家電製品ミニレビュー
HARIO「V60 珈琲王 コーヒーメーカー」
~蒸らし機能搭載で、ボタン1つでハンドドリップの味!
by 森 あつこ(2013/4/8 00:00)
コーヒーが好きだ。家では、朝から夜までハンドドリップ。朝の一杯も、家族やゲストと過ごすときの一杯も、夜のリラックスタイムの一杯も、すべてハンドドリップ。コーヒーメーカーもあるが、現在は収納棚に入ったきりで、しばらくお目にかかっていない。
こんなにもハンドドリップにこだわるのには理由が2つある。1つ目は、コーヒー粉の様子を見ながら、ゆっくり時間をかけて淹れるハンドドリップコーヒーの味わいが格別! と思うこと。2つ目は、コーヒーメーカーで淹れたコーヒーが苦く感じることだ。
我が家の彼(コーヒーメーカーのこと! )は、外国生まれ。抽出時間は速いものの、苦みが強く、どんなに工夫しても苦みが取れない。スタイリッシュな外見にひと目惚れして買ったはよいが、収納棚に鎮座してしまっている。
以来、ハンドドリップ派を公言・実行している。コーヒー豆にも興味があるし、挽き方や新しいコーヒーアイテムは常に意識している。ハンドドリップもさまざまなスタイルがあるが、今はHARIO(ハリオ)の「V60 ドリッパー」シリーズを愛用中。円錐形のドリッパーのデザインや抽出されるコーヒーの味に、すっかりはまっているのである。
ところが、そんなハンドドリップで知られるハリオが、コーヒーメーカーを作ったという。それも同社初! 気にならないはずがない、その名も「珈琲王」。さっそく購入した。
メーカー | HARIO |
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製品名 | V60 珈琲王 コーヒーメーカー EVCM-5WR |
希望小売価格 | 14,490円 |
購入場所 | Amazon.co.jp |
購入価格 | 11,200円 |
この「V60 珈琲王」は、長い年月と徹底した研究を重ねて完成したというコーヒーマシン。コーヒーマイスター監修のもと、「おいしく淹れる条件をマシンにプログラムし、限りなくハンドドリップに近い味わいを追求した」という。
つまり、いつでも、誰でも、ボタン操作だけで簡単に安定的な抽出が可能になったということだ。ドリップ作業は、とても繊細なもの。コーヒー粉の量や蒸らしの時間を同じにしても、抽出の速度や温度が少し違うだけで抽出に大きな違いが出てくるくらいだ。
それがいつでも、ボタン1つでハンドドリップの味わいが簡単に淹れられるなんて……私は「安定抽出」という言葉に弱い。なぜなら、私のハンドドリップは安定していないから! (でも、それがハンドドリップの醍醐味だから良いのだけど)
「珈琲王」とのご対面
本体の第一印象は、「かなり大きいッ! 」。本体サイズは230×240×327mm(幅×奥行き×高さ)。置き場所に少し困るほど、高さもあるし、幅もある。買い替えの場合には、以前にコーヒーメーカーを置いていた場所にそのまま……というわけにいかないかもしれない。
我が家の場合は、ハンドドリップ用の道具を脇に片付け、コーヒーカップや小物の収納棚を移動させたくらいだ。
付属品は全部で5つ。ドリッパー、サーバー、計量スプーン、ドリッパー受け、ペーパーフィルター。ドリッパーは同社のハンドドリップ向けと同じ、「V60 ドリッパー」だ。
このドリッパーには、「円すい形」「大きな1つ穴」「スパイラルリブ」の3つの特長がある。「円すい形」はコーヒー粉の層が厚くなり、お湯が中心に向かって流れることでコーヒー粉に長く触れ、コーヒー粉の成分をしっかり抽出する仕組みになっている。
ドリッパーの底の「大きな1つ穴」は、注がれたお湯がドリッパーから制限を受けることなく流れ、ネルドリップ(布のフィルターで抽出する方法)に近い抽出ができるという。
「スパイラルリブ」は、蒸らしのときのコーヒー粉の膨張を妨げない高いリブ(凸部)が、ペーパーとドリッパーの密着を防ぎ、空気が抜けることでコーヒー粉がしっかり膨らむ仕組みだ。
さっそく、付属品のドリッパーをサーバーにセットしてみると、円すい形ドリッパーとサーバーの見慣れたスタイル。ドリッパーとサーバーは、ハンドドリップ用として単体でも使える。
ドリッパーとサーバーは本体中央に設置する。この右側が「蒸らしボタン」。左側が注水の目盛りとなる。
「蒸らしボタン」とは何か。コーヒー好きには常識かもしれないが、おいしいコーヒーを淹れるための大事なポイントは「蒸らし」と「温度」だ。この蒸らし作業こそ、ハンドドリップだからできる微妙なものだが、それをこのマシンに「蒸らし機能」として搭載したなんて。ハンドドリップで淹れるときの蒸らしを、マシンで再現なんてできるのだろうか?
いざ、「珈琲王」を使ってみる
では、さっそくドリップコーヒーを淹れてみよう。淹れ方は一般的で、特別な難しい手順はない。
まず、サーバーで本体の後部に設置された水タンクに杯数分の水を入れて、ドリッパーとサーバーにコーヒー粉を入れてセットする。
あとは電源を入れ、杯数分の蒸らしボタンを押すだけ。蒸らしも、温度管理も、すべて任せて、抽出終了のお知らせ音を待てば良い。ほんとうに「ボタン1つ」なのだ。
最大の特徴は「蒸らし機能」と「93℃の高温抽出」
本製品のこだわりのポイントの1つ目は、「蒸らし機能」。例えばハンドドリップ時なら、私はいつもコーヒー粉を入れてから少しお湯を回しかけて、30秒間待つ。そうすると、粉がふっくらと膨らんでくる。これが蒸らし、だ。
その蒸らしの工程について、この珈琲王では、2杯~5杯までの杯数に応じた「蒸らし」機能がある。2杯~5杯数分ごとのボタンがあるということは、蒸らしの湯量や時間は同一ではないのかな? と思い、2杯と5杯での蒸らし時間をタイマーで計ってみた。2杯分では、蒸らし時間に32秒。5杯分では、43秒かかった。また、お湯の量も違った。
要するに、杯数によって、最適な蒸らし時間と湯量も自動で行なってくれるのだ。「そうそう! ここがハンドドリップのときに気を使うところよね~」と、思わず「珈琲王」に話しかけてしまったほど、感心した。
だから、このコーヒーメーカーでは、抽出する杯数を最初にボタンで押し、杯数を指定することが必要なのだ。これが、他のコーヒーメーカーと大きく異なる点。ボタンを押しさえすれば、その杯数に合わせた蒸らしを自動で行なってくれる。
2つ目は、93℃の「高温抽出」。ハリオの開発者によると、ドリップに最適な抽出温度は、93℃前後の高温だという。この93℃が、コーヒーの旨味成分の抽出が最も多いらしい。
このマシンでは、93℃を維持しながら最後まで抽出する。抽出時、21個の穴から熱湯がシャワー状に出て、コーヒー粉全体にやわらかくお湯を注ぐ。このシャワー状がムラのない味わいを生むのだ。シャワー状に注ぐお湯をぜひ、動画でご覧ください。ほんとうにシャワーでしょう?
苦くない、薄くもない、素直に美味しい♪
抽出後のドリッパーには、ハンドドリップをした後のように、周囲にきれいなコーヒー粉の壁ができていた。この壁は、おいしくドリップできた証。ていねいなドリップをしているんだな~と改めて感じた。
気になるコーヒーの味は、おいしかった。素直に、おいしかった。何度淹れてみてもおいしかった。苦くない、薄くもない、何度も飲みたくなる、上品で透明感のあるクセのないコーヒーだった。お店の味、プロがドリップしてくれた味と言ってもいいかもしれない。上品な味だ。
使用感は、手順は面倒な作業はないものの、スイッチを押してから最初にお湯が出るまでに少し時間がかかる印象を持った。
あれれ? ペーパーのニオイが気にならない!
ちょっと神経質な話になるが……ペーパーフィルターの紙特有のニオイって気になりません? ハンドドリップ時には、コーヒー粉を入れる前に数回お湯を通すことで解決しているが、コーヒーメーカーの場合、どうしても器具本体の中で蒸れが生じてしまうのか、抽出されたコーヒーに紙のにおいが移っているような時がしばしば。時には、ドリップ中にも紙のニオイが気になって仕方ないときもある。
でも、この「珈琲王」の場合は、最初からまったくしなかった。いつものコーヒー粉で、さまざまなペーパーを使ってみたが、何度ドリップしても不思議と気にならない。ドリッパーが本体に覆われることなく、空気に触れているからか?? ハンドドリップと同じスタイルだから?? 理由は分からないが、ニオイが気にならないのが嬉しい。
やはり、「ハンドドリップで淹れる、おいしいコーヒー抽出のためのノウハウがこの1台に詰まっている」というのは本当だと思った。
「ハンドドリップ(私) VS 珈琲王」は、珈琲王の勝ち越し
「珈琲王」で淹れるコーヒーのおいしさは、よく分かった。忙しい朝や急な来客時には、やっぱり安定した抽出ができるコーヒーメーカーが便利というのも納得。機械であっても、使いこなしていくうちに、なんというか相手の癖のようなものが分かってくる。
そこで、私は勝負に出た! ある朝、出勤前の夫に「今朝のコーヒーの味はどうよ? 」と聞いてみたのだ。「おいしい。でも、ちょっと薄い」「昨日の方がおいしかったかな」などと、素直に答える。そこで、表を作成。珈琲王で淹れたときと私がハンドドリップで淹れたときをグラフにし、「このコーヒーおいしいね」というときに印を付けるようにしたのだ。朝や昼間、夜などの時間帯やその時の気分、食事や食べ物などでも味覚は変化するし、あくまでも主観的なものだから、厳密ではないけれど……。
結果は7勝9敗。そう、私が負けているのであった(笑)。
おそらく、私の淹れるハンドドリップにはムラがあるのだと思う。「それこそ、ハンドドリップの醍醐味! 」と自分に言い聞かせ、慰めているが、安定感ではマシンに勝てそうにない。ハンドドリップに近い味わいのコーヒーを安定して淹れられるのだから、敵は手強い。安定抽出の点では負けを認めよう。
「珈琲王」には付属品としてドリッパーとサーバーが付いてくるので、「珈琲王VSハンドドリップ」という味くらべというか、腕くらべも楽しめそうだ。ゲストを呼んだパーティーでも盛り上がりそうな勝負ではないか!
そのくらい、珈琲王は手強くて頼りになる相手だということ。私の勝負はまだまだ続く――。