そこが知りたい家電の新技術
水中のバクテリアを99.9999%除去する高級浄水器「Edge」
by 阿部 夏子(2014/12/26 07:00)
あなたが今飲んでいるお水は本当に安全ですか?
東京や大阪などの大都市はもちろん、地方でも「水は買って飲むもの」という意識はここ数年でさらに加速している。ペットボトルに入った水を買ったり、自宅や職場でもウォーターサーバーを導入したりと、様々な方法で水を飲んでいる。
しかし、それでも十分ではない。より安全で安心な水があると主張するのが、英国の浄水器メーカー、Waterlogic社だ。同社は1992年に英国で創業した比較的新しい浄水器メーカーで、現在は業務用製品を中心に扱っている。GoogleやAmazonなど、大手企業でも採用しており、全世界で75万台を納入している。
現在は、日本国内でも家庭向け製品を展開している。今回は、同社が中国・青島(チンタオ)に持つ工場に伺い、Waterlogicが提案する新しい形の浄水器について、話を聞いてきた。
水を99.9999%除菌する浄水器
Waterlogicの浄水器が選ばれている理由。それはパッケージされた水を使わないというところにある。業務用製品の場合、本体は水道の蛇口とそのまま繋がっている。また、家庭用製品では、水道水を入れる大きなタンクが付いている。とはいえ、水道水をフィルターでろ過するという従来からよくある製品とはちょっと違う。
Waterlogicの製品は、通常の浄水器と同様にフィルターに水を通したあと、本体内部に備えたUVライトを使って水中のバクテリアを99.9999%除去する。中国・青島の工場で、製造、研究開発グループのCEOを勤めるJonathan Ben-David氏は、この機構を採用した理由について次のように語る。
「フィルターでろ過した水というのは、除菌効果のある塩素を取り除いているので、バクテリアなどが繁殖しやすくなってしまう。それを防ぐために、Waterlogicの製品は、UVライトを使ったFirewallというシステムを搭載している」
国際特許も取得しているWaterlogic独自のFirewallシステムは、UV-Cライトを水に照射することで、バクテリアを除去するというもので、水を細いガラス管に通して、UVライトが反射するような仕組みを採用している。このシステムによるバクテリアの除去率は、アメリカの厳しい規格にも認められている。
「NSF/ANCII ClassAという非常に厳しい規格なので、これに通ったというのは我々の誇りになっている。私自身、以前は別の仕事をしており、数年前からWaterlogicで仕事をスタートしたが、そのときは浄水器というものがこんなに複雑なものだとは思っていなかった。ただ水をきれいにするだけだろうと。しかし、実際は紫外線をコントロールするための回路や複雑な制御を実現するためのボードを搭載している。我々は、浄水器の会社ではなくて、水の技術を持っている会社なんだ」
実際、同社の幹部にはアメリカのMITで原子物理学を専門に学んでいた人や、微生物研究者などが顔を揃える。
一般的なウォーターサーバーは危険
一方、日本でもよく見られる透明なパックに入った水をセットして使うタイプのウォーターサーバーは「危険」だと指摘する。
「ウォーターサーバーの中には空気が入っている。水を注ぐときに泡がブクブクと上に上がっているのがその証拠だ。空気が入っているということは、バクテリアが繁殖するということ。また、ボトリングされた水は、環境に負荷が高い。作るために石油や化学薬品を使っているし、リサイクルも充分にできていない。水を運ぶのにも輸送費がかかる。
フィルターでろ過するタイプの浄水器はさらに危険だ。フィルターを通した水は味を良くするために、除菌効果のある塩素を取り除いている。そのため、水は無防備で、バクテリアなどが繁殖しやすい状況になってしまう。バクテリアの繁殖を抑えるためには、水を5℃以下に保つ必要がある。常温のまま置いておいたら、ものすごい数のバクテリアが繁殖してしまう」
Waterlogicでもう1つこだわっているのが、製品を全て自社で生産するということ。特に業務用のウォーターサーバーでは、製品の生産をあるメーカーに一括で委託して、完成した製品を買い取り、その後自社の製品として販売するメーカーも多いが、Waterlogicでは、製品の開発から生産、販売、アフターサービスまで一貫して自社で行なっている。
「OEMの製品を管理するというのは、非常に難しいし、特にWaterlogicの浄水器はUV-Cライトを用いた技術に世界特許を取得している。自分達でそれを管理、生産していくということにプライオリティーをおいている」
業務用で認められた技術を家庭に
Waterlogicは、その清潔性や、水道水を使えるというコストパフォーマンスの良さで、業務用のウォーターサーバーで高い評価を得た。現在同社の製品は世界50カ国以上の国で使われており、アメリカ、オーストラリア、ノルウェー、スウェーデン、ドイツ、イギリスではマーケットリーダーとして市場を牽引しているという。
「業務用で結果を残してきたが、今後は家庭向けの製品も本格的に取り組んでいく。中でも我々が最も力を入れているのが日本でも発売しているEdgeという製品だ。卓上やキッチンカウンターに置けるサイズを実現しながら、核となる技術Firewallを搭載している。デザインもドイツの著名なデザイナーに依頼しており、自信がある。日本円で約80,000円と高額な製品ではあるが、水を買うという手間から解放されて、いつでも安全でおいしい水が飲めるという利点がある」
Edgeでは、高性能のカーボンフィルターを使い水をろ過、その後Firewallを通すことで、バクテリアを除去する。特にこだわっているのが、水を出すノズルの部分までUVライトを備えているということ。中で水をいくらキレイにしても、ノズルの部分が汚染されていると、意味がないという。
Waterlogicのスタッフとして働く微生物学者のDr.Yuning Wang氏は、「水の中になんらかのバクテリアがいるのは普通のことですし、バクテリアがいたとしても、人間の健康にすぐ影響があるわけではありません。ただし、どのバクテリアが身体に影響があるのか、どの水にバクテリアがたくさんいるのか、目で確認することはできません。だから、全てのバクテリアを取り除くのです」と語る。
全台調査を実施
同社では現在、インドと中国に生産拠点を置く。特に大きいのは中国の青島にある工場で、Edgeもここで生産している。Edgeはプレミアム製品という位置づけで、工場内でも特に注意深く生産されている。15人からなる製品組み立てラインでは、そのうち9人が品質管理を担当する。
さらに完成した製品は、全て正常に動いているかどうか、テストを行なう。このようなテストは、家電製品の生産工場ではよく行なわれているものだが、通常は無作為に選んだ数台だけをテストしている。しかし、Edgeでは、調査対象を全台としている。
組み立てラインは最先端の日本の工場に比べると、人の手によるものが多いという印象だったが、外部のメーカーから収められる部品も全て自社で改めてテストしているという。
また、同施設には製品の研究開発施設や、試験施設も備える。温度や湿度などの環境や耐久性など様々な項目を試験し、新製品の開発や、現行製品のアップデートに役立てている。
常温の水をおいしく
日本でも様々なタイプの浄水器があるが、Edgeの強みは水道水を使えるという点、そして常温で安全な水を飲めるということだ。ボトルやパックに入った水を使うウォーターサーバーの場合、菌の繁殖などが問題となり、冷水、あるいは温水しか飲むことが出来なかった。Edgeは今までとは全く違うアプローチで、水を供給するので、常温であっても安全な水を飲めるというのが新しい。
日本でも東日本大震災をきっかけとして、水の安全性への関心は高まっている。新しいアプローチで、新たな選択肢ができるというのは歓迎すべきことだ。おいしい水、安全な水を飲むための技術というのは、今後さらに進化を遂げていきそうだ。