家電製品ロングレビュー

壺? Wi-Fi? タンクレス? 全てが新しいバルミューダの加湿器「Rain」

バルミューダ「Rain」

 夫婦共々風邪をひきやすいタチなので、温湿度管理は鉄則。今年も10月くらいから加湿器を稼働させている。仕事柄毎年新しい製品を使わせていただくのだが、今年断然気になったのは、なんといってもバルミューダの「Rain」。加湿器らしからぬ壺型のシルエットにWi-Fi搭載、タンクレス機構と、新しさ満載の一台だ。さっそく自宅で使ってみた。

メーカー名バルミューダ
製品名Rain
希望小売価格46,800円
購入場所バルミューダオンラインストア

様々な“挑戦”をしているこれまでにない加湿器

 Rainは、ひとことでいうと“ユニークな製品”。オンラインストアでの販売価格46,800円という加湿器としては破格の高級品なわけだが、様々な“挑戦”をしている製品だと感じた。

 使い方も、デザインも、これまでの加湿器とは大きく異なる。中でも一番違うのが、「給水方法」だ。一般的な加湿器では、本体から大きな給水タンクを取り出して、それを洗面所などに持って行って給水するが、Rainでは、やかんなどに水を入れて、本体上部から水を直接注ぎ入れて給水する。

 壺をイメージしたという本体は、下の給水ボウル部分と、上のファン/操作部分に分かれている。給水ボウルの中加湿フィルターが、その上にはゴミやホコリなどを取り除く酵素プレフィルターが設置されている。

 「大きなタンクを持ち運ぶよりも、やかんなど水を運ぶための道具を使った方が良い」という、バルミューダの哲学を反映したこれまでにない構造だ。

Rainの各部品
給水ボウルと加湿フィルター
加湿フィルターの上にホコリなどを取り除く酵素プレフィルターを設置する
組み立てはやや複雑な印象。ただし、取り扱い説明書がカラーで、イラスト入りなのでわかりやすい
操作部とファンがセットになっている上部(左)と給水ボウルとフィルターがセットされている下部(右)
本体を組み合わせたところ

Macっぽい操作感

 操作方法もユニーク。本体上部のコントールリングを回転させながら行なう。一般的な家電製品のようにボタンなどが設置されているわけではなく、例えていうなら初期のiPodのような操作感だ。

 圧巻なのが、本体上部に設置されている有機ELディスプレイの美しさ。運転状態を表示するほか、給水中は水がどこまで入っているかリアルタイムで表示する。この操作感や美しさは加湿器はもちろん、従来の家電製品にはなかったものだ。

操作は本体上部のコントロールリングを回転させて行なう
コントロールリングには「+」と「-」の表示が
ディスプレイを確認しながら操作する
有機ELディスプレイは見やすく美しい

電源ボタンは本体側面の下部に配置されている。コントールリングでも電源のON/OFF操作は可能

 加湿方式は、水分の自然な蒸発をファンの力で増幅する気化式を採用。乾燥状態でもなく、多湿状態でもない約50%の湿度を目指すという。

※訂正※ 初出時、電源ON/OFF操作が電源ボタンを使わないとできないとの記述がありましたが、実際には、本体上部のコントールリング操作により、ON/OFF操作が可能です。ここにお詫びと訂正をいたします。

ゲストにえばれる秀逸デザイン

自宅のリビングに設置したところ。一見なんだかわからないデザインが面白い

 さっそく、自宅のリビングに設置した。Rainは、壁から30cm、上方に120cmのスペースを空けて設置する。360×374mm(直径×高さ)というサイズはともかく、独特のデザインもあって、正直置く場所には悩んだ。まわりに物がごちゃごちゃとある場所だと、Rainのデザインが映えないのだ。

 悩んだ末に置いたのは、大きな植木鉢の横。大きな鉢が2つ並んでいるようで、見た目にもしっくりくる。加湿器らしからぬデザインのせいで、自宅に来た人には必ず「何コレ?」と聞かれる。「実はね……」と話のきっかけになるのも、Rainならではだ。

 壺をイメージしたというデザインで、気になるのが安定性だ。結果からいうと、全く問題なし。犬(トイプードル)に倒されることもなし、ルンバを使っても、本体が倒れることは一度もなかった。

給水は植木と一緒にじょうろで

 本体サイズもおおきければ、給水タンクの容量も大きいRain。容量たっぷり4Lなのはいいが、何を使って給水すればいいのかは少し悩んだところだ。最初は電気ケトルを使っていたが、自宅の電気ケトルは容量500mlで、4Lの水を入れようと思ったら、8往復もしなければならない。

 そこで、思いついたのが、観葉植物に水をあげる時に使っているじょうろだ。植物に水をあげるついでにRainにも水をあげるという発想だ。ただし、このじょうろも容量3Lで、実はまだ足りない。逆に毎日水を足すという考えかたもありかもしれない。

電気ケトルで水をあげると満水まで何度も往復しなければならない
植木に水をあげるためのじょうろを使って一気に給水している

 今回Rainを使っていて、「給水方式は一体どっちがいいのか」というのは少し考えさせられた。バルミューダの「水をいれるための容器(やかんやじょうろなど)で、水を運んだ方が良い」というのは理解できるが、4Lの備え付けタンクに水を入れるために往復する手間を考えると、やっぱり持ち運びできるタンクがあった方がいいような気もする。

加湿能力はやや物足りない気も……

 では肝心の加湿能力はどうなのか。Rainでは「人が快適だと感じられる約50%の湿度を自然に作り出す」として、自然の蒸発+ファンの送風で加湿をする気化式を採用するが、気化式は超音波式やヒータ式と比べると、どうしても加湿能力が劣る。

 Rainのすぐそばに湿度計を置いて使ってみても、湿度が40%を超えることは一度もなかった。エアコンや床暖房と併用しながら使っていると、4時間程度連続運転しても、湿度は30%前半。休みの日に朝から晩まで付けっぱなしにして、やっと30%後半になるというイメージだ。

 一般的に暖房時に快適な湿度は40~60%と言われているので、それから考えると物足りない。声を使う仕事をしている人や肌の乾燥が気になるといった用途で導入するならば、加湿方式の違う製品を選んだ方が良い。

iPhone操作は果たして必要か

 Rainのもう1つの大きな特徴は、無線LANを搭載しているということ。iPhoneにバルミューダが提供する家電マネージメントアプリ「UniAuto」をインストールして、Rain本体とWi-Fi接続することで、外出先からも本体操作が可能となる。

 さっそく接続してみたが、家電とネットをつなぐという操作に慣れているわけではないので、なかなか手こずった。Wi-FiのWPSを使えばすぐに接続はできるのだが、細かい設定や、Rain本体のファームウェアアップデート、再起動も必要で、1時間弱はかかった。

Wi-FiルーターのWPSボタンを使うと比較的簡単に接続できる
接続が完了するとディスプレイに白い輪が表示される
接続後は本体のファームウェアのアップデートが必要
アップデート後は再起動する
専用アプリ「UniAuto」のログイン画面
Wi-Fi接続の方法も細かく教えてくれる
私の場合、接続はスムーズにいったが、セキュリティの設定を手動で行なわなければならなかった。これを理解するまでに、少し苦労した
接続が完了するUniAutoのグループリストにRainが表示される

 iPhoneからは、24時間タイマー設定や、本体操作が可能。専用アプリは、シンプルで使いやすいが、「加湿器をWi-Fiに接続する必要があるのかな」という疑問が残ったのも確か。というのも、加湿器は外出先から「自宅に帰る前に加湿器を付けておこう」と操作する製品ではないと思うからだ。

iPhoneからRainを操作できる
風量を変えたところ
24時間のタイマー設定も可能

 今後のさらなる活用を考えてのまずは第一歩の導入という見方もあるだろうが、本体価格にWi-Fi搭載分が上乗せされていると思うと、もう少し活用方法があった方がいいと感じた。

お手入れはやっぱりマストですよ!

 加湿器を使う上で避けて通れないのが、日常的な手入れだ。Rainでは、ディスプレイにフィルタークリーニングサインが表示され、定期的に手入れができるようになっている。基本的な手入れは酵素プレフィルターのホコリを掃除機で吸い取る、給水ボウルとフィルターの水洗いなど、一般的な加湿器と変わらない。

 また1カ月に1回程度、クエン酸や重曹を用いたフィルターのつけ置き洗いが推奨されている。

ディスプレイにフィルタ-クリーニングサインが表示される
しばらく使っていると酵素プレフィルターにホコリが付着する
掃除機でホコリを吸い取る
加湿フィルターや給水ボウルは全て水洗いできる
加湿フィルターは1カ月に1回程度のつけ置き洗いが推奨されている。バケツに適量のクエン酸、あるいは重曹を溶かして、フィルターを30分程度つけ置きする

家電の新しい可能性を感じさせてくれる

 様々な新しい機構を搭載したチャレンジングな製品。これまでの加湿器とは全く違うので、戸惑うところが多かったのも確かだ。バルミューダが出した最初の加湿器であるということを考えると、来年以降に色々改良されるだろうとも思う。

 ただし、新しいカメラや新しいiPhoneを手に入れた時のようなワクワク感を感じられる家電はほかにはない。これまでの白物家電とはちょっと違う、いわゆるガジェット好きな人向きの製品だ。国内メーカーの家電製品が元気がない中、どんどん新しいことに挑戦してくれるこういった家電メーカーがまだ日本にあるということは、とても頼もしく感じる。

阿部 夏子