「省エネ性の高さ+もっと節電」が魅力の2012年エアコン
昨年の夏は、節電のために使用を控えたり、設定温度を上げるなどの措置がとられてきたエアコン。家庭における消費電力の1/4を占め、夏の日中の消費電力ではその約半分がエアコンによるものだといわれる。今年の夏も昨年以上に電力不足が懸念されるが、節電のためには使い方の工夫だけでなく、買い替えも大きな選択肢となるだろう。省エネ性が各段に進化しているため、元々の消費電力がぐっと下がっており、快適性を損なわずに節電できる機能が満載なのだ。
購入から10年以上経過している人や、そろそろ買い替えを検討している人のために、2012年モデルのエアコンについて、各社の最上位モデルを中心に、冷暖房機能や、節電機能、リモコンの特徴などを紹介しよう。
■富士通ゼネラル「nocria(ノクリア) Zシリーズ」
~電気代管理機能で意識的な節電ができる
富士通ゼネラル「nocria Zシリーズ」・カラーはホワイト |
富士通ゼネラルの「nocria(ノクリア) Zシリーズ」では、2011年モデルから無線リモコンを採用し、エアコンの室内機と通信を行いリモコンに運転状況を送信する機能を搭載した。付属のUSBケーブルとパソコンをつなぐことで電気代の管理が簡単にできる“省エネの見える化”が特徴だ。2012年モデルでは電気契約プランに合わせて1日を最大3つの時間帯に分けて電気代を設定できるようにバージョンアップしており、意識的な節電にさらに役立ちそうだ。
室内機だけでなく、リモコンにも温度センサーを搭載し、室温を無線でエアコンに送るため、人のいる場所の温度に合わせて、自動で控えめ運転に切り替える機能を持つ。冷房時に天井付近の温度に合わせて冷やし過ぎてしまうということがなく、暖房時も同様。また、無線リモコンの特徴を生かして、登録したリモコンから最大で3部屋を同時にコントロールできるため、子ども部屋の使い過ぎを確認できたり、消し忘れのチェックができたりするのも便利だ。
運転時にはフラップと共に前面パネルが開く仕組みになっている | シーズンオフや長期不在時など、電源プラグを抜かなくとも待機電力をオフにできる“オールOFFスイッチ”が新たに搭載されている | エアコンとリモコンの両方に温度センサーがついているため、冷やし過ぎ・暖め過ぎのムダが自動でセーブできる |
1台のリモコンで最大3部屋までコントロールできる無線リモコン | 全室のエアコンを一括で停止することも可能 |
無線リモコンの右上に室温センサーを備える | 冷房時には設定温度を30分ごとに上げ(暖房時には下げる)設定時間が来ると自動停止するおやすみタイマーも。細かい設定はフタを開けて行なう |
さらに、部屋を19のブロックに分けて管理する人感センサーで、人の不在をこまめにチェックする「不在ECOモード」も搭載する。人がいなくなると10分後に省エネ運転に切り替わるほか、1時間もしくは3時間後に運転を停止する「オートオフモード」や、30分後に運転を停止し、人が戻ると自動で運転を再開する「オートオンオフモード」なども選べる。
このほかリモコンで操作した際に、本体の運転状況を声で知らせる「音声お知らせ」や、生活に合わせて1日のうちで4回までオンオフを設定できる「毎日マルチタイマー」などの便利機能も充実。2012年モデルには、シーズンオフや長期不在時など、電源プラグを抜かなくとも待機電力をオフにできる“オールOFFスイッチ”も室内機前面に搭載している。
暖房能力の高さと本体そのものの省エネ性にも定評があるノクリア。価格も比較的抑えめなので、同時に何台も購入したいという向きにもおすすめだ。
■ダイキン工業 ルームエアコン「うるるとさらら Rシリーズ」
~湿度コントロールで節電しながら夏も冬も快適に
「うるるとさらら」というネーミングどおり、湿度コントロールが特徴のダイキンのエアコン。2012年モデルでは人感センサーを新たに搭載し、人のいる場所を見分けて、除湿した冷気を自然の風に近いリズムの“ゆらぎ気流”で届けるため、設定温度が28℃でも体感温度は26℃と涼しく感じられる。つまり、快適さはそのままに節電ができるのだ。人感センサーにより、人の不在を判断すると設定温度控えめで運転し、長時間の不在時には自動停止する機能も備える。
ダイキン工業 ルームエアコン「うるるとさらら Rシリーズ」。カラーはホワイトとベージュ。※冷房時適用畳数8畳程度のAN25NRSはホワイトのみ | 左右の吹き出し口の形状に沿って気流を曲げる「サイドコアンダ機構」。この機構により、羽根がないのに左右に風がいく“ラウンド気流”を実現させている | 今モデルから新たに搭載された人感センサー |
暖房時の「快適エコ自動運転」では、外の空気中の水分をエアコンの室外機の加湿ユニットに取り込んで使用する無給水加湿+人感センサー+リモコンでのエリア設定により、室内の湿度を高めに保ち、人がいるエリア(スポット)を集中的に暖房する。設定温度が低めでも加湿で温かく快適に過ごせる仕組みだ。肌に直接風を当てずに室内を加湿パワー最大で運転する「美肌保湿運転」は、乾燥する冬場にうれしい機能といえるだろう。
また、エアコン室内機をぐるりと囲んだ、左右・斜め・正面から切れ目なく吹き出す“ラウンド気流”を実現させたことで、部屋全体をムラなく冷暖房できるだけでなく、室内器の設置場所に応じた気流を送ることができるのも魅力だ。縦長右隅、横長中央など部屋の形状と室内機の据え付け位置を、6種類の設置パターンから選んで、最適な風向きになるようにリモコンで設定ができる。
リモコンには「パワーセレクト」ボタンを設け、エアコンが消費する電流値に上限を設けて、それ以上電力を消費しないようにコントロールする機能もあるので、電力需要のピーク時にも安心して使える。
湿度や体感温度に着目した「うるるとさらら」は、特に女性に好まれるエアコンといえるかもしれない。また、3世代同居など年齢層に幅のある家族のリビングにも向きそうだ。
大画面で見やすいリモコン。握りやすいラウンドフォルムが特徴。温風冷風がどのように吹いているのか図で示されるのでわかりやすい(現在の設定はラウンド気流により部屋全体を空調している状態) | 「快適エコ自動」運転中でも「風エリア」ボタンを押すことで、人感センサーが働き、人のいるところにスポット気流を送る。当たっても不快さを感じない“ゆらぎ気流”が特徴 | 風向調整などの細かい設定はフタを開けてする仕組み |
リモコン下部にあるタイマー設定部分 | 起床時刻に合わせた快眠タイマーモードもある |
■三菱 ルームエアコン「霧ヶ峰ムーブアイZWシリーズ」
~体感温度に応じた送風運転への切り替えと“節電リモコン”で快適節電
三菱 ルームエアコン「霧ヶ峰ムーブアイ ZWシリーズ」。カラーはクリーンホワイトとクリーンブラウン |
「快適性を保ちながら、より確実に消費電力を抑えられるエアコンが必要」という開発コンセプトを基に、無理なく節電できる機能にこだわったのが三菱電機の「霧ヶ峰ムーブアイZWシリーズ」だ。
同社のエアコンは毎年、独自の赤外線センサー「ムーブアイ」の性能を高めてきたが、新モデルは人と部屋の状態をしっかり見張る“エコムーブアイ”へと進化した。高効率圧縮機(コンプレッサー)を採用して冷房時の消費電力を低減させたうえで、このエコムーブアイが体感温度を見ながら、送風運転の風と冷房運転の風を自動で切り替える「ハイブリッドシステム」を搭載。
送風運転時にはコンプレッサーを動かさず、ファンモーターのみで運転するため、わずか27Wと扇風機並みの少ない消費電力で快適な涼しさを保つ。室温に大きな変化が起きる前に、人の体感温度によってこまめに送風運転と冷房運転を切り替えることで、冷房再開時にもコンプレッサーに負荷をかけることなく運転することができるという。
「エコムーブアイ」が体感温度を見ながら送風運転と冷房運転の風を自動で切り替える。送風運転時にはコンプレッサーを使用しないので、消費電力は23W~27W程度。左右上下に吹き分けができる3D気流フラップを採用 | 同社の2011年製の扇風機の強モード運転時の消費電力は30W程度 | 状態を視覚的に表現して直感的に操作できるGUI(グラフィックユーザーインターフェース)のリモコン |
気流においては、左右上下に吹き分けができる3D気流フラップを採用し、離れたところにいる2人同時に風を送ることが可能。つまり、エアコン1台で扇風機2台分の働きしてくれるのだ。さらに、体感温度が高い人には風を強く送り、低い人には弱風を送るなどの風の強さも変えるため、それぞれが快適に過ごせるのも三菱ならではだ。
暖房時のハイブリッド運転は、天井付近にたまった熱を再利用する。エコムーブアイが天井付近にたまった熱を見つけると、暖房運転を止め、天井付近の熱を循環させるようなサーキュレーターの働きをする送風運転に切り替えて節電しながら、部屋全体を暖める仕組みだ。
同社では、ボタン1つでわずらわしい操作なしに節電できる機能を「節電アシスト」と名付け、2011年秋以降に発売の家電に搭載している。エアコンの「節電アシスト」機能では、リモコンに「もっと節電」ボタンをつけ、“おすすめ節電モード”ではさまざまな節電機能が一括で設定出来るようにしている。ブタのアニメーションで5段階の節電レベルを表示してモチベーションを高める「節電診断」のほか、昨年モデルから採用している「お知らせナビ」でも省エネ効果を最大限に上げるアドバイスを実施。
エコムーブアイが計測した熱画像から部屋や人の状況を分析して、カーテンやドアを閉めたり、除湿と冷房の切り替えなどをリモコンに表示したりして、さらなる省エネ行動を促す。とことん節電したいなら三菱の霧ヶ峰ムーブアイが本命だろう。
同社が提唱する「節電アシスト機能」も搭載。コンセントを模したデザインの「もっと節電」ボタンを押すとさまざまな節電機能が一括で設定出来る仕組みに | 「すぐに冷したい」「送風にしたい)」など、「快適セレクト」ボタンを押すと、“したいこと”から選んで操作できる | 「もっと節電」ボタンを押すと、現在の節電レベルをブタのアニメで表示する“節電診断”機能も |
節電につながるさまざまな機能を一度にすべて設定出来る「おすすめ節電」のほか、項目ごとに1つずつ選んで設定する「えらべる節電」モードもある | 人がいなくなったら自動でセーブや停止をする機能もある。1つずつ設定していくのが面倒で使っていなかった人も多かったため、設定しやすくしている |
■東芝 エアコン「大清快VOiCE NDRシリーズ」
~“冷房運転でもわずか45W”の声で動く省エネエアコン
東芝 エアコン「大清快VOiCE NDRシリーズ」。カラーはプレシャスホワイトとプレシャスシャンパン |
卓上型のボイスコントローラを付属し、赤外線通信でエアコンの室内機に指示を送る“声で動く”エアコンが東芝の「大清快VOiCE(ボイス) NDRシリーズ」だ。音声認識技術を使った新しい操作方法に目が行きがちだが、同社のエアコンの本当の魅力は、2009年から採用して3年目になる独自のデュアルコンプレッサーを採用した省エネ技術にある。
コンプレッサーの能力は圧縮部の回転数と連動し、能力を小さくするために回転数を落とすと効率が落ちてしまう。大清快では、これを解消するために、コンプレッサーを2つ搭載している。ツインロータリーコンプレッサーの圧縮部である2シリンダーを1シリンダーのみの運転に自動切り替えすることで、高効率を維持したまま能力を下げることを可能とし、業界最小能力の0.2kW、扇風機並みの消費電力45Wでの冷房運転を行なう「涼風運転」モードを搭載している。2012年モデルではシリンダーの扁平化や吸い込み口の一本化、吸込み配管の短縮などを図ることでコンプレッサーそのものの省エネ性も向上した。
デュアルコンプレッサーだからできる“1シリンダー運転”で、涼感のある冷風で快適感を保つ「涼風運転」が可能に | 「涼風運転」時の消費電力は冷房行っているのにわずか45W、1時間1円の電気代で済む。リアルタイムの消費電力を表示できるのも同社だけだ | 涼風運転時には風は水平方向に送られるため風当たり感がなく、就寝時にも向く |
ユニバーサルデザインの考えに基づいて作られたリモコンも付属。涼風運転をするには、冷房ボタンを2度押しする |
室内・室外での負荷電流を検出して電力を算出し、最新情報を表示する“リアルタイムモニター”も同社ならでは。使用後に確かめるのではなく、リアルタイムで省エネ・節電効果をモニターの変化で実感できるのが特徴だ。リモコンの切り替えで1時間あたりの電気代や室温も表示する。
暖房では、ダッシュモードの設定時刻を予約しておくと、停止している間にデュアルコンプレッサーによるヒートポンプ予熱を行ない、暖房スイッチを入れた後わずか1分で温風が吹き出す「ダッシュ暖房」機能を備えるため、寒い朝や帰宅時にも心強い。
そのほかの節電・省エネモードとして、「節電」「おすすめ」「おまかせ自動」「パワーセレクト」を搭載。エアコンの冷暖房運転中にボイスコントローラに『節電』と言うと、自動で0.2kWの能力での運転に切り替わるほか、『おすすめ』と言うと、冷房では28度・暖房では20℃に自動設定し、人のいるところだけに送風する仕組みだ。電力需要のピーク時に役立つ「パワーセレクト」は、エアコンの最大運転電流を75%または50%に設定するもので、リモコンのメニューキーで操作する。
同社のテレビやLED照明とも連動しているボイスコントローラの利便性に加え、就寝時にも役立つ冷やしすぎない「涼風運転」など、リビングにも寝室にも向きそうだ。
■パナソニック ルームエアコン「Xシリーズ」
~大きな吹き出し口で部屋のどこでも快適の“エコナビ”エアコン
パナソニック ルームエアコン「Xシリーズ」。カラーはクリスタルホワイトとクリスタルベージュ |
パナソニックのエアコンのフラグシックモデル「Xシリーズ」では、これまで室内機の右側にあった電装部を本体の上部に移動させた“トップユニット構造”を新たに採用。省エネ性能を高めつつ、部屋の隅に設置した際も横方向に気流を届けて快適性を高めているのが大きな特徴だ。これまでの空きスペースを利用したことで熱交換器の容量も、吹き出し口の横幅も拡大。新コンプレッサーの搭載と送風性能が向上した室外機との組み合わせで、高効率の運転をする。
また、リビングでは部屋の隅に設置されることが多いエアコンだが、従来は横方向に気流を送ることが不得意だった。Xシリーズでは、本体の横幅いっぱいにとられた吹き出し口と、面積が2倍になったルーバー、気流を絞り込む2枚のフラップなどの組み合わせにより改良され、部屋のどこにいても快適感を得られるようになっている。
吹き出し口の横幅が広く、部屋の隅々まで気流を届ける新構造 | 面積が2倍になって横方向に気流をコントロールするビッグルーバー、気流を絞り込む2枚のフラップ、新搭載のサイドディフューザーで“横方向”への気流にこだわった | これまで室内機の片側にあった電装部を上部にもってきた“トップユニット構造”により、吹き出し口の幅が広がり、熱交換器の容積も拡大している |
リビングでは部屋の隅に設置されることの多いエアコン。従来機では横方向に気流が届きにくかったという | 新モデルの“ロングワイド気流”では横方向へもしっかり届くことがわかる |
おなじみとなった「エコナビ」機能は、人、部屋、日差し、活動量を細かく見張ってムダなく運転する検知エリアを拡大。人のいる場所や生活エリアを中心に冷暖房し、日差しの強さに応じて運転を調節する。さらに冷房時には、人の“周囲温度”を自動で上げて節電し、暑く感じる前に設定温度に戻す「リズム温度制御」を新たに開発。意識せずとも節電につながる「エコナビ」を強化している。
暖房機能も強化している。これまではエアコンの横方向の位置に座っていた場合、足元までしっかり暖めるには設定温度を上げなければならなかったが、約2倍の風速と、ぐんと延びた気流到達距離で暖房時の快適性が高まったという。そのほか、室外機の排熱を蓄えて、霜取り運転中の暖房や温風スタート時の吹き出し温度アップに使用する「エネチャージシステム」も進化し、通常運転中にも蓄熱槽を利用して暖房時のサーモオフ発生によるエネルギーロスを低減している。暖房時の魅力が増したXシリーズは、一年を通じて空調をエアコンに任せたい人にとって魅力的な機種だろう。
暖房時の温度を見てみると横方向の温度が高く、部屋全体が暖まっている | 薄型で軽く、なめらかなスライド開閉方式を採用し、スイッチの位置も一新した新リモコン。リモコンで電気代を確認できるほか、ピーク電流をカットできる「パワーセーブモード」も搭載している |
■シャープ「プラズマクラスターエアコン B-SXシリーズ」
~パネル制御でつつみ込む健康冷房+スピード暖房
シャープのエアコンといえば、センサー系エアコンとは異なり、“風(=気流)で暖める、冷やす”のが特徴だ。薄型のエアコンでは気流のロスが多いとし、意表を突いた奥行きのあるデザインのエアコンを発表したのが2006年のこと。デザインは変わっても、部屋全体を包み込む気流制御の方針は変わっていない。
冷房時には、運転開始のタイミングではななめ下方向に吹き出し、すばやく部屋を冷やし、設定温度に到達するとパネルの向きが上向きに変わり、冷風が天井や壁面に沿いながら、つつみ込むように部屋全体を冷やす仕組みだ。体に直接当たる風を抑えるため、就寝時の快眠にも向くという。
シャープ プラズマクラスターエアコン「B-SXシリーズ」。カラーはホワイト系 | 大きなパネルで温風を効率よく床面へ誘導する“ロングパネル可動方式”。ルーバー方式と違い、温風のもれがなく暖かく、設定温度への到達スピードが速い。冷房時にはロングパネルが上向きに開き、冷風が天井や壁面に沿いながら、包み込むように部屋全体を冷やす |
2012年モデルの「B-SXシリーズ」では、通年使用することを考え、“メイン暖房機”としての買い替え需要に応えるべく、暖房感の向上に力を入れている。コンプレッサーの性能を最大限に引き出す高電圧アシスト制御と、室外機の高効率ファンによる熱交換率の向上で低温暖房能力を大幅に強化。従来モデルでも行なっていた「ノンストップ暖房」で霜取り時にも運転を止めずに快適性を保つ。同社の冷蔵庫の“どっちもドア”の発想により、軸を2つにした回転パネルを採用することで、上下反転式のロングパネル構造を可能とし、暖房時には温風を効率よく床面へ誘導してスピーディに暖める。
省エネ性能については、室外機・室内機の送風ファンに生物模倣学に基づいた「ネイチャーウイング」を採用し、送風効率を昨年モデルと比較し、室内機で約30%、室外機で20%高めている。そのほか、日差しセンサーが日差しの強さを感知して冷暖房の強さを抑え、照明センサーによって就寝時には自動でおやすみ運転に切り替える「おすすめエコ自動運転」を採用。新モデルでは、季節による温度・湿度の最適運転の要素も加わって、ムダな電力消費を抑える。また、最大運転電流を抑える「電力控えめ運転」モードを新たに搭載し、電力使用のピークカットにも役立つようにしている。
■日立「ステンレス・クリーン白くまくん Sシリーズ」
~3つの節電機能&暖房能力強化の白くまくん
日立の「ステンレス・クリーン白くまくん Sシリーズ」では、人の居場所や運動量を見る、掃除機掛けなど生活の音を聞く、日差しを感じる「見る・聞く・感じるセンサー」の組み合わせで、適切な節電運転を行なう「ecoこれっきり」運転に加え、「電力カット」「風だけ運転」など3つの節電機能を搭載する。
日立 ルームエアコン「ステンレス・クリーン白くまくん」Sシリーズ。カラーはクリアホワイト | 人の居場所や運動量を見る、掃除機掛けなど生活の音を聞く、日差しを感じる「見る・聞く・感じるセンサー」の組み合わせで、適切な節電運転を行なう | インバーターとスクロール圧縮機の改善で高速回転での運転ができるようになったジェット・スクロール圧縮機 |
幅をこれまでの60mmから45mmにスリム化したリモコン | 「ecoこれっきりボタン」「電力カット」など、ワンタッチで節電ができるボタンを採用している |
リモコンの「電力カット」ボタンを押すと冷房時は28℃、暖房時は20℃設定で運転を自動で行ない、リモコンの置かれている場所に向かって左右にスイングしながら風を送る仕組みだ。さらに節電したい場合や、冷たい風が苦手な人は従来から搭載している機能「風だけ」運転を選択することで、送風運転のみに切り替わる。「電力カット」「風だけ」運転のいずれも、リモコンのある場所に風を送るので、使用時にはリモコンと一緒に移動することがポイントとなる。
そのほか、ジェット・スクロール圧縮機とダブルワイドフラップにより、広いリビングでも部屋の奥までしっかりと暖めることができるなど、暖房能力が向上しているのも特徴。もっと暖かい風が欲しいなど“すぐに暖まりたい”という時には「温風プラス」ボタンを押すと、吹き出す風の温度を約55℃まで高めた運転を30分行ない、その後43℃の温風に切り替わる機能も備えている。
暖房時には面積を20%拡大した2枚のフラップで温風を床面にしっかりと届ける | ジェット・スクロール圧縮機の採用で低温暖房能力が向上した |
同社ならではの清潔機能「ステンレス・クリーン システム」も強化。フィルターや大きくなったフラップ、風が通る上部通風路にもステンレスを採用し、従来比1.4倍のステンレス面積となっている。静電気が起きづらいため、ホコリがつきにくく、室内機内部も清潔に保てるという。
昨年モデルと比べ、ステンレスの採用面積が約1.4倍になり、室内機内部も清潔に保つ「ステンレス・クリーン システム」 | イオンミスト発生器を搭載しており、空気の清浄化や脱臭のほか、肌や髪の乾燥も防ぐという |
■ダイキン工業「ラクエア Wシリーズ」
~使いやすいリモコンや熱中症防止機能などを備えた高齢者向けエアコン
ダイキン工業 らくらくエアコン「ラクエア」Wシリーズ。カラーはホワイト。フィルターの自動おそうじ機能やストリーマ空気清浄、ストリーマ内部クリーン機能も搭載する |
最後に一風変わったエアコンを紹介しよう。「ラクエア Wシリーズ」は、千葉大学デザイン心理学研究室との共同開発で生まれた“置いたまま使う”リモコンと、横浜国立大学教育人間科学部との共同で実証した“冷えを感じやすい人でも快適に使える”自動運転が特徴。ダイキンのエアコンのラインアップの中では、中位モデルに位置する。
ラクエアのリモコンは「運転開始」「停止」「室内温度(確認)」などのボタンを独立させ、冷房時では標準温度の28℃を基本に、右に1目盛り回せば+1℃、左に回せば-1℃とダイヤル操作で温度設定ができる仕組みだ。目盛りごとに“カチカチ感”があるので、操作をしっかりと認識できる。冷房、暖房、除湿などの使い分けや、風量調整、風向きなど、より細かな設定をしたいときには、リモコン右側の半透明の扉を開けて行なう。一時、最上位モデルで採用していたことのある「音声お知らせ機能」も、このラクエアでのみ復活。操作内容が、きちんと本体に届いているか確認できるようになっている。
「卓上型」でリモコン自体に温度センサーを搭載してあり、使う人のすぐそばの温度を見守ることができるのも大きな特徴。冷房時には、できるだけ温度を下げずに除湿して、風を当てないことで、からだを直接冷やさずに体感温度を心地よく下げ、暖房時には使う人のまわりの温度が快適になるまでしっかりと暖めるなど、「体感温度」に即した冷暖房を行なう。
千葉大学デザイン心理学研究室との共同開発で生まれた「かんたん見守リモコン」。心理学に基づく設計で、操作の簡単さを追求している | 半透明のフタを開けると細かな設定ボタンが現れる。操作はすべてダイヤル式を採用 | 本体側面の4か所に発信部が設けられているため、エアコン本体にリモコンを向けず、床やテーブルなどに置いたまま操作してもきちんと反応する |
リモコンの背面を開けると、高温パトロールモード(高温防止切替)を「音声でのお知らせ」「自動で冷房運転」のどちらの運転にするかを選べるようになっている。長期不在時など運転させない選択(切)も可能 |
さらに、エアコンが室温と湿度の上昇を検知して温度33℃以上、およびWBGT値(暑さ指数)が28を超えたときには『高温』と判断し、自動で冷房運転を行ったり、音声で知らせたりする「高温パトロールモード」も備える。WBGT値とは熱中症の危険指数を表すもので、単に高温時だけでなく、室温が低くても湿度が高いときは数値が高くなり28以上というのは熱中症の危険ゾーンを示す。年齢が高くなるにつれ、暑さを認識しづらくなり、「もったいない」という節電意識からもエアコンの利用を我慢しがちなことから、「本当にエアコンが必要なときに、我慢をせずにエアコンを使ってもらいたい」と開発された機能だという。
高温防止設定は2種類あり、リモコンの底部にあるスイッチで切り替えができるようになっている。1つは「室温が高くなっています。冷房運転を開始してください」と音声で知らせるもので、もう1つは自動で冷房運転を開始し、高湿高温が解消されたら自動で運転を止めるというもの(長期間の不在時など、高温防止機能を切ることも可能)。高齢の親への贈り物としてもぜひおすすめしたい。
■リビングには省エネ性の高いものを、寝室には快適性の高いものを
今回は、それぞれのメーカー独自の省エネ・節電機能や快適性、リモコンの特徴などを中心に紹介したため、フィルターの自動おそうじ機能や内部クリーン機能などについては触れなかった。だが、現状では、どのメーカーも最上位機種だけでなく中位モデルくらいまでは、クリーン機能を備えている。これは日ごろのお手入れが楽という意味合いよりは、フィルターや室内機内部を常にきれいに保つことで、風量を落とさず、熱交換器の性能もしっかりと発揮できるためと考えたい。つまり、省エネ・節電のためにも、こうしたクリーン機能は大いに役立つのだ。
そういう意味でも、普段あまり使わない客間用は別としても、リビングや寝室など使う頻度の高い部屋に設置するエアコンには、なるべくこうしたクリーン機能がついているものを選びたい。
また、空間が広いリビングの場合、省エネ性や節電機能の充実しているものを選ぶかどうかで消費電力に大きな違いが出てくる。今回紹介した最上位モデルは、ほとんどすべてリビング用としておすすめできるが、リモコンなど自分が使いやすいと感じたものや設置場所、冷暖房への好みを考慮して選ぶといいだろう。
一方、寝室用として選ぶなら、省エネ性も大切だが、心地よく眠るためには快適性に優れたものをセレクトしたい。夫婦の寝室で、夫と妻のそれぞれが冷暖房に対する好みが違うようなら、吹き分けが可能なものにしたり、冷えすぎないものを選ぶなど。快眠タイマー、おやすみタイマーなどあるもの、湿度調整機能に優れたものなどもいいかもしれない。
また、夏に購入する際には忘れがちだが、メイン暖房としてエアコンを使うかどうかもチェックしておきたいポイントだ。わが家にぴったりの1台を選んで、夏も冬も省エネ&快適に過ごそう。
神原サリー 新聞社勤務、フリーランスライターを経て顧客視点アドバイザー&家電コンシェルジュとして独立。「企業の思いを生活者に伝え、生活者の願いを企業に伝える」べく、家電分野を中心に執筆やコンサルティングの仕事をしている。企画・開発担当者や技術担当者への取材も積極的に行い、現場の声を聞くことを大切にしながら、マーケティングの観点を踏まえて分析。モノから入り、コトへとつなげる執筆・提案を得意とする。テレビ、ラジオ、新聞等、メディアへの出演も多数。一般社団法人日本睡眠改善協議会認定・睡眠改善インストラクター。 |
2012年6月20日 00:00