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第11回:IHクッキングヒーターとは



火を起こさず安全な調理が望める

ガスを使わず、電磁誘導を利用して鍋を発熱する調理器具が「IHクッキングヒーター」(写真は日立のIHクッキングヒーター「サイレントケムレス HT-C20TWFS」)
 IHクッキングヒーターとは、オール電化住宅の象徴的な器具として扱われていることからも分かるのように、ガスを使わず、電気のみで稼働する調理器具です。ガスコンロの代替品として期待されています。

 最大の特徴は、電磁誘導を利用して金属製の鍋自体を発熱させるという仕組みのため、使用時に火が出ません。子供からお年寄りまで、誰でも安全に利用できます(電磁誘導については後半で述べます)。

 また、鍋が噴きこぼれて火が消えガスが漏れたり、不完全燃焼で一酸化炭素などの有毒ガスが発生するという心配も全くありません。さらにいえば、加熱中に燃焼を伴わないため、当然CO2も発生しません。そのため、調理中でも部屋の空気を汚す心配がないのです。このように、安全でクリーンに利用できるという点が、IHクッキングヒーターの大きな利点と言っていいでしょう。

 このほか、鍋だけを温めるさせるという原理のため、鍋以外が発熱しないので周囲が熱くならず、電気エネルギーも非常に効率よく利用できる、発熱量の調節が簡単で、天ぷら油の温度を一定に保つなど温度管理がやりやすい、という省エネ性・操作性での良さもあります。また、上昇気流による油の飛び散りが少ないため、キッチン周辺や換気扇が汚れにくく、さらには天板が平面で掃除がやりやすい、といったような清潔性という点でも有利です。

 ただし、欠点もいくつかあります。土鍋やガラス鍋など、非金属製の鍋は利用できませんし、例え金属製でも、底面が曲面だったり足の付いているものは利用できません。また、鍋がIHクッキングヒーター表面に密着していないと加熱できないので、鍋フリを行なうと加熱が止まり、加熱ムラが発生しやすくなります。さらに、IHクッキングヒーター対応の鍋は分厚い金属を使うので、重量の重いものが多くなるという面もあります。

 そして、特に注意しなければならないのが火傷です。原理上、IHクッキングヒーター自体は熱を発しませんが、実際には調理時の鍋の熱が伝わることなどによって、調理直後はIHクッキングヒーター表面も非常に熱くなります。ガスコンロと違って熱を持つ部分がわかりにくいので、調理直後にIHクッキングヒーター表面を触って火傷しないように十分注意する必要があるでしょう。


ステーキを加熱中のようす。ご覧の通り、火を一切燃焼させていない 天板が平面のため、ふきんでサッと拭き掃除できる IHクッキングヒーターは鍋フリが苦手だが、最近では鍋底センサーを搭載することで、この問題を解決する製品が増えている(写真はナショナル「KZ-VSW33D」の発表会の模様)

磁力で金属を加熱、鍋の電気抵抗が大きいほど高温で調理可能

IHクッキングヒーターでは、コイルに電気を流し、その際に発生する磁力線を利用して鍋を加熱する(写真は三菱電機「CS-G37HWA」の発表会で公開されたコイル)
 さて、ここからはIHクッキングヒーターの発熱の原理となる「電磁誘導加熱」について触れておきましょう。

 IHクッキングヒーター内部には、銅線をグルグル巻きにした「コイル」と呼ばれる回路が取り付けられています。コイルは、電流を流すと周囲に磁力線が発生します。そこに金属などの導電性物質を近づけると、磁力線が金属に届き、その部分に渦状の電流(渦電流)が流れるという現象が起こります。そして、金属の電気抵抗により、金属内に渦電流が流れるときに、熱が発生します。この熱のことを「ジュール熱」と呼びます。

 IHクッキングヒーターではこのジュール熱を利用して加熱を行ないます。まず、IHクッキングヒーターの電源を入れると、コイルに電流が流れて、IHクッキングヒーター表面に磁力線が発生します。そこに金属製の鍋を近づけると、鍋の底に渦電流が発生し、鍋自体にジュール熱が発生するというわけです。これが、IHクッキングヒーターにおける、電磁誘導加熱の仕組みです。ちなみに「IH」の2文字も、電磁誘導加熱の英語表記「Induction Heating」の頭文字を取ったものになります。

 ただし、この時の発熱量は、鍋の素材である金属が持つ電気抵抗の大きさに比例します。つまり、電気抵抗の大きな金属で作られた鍋では発熱量が大きく、電気抵抗の低い金属だと発熱が少なくなるのです。銅やアルミなど電気抵抗の低い金属でできた鍋や、底の薄い鍋などがIHクッキングヒーターで使えなかったりするのはこのためです。

 ただ最近では、従来よりも強力な磁力線を発生させることで、金属素材や鍋底の厚さによらず利用できる「オールメタル対応」のIHクッキングヒーターも登場していますので、以前よりも鍋選択の幅は拡がっています。


最近では、様々な金属鍋に対応する「オールメタル対応」を謳った製品も出てきている(写真は日立「サイレントケムレス HT-C20TWFS」の発表会でのパネル) IHクッキングヒーターはビルトインや据え置き型以外にも、卓上型のタイプもある(写真はドウシシャ「MA-IH0701」)。


【IHクッキングヒーター】の、ここだけは押さえたいポイント

・火を使わないので、安全かつクリーンに利用できる
・温度調節が容易で、揚げ物や煮物の調理に向く
・底が曲がっていたり、金属素材でない鍋は使用できないなど、対応する鍋に制限がある
・最近では、不得意とされてきた銅やアルミなどの金属素材でも使える「オールメタル対応」の機種が増えてきている

2008年7月23日 初版




URL
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2008/07/23 00:02
平澤 寿康
1968年、香川県生まれ。1990年代前半にバイト感覚で始めたDOS/V雑誌のレビュー記事執筆を機にフリーのライターとなる。雑誌やWeb媒体を中心に、主にPC関連ハードのレビューや使いこなし、ゲーム関係の取材記事などを執筆。基本的にハード好きなので、家電もハード面から攻めているが、取材のたびに新しい製品が欲しくなるのが悩ましいところ。

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