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クルマで家の電気をまかなえる!? 快適なV2H生活がもっと身近になりました

電気自動車を家の蓄電池のように使える「V2H」をモデルルームで体験しました。写真は日産「リーフ」

電気自動車(EV)、長年ずっと興味はありつつも、高価でなかなか手を出しにくい……と思っていました。

そんな私が導入を決めた理由の一つは、電気自動車を“住宅の蓄電池(電源)”として活用可能な「V2H(ブイツーエイチ)」という形態があること。電気自動車の価格も比較的手ごろになってきたことや、軽自動車タイプでよりコストパフォーマンスの高いモデルが登場してきたのも、購入を後押ししてくれた大きなポイントでした。

しかし、自宅で電気自動車やV2Hのシステムを実際に使っていく前に、いろいろ気になる部分もあります。そこでいち早く実際にV2Hを体験できる機会をもらって、日産のコンパクトな電気自動車「サクラ」に試乗するとともに、V2Hのシステムが入ったモデルハウスに行ってきました。V2Hで生活がどのように変わるのか、その体験談を紹介します。

日産のコンパクトな電気自動車「サクラ」
納車が待ち遠しいサクラに、改めて試乗もしてきました

電気をより有効活用する「V2H」電気自動車があればすぐ始められる?

東京都では2025年4月から、大手ハウスメーカーの新築住宅などを対象に、太陽光発電設備の設置や、断熱/省エネ性能の確保などを義務付ける制度がスタートします。今後はより太陽光発電が多くの人にとって身近な存在になってくることが予想されます。

太陽光発電のシステムが家にあると、次に気になってくるのが「蓄電池」です。せっかく屋根の上で太陽を浴びていっぱい発電しても、使いきれない分が出てくるため、それを蓄電池に充電して夜間や雨天の日に使えればいいのに……と思えてくるからです。

「FIT(固定価格買取制度)」と呼ばれる売電単価が高い期間だったら、余った電気を買い取ってもらえるメリットがありますが、FIT期間は10年に限られているため、FIT終了(卒FIT)後は本当に微々たる値段での売電となってしまいます。

今回訪れたパナソニックのモデルルーム。屋根には大きな太陽光発電パネル

エネルギー価格の上昇などで電気代の高騰が話題になる今、自宅で作った電気を自分で使う“自給自足”にしたくなるところですが、そのためには電気をためておく必要が出てきます。住宅用の蓄電池は一般的に高価なこともあり、最初から大容量の蓄電池を導入するのはハードルが高い、というのが実情です。

そうした中、据え置き型の大容量蓄電池を設置するのではなく「電気自動車を蓄電池代わりに使ってしまおう」というのがV2Hのシステム。V2Hとは「Vehicle to Home」の略で、クルマから家へ電気を送ることを意味しています。

一般的に、電気自動車は充電して走らせるわけですが、V2Hのシステムがあれば、クルマに充電した電気を家に送ることができるようになります。

電気自動車をV2Hシステムに接続すると、家の電源として利用できます
サクラの場合、充電コネクターは車体の後方にあります
上が普通充電、下が「CHAdeMO」仕様という急速充電コネクター。V2Hシステムに接続するのはCHAdeMO仕様の方

生活に重要なインフラである電気。電力会社から買っても、蓄電池から使っても、使う私たちにとっては同じものです。今や生活に必須といえるエアコンや、IHクッキングヒーターのような消費電力の高い家電も、特に意識せず普段と同じように使えて、その電源として、電気自動車のバッテリーを活用するわけです。

そして、日常生活で大事になってくるのはコスト面。据え置き型の蓄電池と、蓄電池を積んだ電気自動車のどちらを買うか、単純に考えると電気自動車の方が高そうに思えますが、実は同じ容量ならクルマのほうが安いというのが現状です。

しかも、軽自動車タイプの日産サクラの場合、20kWhという大容量の蓄電池を搭載しつつ価格は254万8,700円~304万400円(補助金なし)。もちろん、これを買うだけで約300万円のもとが簡単に取れるわけではありませんが、これなら“できるかぎり太陽光発電の電気だけで生活したい”という私の理想の環境を構築できるのではと思い、導入することにしたのです。

実は昨今の部品不足などの影響で納品まで時間がかかっていたのですが、今回ひと足先に体験できるということで、パナソニックのモデルルームへ行ってきました。この家が、まさにV2Hのシステムが入ったもの。もちろん屋根には太陽光発電パネルが設置されているので、私の家と同様の使い方ができそうです。

補助金も活用、初期投資を抑えてサクラだけでもV2H生活が始められる!

電気代の値上げがよくニュースになる中、家庭用でみると、いまや太陽光発電が一番安い電気ともいえます。これをいかに効率よく使って、高騰する電気代を下げるか、という面でV2Hを活用したいところ。

もちろん緊急時でも安心して生活できるというのも大きなメリット。サクラなら20kWhの充電容量があるので、4人家族の一般家庭なら1日半分の電気を賄えるそうです。控え目に使えば2日間は使うことができそうだし、その間に晴れてくれれば太陽光で補充することもできるから、大きな安心につながります。

家の電気が止まるような状況になったとき、電気自動車であれば被害の少ない隣町まで移動して、充電して家に戻れば電気を供給できるようになるというのもV2Hの大きなメリット。まるで給水車のように電気を運んで持ってくることだってできるわけです。

そんなV2Hの世界ですが、今回のモデルハウスのように、電気自動車があって、V2Hのシステムがあり、さらに太陽光発電も蓄電池も……となると、かなりの費用が必要になると思うかもしれません。すべてを一気に導入するのは大変ですが、そうしなくても、予算とやりたいことによって、1つずつ導入していくのがよさそうです。

たとえば、まずは手ごろな電気自動車であるサクラを導入するのも簡単な方法。いまなら国から55万円の補助金が出ますし、さらに自治体によっては別途補助金が出るところもあります。たとえば東京都の場合、太陽光発電など“再エネ電力導入”が条件ではあるものの70万円も補助金が出るから、かなり安く導入することが可能になります。

電気自動車のバッテリーを電源として、家のエアコンやIHクッキングヒーターといった家電も特に意識することなく普段通り使えていました

サクラにはオプションで充電用ケーブルが用意されていて、これと家に200Vのコンセントがあれば、サクラをつないで充電して乗ることが可能。もし200Vコンセントがない場合でも5~10万円の工事(工事事業者などによって異なります)で外に設置できます。まずは日常の移動手段として電気自動車を導入し、その後でより電力を有効活用できるV2Hのシステムを順次導入していってもよさそうです。

V2Hは、国や地方自治体からの補助金も交付されています。2023年度の補助金はすでに終了してしまったのですが、この2023年の国からの補助金の上限は115万円ありました。こうした補助金が今後どうなるかも、最新の動向をチェックして活用するとよいでしょう。

蓄電池をプラスすると、さらに一つ上の快適なV2H生活も

今回訪れたモデルルームは、V2Hによるクルマでの蓄電だけでなく、据え置き型の蓄電池、太陽電池の3つを組み合わせた、最新設備が導入されています。

私の理想“できるかぎり太陽光発電の電気だけの生活”では、昼間に太陽が出ているときだけ、余った電力を電気自動車に充電したいし、陽が陰ってきたら、ためた電気を使いたい。それが3つを組み合せたら、どういう優先順位でどうやって操作すればいいんだろう? といろいろ疑問に思っていました。

実際に見てみると、拍子抜けするほど簡単でした。「自家消費モード」に設定しておくだけで、あとはすべてお任せ。ちょうど、そのモデルハウスに行った日は晴れたり曇ったりと、やや天気が不安定な日だったのですが、ちょうど日が差してくると充電し、曇ってくると放電することを、自動で行なってくれていました。

そして、充電も太陽光発電による余剰電力を使って、電力会社からの電気は極力使わない形でも生活できるのもうれしいところ。もちろん設定を変えれば、クルマの充電を優先的に行ない、いつでも満タンにしておくといった使い方もできます。

充電や放電において、電気自動車と据え置き型蓄電池のどちらを優先するのか? といった設定も簡単にできるのも面白かったところです。

パナソニック エレクトリックワークス社の飯田俊介さんに話を聞くと「たとえば充電の優先度を電気自動車と蓄電池で100:0と設定すれば、電気自動車を優先的に充電していき、電気自動車のバッテリーが満タンになったら、家の蓄電池に充電していきます。一方で、放電の優先度も設定できるので50:50としておけば均等に使っていく形になるんです」とのこと。

電気自動車からの電気と太陽光発電で自家消費している状態
家の蓄電池からの電力も組み合わせて使えました
パナソニックのV2Hシステムについて説明してくれた飯田俊介さん

「パナソニックの場合はAiSEG2というHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)機器があれば、さらに便利に使うことができます。AiSEG2が、ユーザーの電気の使い方と天気に応じた発電量を学習することで、翌日の余剰電力を予測して、蓄電池を自動的にコントロールすることも可能です。それが「AIソーラーチャージ」というもの。その家の使い方に合わせて最適な形で充電や放電をすることで、電気代を削減できます」と説明してくれました。

使用中の家電の消費電力と、発電している電力の表示

まずは電気自動車があれば手軽に始められるV2Hライフ。導入した後で、どのように活用するかは使う人次第ですが、家族構成など将来のライフステージの変化や、環境への配慮、電気の有効活用など、それぞれ理想とする生活に近づけていけるという楽しみもありそうなことを、今回の体験で実感しました。

これからのV2H生活が楽しみになってくる体験でした

サクラは日常のクルマとして快適! 試乗してみた

今回体験してみた日産のサクラは、1年前にちょっとだけ試乗したことはあったのですが、今回は私が購入したのと同じカラーであるソルベブルーのGグレードということもあって、少し運転もしてみました。軽自動車ではあるのですが、乗ってみるとかなり広い空間だな、と感じます。

さわやかな「ソルベブルー」(特別塗装色)
軽自動車ながら広々した空間

アクセルを踏んでみると、そのパワーに驚かされます。私が今まで乗っていたガソリンの軽自動車とは比較にならないくらい強力なもので、これが電気自動車なのか! と実感したところ。サイドブレーキの位置や使い方が、普段乗っているクルマとだいぶ違っていて最初は戸惑ったものの、それ以外の使い勝手の面ではガソリン車とほとんど変わらなく乗れるんですね。

ちょっと面白く感じたのがe-Pedal Stepというボタン。これがオフだと、ガソリン車で運転する感覚とほとんど変わらないのですが、オンにするとまるでゴーカートのような感覚で運転できるんです。モーター駆動ならではの特性を活用するモードとのことで、アクセルを踏めば気持ちよく加速する一方、アクセルを戻すとグッ減速していくから、ブレーキペダルをほとんど使わずに運転できてしまいます。好き嫌いはあるかもしれませんが、慣れると便利に使っていけそうです。

気持ちよく加速し、快適に運転できました

ドライブモードは「STANDARD」「SPORT」「ECO」の3つが用意されています。SPORTにすると、より加速度のあるパワフルな走りができる一方、ECOにすることで、燃費ならぬ電費をよりよくする運転ができるとのこと。ECOでも十分なパワーがあったので、個人的には常にECOモードでいいのかも、と感じたところでした。なお、詳しい試乗レポートはCar Watchのこれまでの記事でも掲載されています。

私自身、サクラはセカンドカーとして導入するつもり。これを主に家庭用の蓄電池として家の電気代節約をメインに活用しつつ、太陽光からの充電が必要ない曇りの日や夕方での買い物用などに走らせようかと考えているところ。この辺の使い方は納車されてから、じっくり検討していこうと思っています。

撮影:木村 和敬

(提供:日産自動車株式会社)