家電製品ミニレビュー

オイルヒーターを超えた!? バルミューダの「スマートヒーター」を試す

BALMUDA「SmartHeater」

 部屋の暖房は、オイルヒーターを使ってきた。静かで安全性が高く、部屋全体がほんのりと温かくなる点が好きだ。ところが1つ残念なのは、部屋が温まるまで時間がかかる点だ。そこでこの冬は、“オイルヒーターよりも立ち上がりが約5倍早い”と謳うBALMUDA(バルミューダ)の「SmartHeater(以下、スマートヒーター)」を試してみた。

メーカーBALMUDA
製品名SmartHeater
購入場所直販サイト
購入価格74,800円

 バルミューダのスマートヒーターは、適用畳数約9畳の暖房器具だ。本体サイズは578×234×596mm(幅×奥行き×高さ)、本体重量は約17kgで、結構大きい。ラインナップはこの1機種のみだ。

スマートヒーターの前面
アルミ製のラジエーターを採用
側面から見ると、アルファベットの「I」のような形
外箱も大きく、搬入は2人がかりで行なった

 底面には小さなキャスターが付いているが、本体が重くて動かしにくいので、シーズン中は据え置きで使うのがベターだと思う。

本体底面には吸気口を設ける。四隅に小さなキャスターが付属
本体上面
本体背面には電源コードが生えている
本体下部の主電源

 見た目やサイズ感は、オイルヒーターに似ているが、大きく異なる点は、スマートヒーターでは内部にオイルが入っていないこと。バルミューダ独自の「アルミラジエーター方式」という暖房方式を採用していて、熱源にシート状のマイカヒーターを搭載し、アルミ製のラジエーターで挟んでいる。ヒーター自体が発熱するので、オイルを温めるよりも効率が良い。これにより部屋の空気の対流を促して室温を上げ、輻射熱とあわせて温かく感じられる、というわけだ。

「アルミラジエーター方式」は、シート状のマイカヒーターをアルミ製のラジエーターで挟んだ構造となっている

運転音なし、臭いなし! ラジエーターの立ち上がりが早い

部屋の隅に設置した

 さっそくスマートヒーターを設置した。電源コードの長さは約2m。延長コードは使用できないため、自ずと設置場所は限られてくる。我が家では部屋の隅に設置した。なお部屋は、気密性の低い、古い木造住宅の1階だ。

 初期設定では、時刻を登録する。操作は、本体側面の丸いボタンから行なう。運転モードは、10℃~28℃の間から手動で温度を設定する「マニュアルモード」、ユーザーの設定温度や時間帯を記憶する学習機能「オートラーンモード」、起床前1時間から徐々に室温を上げる「ロイヤルスリープモード」の3種類がある。

操作ボタン
回したり、押したりして、運転モードを選択する

 まずは室温18℃の状態で、「マニュアルモード」で目標温度を26℃に設定した。すると、ヒーターは出力1,110Wで運転を開始。30分後、室温が22℃に上がると、出力を560Wに下げて、運転を続けていた。室温が設定温度に近づけば、自動で出力を抑えるので、無駄がない。出力は190Wから1,300Wの7段階から、2分おきにきめ細かく制御される。約1時間もすると、設定温度と実際の室温がほぼ同じになった。

緑のランプは、ラジエーターの表面温度を7段階から示している。こちらは運転開始直後なので、出力1,110Wで、ラジエーター表面の温度が低い状態
30分後、室温が22℃に上がり、ラジエーターの表面温度もMAXになり、出力は560Wに下がった
運転開始直後の室温は18℃台
約30分後、室温は22℃に上がった
2~3分もすると、ラジエーター部分は温かくなっている。※よい子はマネしないでください

 運転音はほぼゼロ。臭いもない。運転開始直後は、ラジエーターの表面は冷たいが、2~3分も経つとほんのりと熱を帯びてきて、10分経つと、「アチチ」と感じる約70℃以上になる。本体の上部に手をかざすと、ヒーターの熱が立ち昇っているのがわかる。オイルヒーターに比べて立ち上がりが早い、というのは本当だ。ただし、部屋を温めるスピードが5倍早い、というわけではなく、部屋全体の室温が26℃に近づくには約1時間かかった。

 感覚としては、「いつの間にか寒くなくなった」という印象だ。「温かくなった」というよりも、「寒さが気にならなくなった」という感覚に近い。温風が吹き出すわけでもなく、エアコンや電気ストーブのように頭の周りが暑くなって、顔が火照るような感じでもない。乾燥は大して気にならない。気づかないほど自然に、室温が上がっている。

有機ELディスプレイは、離れた場所からも、見やすい

 ちなみに、本体底部の液晶画面は有機ELディスプレイだ。ここには運転中の設定温度やヒーターの出力、ラジエーターの表面温度などを表示する。高輝度で、文字がはっきりと読みやすい。LEDの液晶よりも、断然美しい。

操作の手間を軽減する自動モードが充実

 運転モードとしてはほかに、「オートラーンモード」と「ロイヤルスリープモード」を搭載している。

 オートラーンモードは、約1週間、ユーザーがどの時間帯に、どれくらいの室温の時にどれほどの温度に設定するかを学習し、自動運転を行なうモードだ。ユーザーの好みの室温を理解し、無駄なく温めてくれるという。

 日によって生活時間が異なる自分は、いまいち使いこなせなかったが、規則正しい生活を送る方には合うと思う。

オートラーンモードを選択して、約1週間ほど運転を続けると、ユーザーの操作を本体が学習する
寒がりなので、夜は一番温かい28℃に設定
設定すると、「ピッ」という音が鳴り、液晶には「I learned it! 」(学んだよ! )と表示される

 よく使ったのが、「ロイヤルスリープモード」だ。就寝時に低温(約15℃)で運転し、タイマー時刻の1時間前から徐々に出力を上げ、起きた時の室温が20℃になるように運転する。冬の朝は布団から出なくないが、ロイヤルスリープモードでスマートヒーターを運転させておけば、就寝時は省エネしながら、起床時には目覚めやすい室温になっている。温かいラジエーター部に、その日に着る衣類や靴下を数十秒ひっかけて、ホカホカにしてから着替えている。

ロイヤルスリープモードは、まず起床時刻を設定する
ロイヤルスリープモードを開始すると、室温が約15℃になるように運転を開始/停止する
服を着る前に数秒置くと、ホカホカ感を得られる
乾きにくい厚手の靴下もすぐ乾く

 このほか機能面では、スマートヒーターはWi-Fi機能を搭載している。同社の家電マネージメントアプリ「UniAuto」と連携させると、外出先から運転状況の確認や運転停止ができるという。今回は試用できなかったが、12月5日にiPhone用がリリースされた。iPad版およびAndroid版は来年公開される見込みだ。

右端の突起の部分がWi-Fiアンテナ
アプリ「UniAuto」は無料。加湿器「Rain」も操作できる

安全な暖房としての配慮が行き届いている

「サーモセーフ技術」を採用したコンセントプラグ

 最後に、安全面にも触れておこう。スマートヒーターは、震度4以上の揺れや、本体の傾きを検知すると運転を停止する。また、24時間/48時間/72時間の3段階から設定する「オートパワーオフ」機能も搭載している。

 コンセントプラグの先端には、安全のため、「サーモセーフ技術」を採用している。これは、万が一コンセントプラグが発熱すると、プラグ内のセンサーが感知して運転を停止するという配慮だ。

 このほか、ラジエーターの表面温度は、上限を55℃に設定できるので、幼児のいるご家庭にも導入しやすいだろう。

ラジエーターの表面温度の上限を決められる
表面温度は「高/中/低」から選べる。「低」は55℃で、子供のいるご家庭も安心だ

 スマートヒーターには、即暖性はなく、肌にじりじりとくるような温かさは得られないが、運転音や臭いが気にならず、部屋全体がポカポカと温まるという点で、暖房機能には満足している。さらに、ラジエーターが素早く温まり、自動で出力を調節して無駄に温めすぎず、エコ機能が徹底している点も気に入った。

 正直、極度の寒がりなので、これまでオイルヒーターを使う際は常にフルパワー運転だった。電気代は見て見ぬふりをしていたが、スマートヒーターはそのへんを全部自動で調節して、無駄を省く。「オートラーンモード」を搭載していることからもわかるように、なるべくユーザーの操作の手間がかからないように配慮されている。家電の進化というと、より多くの機能が詰め込まれる方向に行きがちだが、スマートヒーターはシンプル操作のおまかせ運転で、ユーザーが過ごしやすい空間を作ってくれる。その気概に好感が持てた。

 願わくば、もうちょっと狭い部屋向きの、コンパクトタイプがあれば、ほかの部屋にも設置したい。

 とにかく早く温まりたいというよりも、エコに、安全に、省エネを重視しながら、寒さをしのぎたい方にはオススメだ。

小林 樹