたお店の隣が酒屋さんで、お店の中に角打ちスペースがあって、まさに「下町の酒屋」という雰囲気で、吸い込まれるようにビールと日本酒をサクッと飲んで「東京観光って感じで楽しいねぇ!」と、浅草を満喫して帰路についた。

江戸小紋染の体験ができるふるさと納税の返礼品を見つけているので、切子の次は小紋で、古き江戸の文化に触れたいと思っているのでありました。

徳王 美智子

1978年生まれ。アナログ過ぎる環境で育った幼少期の反動で、家電含めデジタル機器にロマンスと憧れを感じて止まないアラフォー世代。知見は無いが好きで仕方が無い。家電量販店はテーマパーク。ハードに携わる全ての方に尊敬を抱きつつ、本人はソフト寄りの業務をこなす日々。