スマートスピーカー使いこなし術

ディスプレイ搭載でこれだけ変わる、スマートスピーカー「Amazon Echo Spot」の魅力

 7月26日、Amazonのスマートスピーカー新モデルとして、2.5インチの円形ディスプレイを搭載した「Amazon Echo Spot」の出荷が開始された。

Amazon Echo Spot

 市場にはAndroidをベースとしたディスプレイ搭載スピーカーも存在するが、AlexaやGoogle HomeといったAIアシスタントをスマートフォンのアプリレベルではなく標準搭載したスマートスピーカーとしては、ディスプレイを搭載したモデルは国内初となる。

 これまで情報のインプット、アウトプットともに音声が主だったスマートスピーカーにとって、ディスプレイの搭載はどんな効果をもたらすのか。スマートスピーカーの主な機能を、これまでのEchoシリーズとEcho Spotと比較することで、スマートスピーカーにおけるディスプレイの有用性を考えてみたい。

メーカー名Amazon.co.jp
製品名Amazon Echo Spot
実売価格14,980円

流れている楽曲情報を一目で確認。一部楽曲は歌詞表示も

 ディスプレイの効果が最もわかりやすいのは、スマートスピーカーの主要機能とも言える音楽再生機能。

 Amazon Musicの楽曲を再生すると、Echo Spotのディスプレイには楽曲のジャケット画像の上にアーティスト名と曲名が表示されるほか、一部楽曲は歌詞が音楽に合わせて自動でスクロール表示される。歌詞についてはまだ対応している楽曲が少ないようだが、洋楽だけでなく邦楽も対応している。

音楽再生時はジャケット画像に加えて曲名とアーティスト名を表示
一部楽曲は歌詞も表示される

 再生中にディスプレイをタッチすると、再生時間の表示や再生/一時停止、早送り/早戻しといった操作、楽曲の評価が可能になる。音声でも楽曲の操作は可能だが、「次の曲」「一時停止」と発声するよりも手元で操作した方が早いときもあるだろう。

 後述するがEcho Spotは基本的に手が届くところの設置が適しているため、音声でもタッチでも好きな操作方法を選べるのはありがたい。

タッチ操作にも対応

 音質については本体が小型なこともあってさほど高くはなく、部屋の隅に設置して部屋全体に音楽を流す、というような使い方では物足りなさを感じるが、PCで作業している時のテーブルサイドに置くくらいの距離であれば十分。

 そもそもEcho Spotの画面が小さく、離れた位置に設置してしまうと曲名やアーティスト名、歌詞なども認識が難しくなってしまうため、基本的には手の届く範囲での利用を推奨したい。

天気予報は詳細に加えて一週間分をディスプレイで確認

 音声による情報検索もディスプレイがあることで利便性が高まる。Echoシリーズは天気を知りたいときに「今日の天気は?」と聞くと音声で降水情報、気温、天気などの情報を教えてくれるが、欲しい天気の情報を聞くまでには音声をずっと聞かなければならない。また、ながら作業で情報を聞いているとき、本当に聞きたい部分を逃してしまうと、再度話しかけて同じ音声情報を聞く必要がある。

 一方、Echo Spotのディスプレイであれば、「今日の天気は?」と聞いた直後にアイコンによる天気の情報や現在の温度が表示され、続いて最高気温と最低気温、1週間の天気、体感温度といった情報を次々に表示したのち、一定時間でホーム画面や再生中のミュージック画面に戻る。

 聞き逃した場合でも、天気が表示されている間であればディプレイをタッチ操作でスライドして表示を切り替えられるため、全ての情報を音声で聞き取らなければいけない従来のEchoシリーズに比べて格段に情報を理解しやすい。

「天気を教えて」で音声読み上げと同時に現在の天気と気温を画面に表示
続けて最高気温と最低気温を表示
翌日以降の天気も確認できる

音声ではわかりにくいニュースもテキストなら一目瞭然

 Amazon Echoはニュースサイトの記事タイトルや本文を読み上げる「フラッシュニュース」という機能を用意しているが、この機能もディスプレイのおかげで利便性が増す。

 音声読み上げの場合、固有名詞などを正しく読み上げることができないこともあるが、ディスプレイにテキストが表示されていれば一目瞭然。また、NHKニュースなど動画で提供されているニュースは、ディスプレイでその動画を視聴することもできる。

家電Watchのニュースを表示
NHKニュースなど動画を再生できるニュースも

 画面の大きさに制限があるため、ニュースの記事タイトルは全文が表示されないといった課題もあるが、普段は音声で流し聞きをしながら、気になるニュースはテキストで確認する、という使い方が増えたのは便利だ。なお、ニュースは天気と異なり、読み上げが終わった過去のニュースを戻ることはできず、読み上げ中のニュースのみテキストで確認できる。

残り時間や複数設定が一目でわかるタイマー。リマインダーも実用性が向上

 タイマーもディスプレイがあると便利。これまでのEchoではタイマーを設定した場合、残り時間を確認するには都度音声で「残り何分?」と質問し、回答も音声で聞くしかなかったが、Echo Spotは設定したタイマーがディスプレイに表示され、残り時間が一目でわかる。

 複数タイマーを同時に設定した場合も、2つまで同時に表示でき、3つ以上の場合もスライドで切り替えて表示できるため、複数タイマーのコントロールもわかりやすい。Echo Spotなら何番目のタイマーが鳴ったのかもすぐに把握できる。料理などで複数タイマーを活用している人にはとても便利な機能だろう。

複数のタイマーを同時に表示できる

 リマインダー機能もディスプレイ搭載で利便性が大幅に向上した。というよりもやっと使い物になった、というのが正直なところだ。

 これまでのEchoシリーズのリマインダーは、設定した時間に音声でリマインダーの内容が再生されるだけのため、そのタイミングに音声を聞き逃すとリマインダーに気がつくことができなかった。AndroidにAlexaアプリをインストールしている場合はアプリに通知が届くのだが、これはスマートフォンの機能であってEchoの機能ではないし、iOSではAlexaアプリをインストールしていても同様の機能が利用できない。

 一方、Echo Spotではリマインダーの時間になるとディスプレイにリマインダーの内容が表示され、何か操作をしない限りずっとディスプレイに残り続ける。リマインダーの時間を聞き逃したとしても、ディスプレイを見れば内容がわかるため、やっとリマインダーとして使えると感じた。

リマインダー。操作をしなければ常に画面に表示される

 ただし、Echo Spotのリマインダーは何か操作をすると消えてしまい、後から見返すことができない。リマインダーが表示されていることに気がつかず「音楽をかけて」で音楽を再生してしまうと後から見返すことができないのだ。

 リマインダーに限らずEcho Spotは「一度表示したものは再表示しない」がコンセプトのようで、前述の天気も一度表示が終わってしまうと再度「今日の天気は?」と聞き返さなければいけない。このあたりはユーザーが明示的に消去するまでは残しておく設定も欲しいところだ。

 Echoの通知機能はサードパーティー向けにも提供されており、「JR東日本 列車運行情報案内」「Yahoo! 天気・災害」「全国タクシー」といったスキルが通知機能に対応している。残念ながらレビュー時にこれらの通知機能を試すことはできなかったが、リマインダー同様ディスプレイでの通知表示はより利便性が高まるだろう。

購入前に画面で詳細を確認できるショッピング機能

 他のスマートスピーカーと比べてEchoシリーズならではの特徴と言えるショッピング機能についても、ディスプレイが備わることで使いやすくなった。

 ディスプレイのないEchoシリーズでは、欲しい商品を音声だけで判断しなければならないが、同じ商品でも数量や容量、価格が異なる場合があるため、音声だけですべてを判断するのが非常に難しい。そのため基本的には欲しいと思った商品をカートに入れて後で確認するか、一度注文した商品を再注文する時に使用するのが主だった。

 しかし、Echo Spotなら音声で読み上げた商品の画像に加えて、価格や星の数、飲み物のケース販売であれば1本単位の価格も画面に表示される。横方向にスライドして他の商品を見たり、縦方向のスライドで他の画像や商品の販売・発送元を確認することも可能だ。商品の説明文章やレビューの詳細などは確認できないため、PCやスマートフォンと同等とまではいかないものの、音声だけの注文に比べれば安心して注文が可能だ。

一番最初に読み上げられるのはAmazonのおすすめ
商品の価格やレビュー情報などが確認できる
画面をスクロールして販売者情報も表示

 音声だけでの注文は、商品の詳細を読み上げられた商品名だけで判断せざるを得ず、同じような製品が多数販売されているAmazonでは音声だけで注文を完結することはほぼ不可能に近かった。

 しかし、ディスプレイを備えたEcho Spotなら、製品名も一目で把握でき、画像やレビュー数、販売元といった情報で商品の概要をつかむことができる。リマインダー同様、ショッピングもディスプレイを備えたEcho Spotによって実用的になった。

ホーム画面には天気や通知を常に表示。今後はビデオ通話も

 音声操作や各種機能を利用しない状態のEcho Spotは、メッセージや天気、通知、予定、リマインダー、Amazonのお勧め情報などを表示。これら機能の表示はオンオフを個別に設定できるほか、表示情報をループできる連続表示も設定可能。

 連続表示の場合はオンにした機能が常に繰り返し表示されるが、オフの場合はすべての機能を一度表示した後、時計表示で固定される。また、スライド操作で画面を切り替えれば確認が可能だ。

ホーム画面。背景や時計のデザインはカスタマイズ可能
スライドして天気を表示
操作のTIPSも確認できる
予定表の確認

 また、海外ではEcho Spotのディスプレイ上部に搭載されたカメラを利用して、ビデオチャットや遠隔からの見守り機能なども提供されているが、これら機能はまだ日本では利用できない。Fire TVとの連携など、まだまだ国内では提供されていない機能も多いため、よりAmazon Echoを快適に利用するためにもこれら機能も早急に国内で展開して欲しい。

ディスプレイ搭載でスマートスピーカーの利便性が格段に向上

 スマートスピーカーという製品はその名称がゆえに、音が流れるスピーカー部分が重要に思えるが、製品のコンセプトや利用シーンを考えれば、スマートスピーカーにとって本当に重要なのは音声を入力するためのマイクであり、スピーカーはそのフィードバックを受け取るための1つの手段でしかない。Echo Spotを利用してみて、ディスプレイは決して補助的な機能ではなく、スピーカーと並ぶフィードバックの重要な手段だと感じた。

 音声とディスプレイはそれぞれメリットデメリットがある。音声なら服を着替える、料理をするといった手が離せない状況でも利用できる反面、音声を聞き取らなければいけないという手間があり、音声が流れているタイミングできちんと聞いている必要がある。一方ディスプレイはタッチ操作の手間もかかるし、画面を見るという手間はかかるものの、画面を一目見ただけで情報を把握でき、音声以上の情報を入手できる。

 リマインダーのように、その場にいない時に受け取った情報もディスプレイなら簡単に確認できるし、タッチパネルなら操作も可能。スマートスピーカーにとってディスプレイは決してオプション的な存在ではなく、スマートスピーカーの魅力を引き出すためにはむしろ必要不可欠な要素と言っていいほど便利だ。

 欲を言えばEcho Spotは画面が小さく、ディスプレイも円形のため表示部分が少ないのが惜しい。時計は常に表示しておきたいし、音楽を聴いている時でも天気を見たいと言ったときに、Echo Spotの画面サイズは少々物足りない。この点については7インチのディスプレイを備えた「Echo Show」というモデルが海外で発売されており、今後日本でも発売される可能性が高い。

 他社モデルでもGoogleがディスプレイ搭載したスマートスピーカーを「スマートディスプレイ」として今夏より展開予定であり、7月27日からはLenovoの「Lenovo Smart Display」が海外で販売を開始している。

 国内でもLINEが7インチディスプレイを搭載した「Clova Desk」を2018年冬に発売予定。今後もますますラインアップが拡充されるディスプレイ搭載モデルの普及や、ディスプレイを利用したさまざまな機能の登場に期待したい。

甲斐祐樹

Impress Watch記者から現在はフリーライターに。Watch時代にネットワーク関連を担当していたこともあり、動画配信サービスやスマートスピーカーなどが興味分野。ライター以外にも家電ベンチャー「Shiftall」スタッフとして活動中。個人ブログは「カイ士伝

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