そこが知りたい家電の新技術
総額15万円! 美容高感度層をターゲットとした「Panasonic beauty PREMIUM」
by 阿部 夏子(2014/12/17 07:00)
美容家電には定評のあるパナソニックがまた新たな取り組みを始めた。家電量販店などの従来の流通経路ではなく、新宿伊勢丹やパナソニックショールームでしか製品を扱わない「PREMIUM」ラインをスタートしたのだ。
現在、東京・港区の東京ミッドタウンでは、12月25日までの期間限定特設ブースを出展している。黒を基調にしたブースは、これまでの美容家電のイメージからは大きくかけ離れている。
ラインナップは「スチーマー EH-XS10」、「ブースターマスク EH-XM10」、「ヘアードライヤー EH-XD10」の3機種で、総額は15万円。一般的な美容家電に比べると2倍近くする価格設定だ。それでもパナソニックは、自信はあると語る。パナソニックはなぜ、このようなラインをスタートしたのだろうか、話を聞いた。
ターゲットはプロの施術を受けている美容感度が高い人
「美容に関して深い悩みを持っている人に向けた上のラインを作ろうというアイディアは4~5年前からありました。美容への感度が高く、高級化粧品を使っていたり、エステなどプロの施術に通っている方にも満足していただけるような製品を目指しました。既存のお客様のニーズも拾いながら、これまでにないラインナップを展開しています」(パナソニック スモールアプライアンスグループ ビューティー・ヘルスケアチーム チームリーダー 三枝 大氏)。
パナソニックは77年前に国内一号機となるドライヤーを発売したメーカーであり、美容家電には定評がある。そのパナソニックの技術の推移を集結したのが今回のプレミアムラインだという。
実際、プレミアムラインの機能は充実している。例えばスチーマーは、従来2つの孔からスチームを出していたが、プレミアムラインでは3つ孔を採用。スチーマーを使っている間に顔のマッサージができる「リズムかっさ」が付属する。
「最上級のケアができるスチーマーを目指しました。スチーム孔をトリプルにすることで、スチーム量はかなり多いですし、効果にもしっかり差が出ました」
ドライヤーは、髪の長さとボリュームのアップ/ダウンを選べるようになっている。
「ドライヤーに関しては、ユーザーからの要望をかなり反映しております。パナソニックでは独自のナノイーイオンを搭載したドライヤーが好評をいただいておりますが、ナノイードライヤーはしっとりとまとまりやすい髪に仕上げます。一部のユーザーからはもっとボリュームアップしたいという声もありました。そこでプレミアムラインのドライヤーでは、ナノイーの量を調節することで、髪のボリュームアップ、ボリュームダウンをコントロールできる機能を備えました」
また、今回のプレミアムラインに合わせた新製品も追加。温かいスチームを顔全体に広げる「ブースターマスク」だ。顔全体をマスクで覆うことで、潤いを外に逃がさず、柔らかく、キメの整った肌へと導くという。
「全く新しい製品だったので、開発にも苦労しました。日本人5,000人の顔データをとって、標準的に合うようなサイズを採用しています。顔の上に載せて使うものですから、コードレスであることは大前提でした。ただ、スチームを発生しながらコードレスにするというのは難しく、蓄熱技術に苦労しました。製品化にはパナソニックの技術力が不可欠でした」
本体カラーをピンクではなくブラックにした理由
本体のデザインは、いずれもブラックを基調とする。パナソニックの製品も含めて、一般的に美容家電の多くはピンクを使っている。
「実際、ユーザー調査をしてみても、ピンクというのはやはり強いんですよね。しかし、今までの製品とは違う、ワンランク上の製品だということをアピールするためには従来と同じピンクではなく、違う色を使った方が良いという決断でした。ブラックは、担当デザイナーが提案したエッジィなデザインともマッチする、従来の美容家電とは違うというのをアピールするためにも最適でした。例えば、スチーマーなどは、収納時はまるでプリンターか何かのように見えます。そのギャップも狙ったところです」
ブラックを採用したことは、「これまでとは違うターゲットを狙う」という本来の目的を達成する意味でも有効だったという。
「従来の美容家電とは違う色にしたことで、これ何? という所からまず立ち止まってもらえる。男性のお客様にも興味を持っていただけるようになりました」
家電量販店での販売はしない
プレミアムラインでは、製品だけでなく、マーケティング手法も従来とは全く違う方法を取っている。まず、家電量販店での販売はしない、パナソニックのショールームや伊勢丹にプレミアムライン専用の常設コーナーを設け、購入の際はCLUB PANASONICというパナソニックの会員になる必要がある。いずれも従来の家電製品とは全く違うアプローチだ。
「家電メーカーが作る美容家電からもう一歩進んだ取り組みをしたいという想いからです。お客様に実際に使っていただける、試せるような場所を提供することが大切だと思いました。また、高級化粧品を買う時と同じように、お客様の肌のお悩みなどを直接伺うカウンセリングも重要だと思っています。CLUB PANASONICに入会していただくことで、製品を買って終わりではなく、その後もフォローできるような仕組みを構築しています」
東京ミッドタウンの特設ブースでは、製品を実際に試すことができるほか、じっくり製品を試せる個室コーナーも設ける。東京ミッドタウンはこの時期、クリスマスイルミネーションを実施していることもあって、夕方からはかなりの人出がある。実際ブースには多くの人が立ち止まっていた。
「従来の製品と比べると、高額ではありますが、場所柄もあるのか、価格というよりはみなさん性能や機能を重視してモノを選ぶ方が多いようです」
従来の製品とは一線を画すデザイン、機能、販売方法まで、パナソニックが目指しているのは、従来の美容家電ではなく「美容製品」だと感じた。今年発表したシニアをターゲットとしたJコンセプトシリーズ、美容高感度層をターゲットとしたPREMIUMシリーズ、ターゲットを明確にしたこのような製品展開は、今後更に増えていきそうだ。