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第13回:LEDとは



優れた低消費電力と長寿命。白熱電球・蛍光灯に代わるエコ照明

無印良品「LED懐中電灯」に搭載されているLED。照明器具として使われることが多い
 LEDは、電気を通すことで光を放つ半導体のことを指します。日本語では「発光ダイオード」と表現されますが、英語では「Light Emitting Diode」という表記になり、頭文字を取ってLEDと呼ばれています。

 照明用途としてLEDが注目されている最大の要因は、白熱電球・蛍光灯と比べて消費電力が非常に少ないという点でしょう。同じ明るさの蛍光灯と比べた場合、理論的には消費電力は約半分になると言われています(出典:新エネルギー・産業技術総合開発機構ホームページ。現在市販されている製品では、蛍光灯の7~8割程度)。そのため、現在使われている白熱電球や蛍光灯が全てLEDに置き換わったとなれば、電力不足、CO2排出による地球温暖化といった問題を一気に解決できるのではないか、ということで大いに注目されているのです。

 また、寿命が非常に長いという点も特徴のひとつです。LEDはもともと故障しづらいうえに、理論上は発光素子自体はほとんど劣化しませんので、ほぼ永久的に利用できるのです。実際には、発光素子を保護する樹脂や電極部分の劣化が要因で、ある程度の期間で使用できなくなりますが、それでも寿命は蛍光灯よりも長く、例えば松下電工の「新型MFORCE搭載LEDシーリングライト」では、同程度の明るさを持つ電球形蛍光灯の5倍長持ちするとされています。そのため、低消費電力で電気代が抑えられるだけでなく、交換のコスト、手間も大幅に低減できます。

 さらに、発熱が少ない、サイズが小さいという点も見逃せません。発熱量は蛍光灯の1/4ほどしかありませんので、熱に弱い場所で照明として利用できるのはもちろん、部屋の温度上昇もおさえられますので、空調コストもおさええられると考えていいでしょう。そして、LEDの電光掲示板などを見るとおわかりのように、LED素子は非常に小さいので、照明器具の省スペース化が容易に実現できますし、デザイン性の自由度も高くなります。

 このように、さまざまな利点のあるLEDは、省エネルギーやCO2排出量削減が叫ばれる現在、白熱電球や蛍光灯を置き換える存在として期待されています。


白熱電球・蛍光灯と比べて、消費電力が少ない点が特徴(写真はエル光源「LED寝室読書灯 L-Flex」) 故障が少なく、寿命が長い点も特徴(シャープのLEDモジュール「GW5BWC15L00」発表会パネルより) サイズが小さいため、スリムなデザインの電気スタンドにも使用される(写真はハーマン・ミラー「Leaf Light」)

 LED自体は比較的歴史の長いデバイスです。以前より、電気製品のインジケータや携帯電話のイルミネーション用などとして広く採用されており、最近では、車のテールランプや信号機、駅や電車など電光掲示板など、様々な機器でLEDが利用されるようになってきました。

 このようにさまざまな製品でLEDが利用されるようになったのは、青色LEDを量産する技術が確立されたからです。赤色LEDや黄緑色LEDは昔から存在していましたが、緑と青は量産が非常に困難でした。しかし、青色LEDの量産の成功で、その技術をベースに緑色LEDの量産も可能になりました。これにより、赤・緑・青の、いわゆる“光の三原色”を利用して、それぞれの光の強さを調節して自由に色を表現できるようになったのです。ビルの壁面などに取り付けて映像を表示する大型ビジョンにLEDを使った製品が登場したのも、赤・緑・青に発光するLEDが揃ったからです。

 そして、青色LEDの登場によって、もうひとつ重要なLEDが登場することになりました。それは、青色LEDに色の付いた透明の「蛍光体」という素材を組み合わせることで、光の色を白くする「白色LED」です。照明として利用するには白色に発光する光源が不可欠ですから、白色LEDの登場によって、LEDを一般照明器具に応用する下地が整いました。


駅の案内板に使用されているLED。赤と緑に発光するLEDを採用しているが、それぞれの色を組み合わせることで、オレンジ色を表現している 白色LEDは、青色LEDに「発光体」というフィルターをかぶせることで、白色の光を演出している(写真はマグライト「MAGLITE LED」) 発光体の色を変えることで、さまざまな色が表現できるようになった(写真は「ライティングフェア2007」の星和電気のブース)

家庭用照明器具として利用するには課題も

東芝「LEL-SL5L-F/LEL-SL5N-F」は、一般的な電球のソケットに入れて使えるが、明るさは40W相当と弱め
 しかし、白熱電球や蛍光灯を置き換える存在にはまだなっていません。なぜなら、照明として利用するにはまだまだ克服しなければならない課題が残っているからです。

 最も大きな課題が輝度です。LEDは電力を高めると発光量も増えますが、発光素子である半導体は熱に弱いので、加える電力を高めて発熱が増えると、発光効率が下がってしまうばかりか、素子の寿命も短くなってしまうのです。つまり、一般照明として利用できるだけの発光量と、LEDの特徴でもある低消費電力・長寿命を両立するのが非常に難しいのです。そのため、現在製造されている高出力LEDは製造コストがかさんでしまい、非常に高価な存在となっています。

 2007年末に登場した、東芝の電球型LED「LEL-SL5L-F/LEL-SL5N-F」は、LEDが一般照明として普及する可能性を示す存在として注目されました。ただ、明るさは40Wの白熱電球相当しかありません。消費電力は約5.3W程度と、省電力という点は非常に優れていますが、一般家庭で照明として利用するには、最低でも60Wの白熱電球相当の明るさが必要ですから、まだまだ物足りないのは事実です。しかも、価格も7,000円台半ばと非常に高価です。明るさと価格が改善されない限り、本格的な普及は難しいでしょう。

 それでも、既にLEDへの置き換えが進んでいる分野もあります。LEDは発光面から正面に向かって直線的に光が進む性質がありますので、特定の範囲のみを照らす用途として最適な光源なのです。そのため、読書灯、懐中電灯、スポットライトなどでは、LEDを採用する製品がかなり多くなっています。LEDの信号機が普及しているのも同様の理由からです。

 今後は省エネやCO2排出量削減といった観点から、一般照明用としてLEDは確実に普及していくはずです。そういった意味では、広範囲を面で照らすといった課題の克服が、普及への鍵となるでしょう。


読書灯としてのLED照明は普及が進んでいる(写真はエル光源「LED寝室読書灯 L-Flex」) LEDの光は直線的に進む特徴があるため、特定の範囲を照らす場合に向く(写真は無印良品「LEDポリカーボネート懐中電灯」)


【LED】の、ここだけは押さえたいポイント

・低消費電力、長寿命、低発熱、省スペースが特徴の照明
・暗い、高価であるなど、克服すべき課題は多い
・読書灯、懐中電灯など、特定の箇所を照らすスポットライトとしては置き換えが進んでいる

2008年8月6日 初版




URL
  現代家電の基礎用語 バックナンバー
  http://kaden.watch.impress.co.jp/cda/word_backnumber/

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2008/08/06 00:00
平澤 寿康
1968年、香川県生まれ。1990年代前半にバイト感覚で始めたDOS/V雑誌のレビュー記事執筆を機にフリーのライターとなる。雑誌やWeb媒体を中心に、主にPC関連ハードのレビューや使いこなし、ゲーム関係の取材記事などを執筆。基本的にハード好きなので、家電もハード面から攻めているが、取材のたびに新しい製品が欲しくなるのが悩ましいところ。

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