エプソン、ランニングを記録する腕時計型GPS機器「Wristable GPS」

~14時間の長時間計測が可能
「Wristable GPS」

 セイコーエプソンは、国内スポーツ機器市場参入第一弾製品として、GPS機能付ランニング機器「Wristable GPS」シリーズを発表。2012年8月23日から発売する。価格はオープンプライスで、Web直販価格は24,800円から。

 同社では、2012年2月にコンセプト技術の開発を発表。これをもとに、同社が持つコア・センシング技術、IT技術、GPS技術、時計技術を組み合わせ、優れた装着性、長時間使用、全天候型、計測精度の追求といった4点にこだわり、アウトドアで活用できる製品として商品化した。

3機種4モデルが用意されるアスリートモデルはマラソン出場者が、マルチスポーツとFUNランナーモデルは趣味のランナーがターゲット
FUNランナーモデル『SS-300R』FUNランナーモデル『SS-300G』
FUNランナーモデル2機種左がアスリートモデル、右がマルチスポーツモデル

 「ランニング愛好家からレースに出場する上級者まで、さまざまなランナーの要望に応えるため、高精度なランニングデータを、長時間に渡って計測でき、さらに装着感、防水性に優れた製品を投入する。また、同梱しているUSB対応のクレードルを利用し、PCと接続することで、WebサイトのNeoRunを通じて、データを計測し、記録し、検証することができる。ランニングの記録保存と、効果向上を図ることができる。新たなスポーツの楽しさを提供していきたい」(エプソン販売 代表取締役社長の平野精一氏)と製品の目的を語った。

GPSを内蔵しながら、薄型で長時間駆動

 いずれの製品も、エプソンが独自開発したGPSモジュールを搭載。GPS機能使用時でも、最大で14時間の稼働を可能にするなど低消費電力化を図っているのが特徴。また、自社開発、自社生産のフラットアンテナの採用で、かさばりがちなGPSアンテナを徹底的に薄型化しているという。

 位置情報から距離、速度を自動計測。距離を設定しておくだけで自動的にラップ情報を記録できる。また、上位機種には実速度と体振動周波数から、歩幅を自動的に学習する「ストライドアルゴリズム」を採用したストライドセンサーを本体に内蔵。トンネル内などのGPS衛星から信号が受信できない場所でも、高い精度で走行距離とラップを算出し、表示する。

 ランニング停止時には、自動的な計測を停止するオートポーズ機能を搭載しているため、その都度、手元で計測を停止する必要がない。さらに設定した目標に対する評価が表示されるため、達成度を確認しながらトレーニングを行なうことが可能になる。また、移動量と速度から消費カロリーも計測、表示が可能となり、計画なトレーニングやダイエット、健康管理をきめ細かくサポートするという。

型番のSSは、「Self Scale Sport Sensor」の略製品の機能一覧。ピッチストライド計測や心拍数関係が相違点
上位2機種とGARMIN社製品との比較上位機種に入っているストライドセンサー
GPSアンテナを液晶の下に置くことで薄型化した位置補正アルゴリズムを搭載することで精度が向上している

 最上位となるマルチスポーツモデルの「SS-700S」は、ストライドセンサーを内蔵し、心拍トレーニングや有酸素運動にも役立つハートレートセンサー(心拍数計測)機能を標準搭載する。10気圧防水という高い防水性を実現しており、ランニングのほかにも、スキーやスノーボード、ヨットやカヌーなどのスポーツシーンでも利用できる。同社Webサイトでの直販価格は34,800円。

 アスリートモデルの「SS-500R」は、フルマラソンへの参加者など、アスリート志向のランナーに向けた製品と位置づけており、薄さ13mm、重量49gを実現。「一般的なスポーツウォッチと同等の軽量、薄型を実現している」という。GPSモジュールとストライドセンサーを内蔵。5気圧防水となっており、オプションでハートレートセンサーにも対応している。Web直販価格は29,800円。

 FUNランナーモデルの「SS-300R」および「SS-300G」は、運動を楽しむユーザー向けの製品で、ランニング時のほか、ウォーキングや旅行時に使用しても違和感がないレッド(SS-300R)とライムグリーン(SS-300G)を用意。GPS機能による正確な距離やペースの計測、運動強度、消費カロリー計測が可能となっている。5気圧防水を備え、重量は59g。Web直販価格は24,800円となっている。

 全製品ともに、秋田エプソンで生産している。

PCとの連係や充電は専用クレードルで行なうPCとの接続はUSB経由
Webサービス「NewRun」で自動記録する「NewRun」の画面例

エプソンにはモノを小さくするDNAがある

中野修義 販売推進本部長キーワードは「ジブンを測れ。」リアルイベントでの訴求を行なう

 エプソン販売 取締役 販売推進本部長の中野修義氏は、「週1回以上、ランニングをするという人は、現在、約535万人いる。そのうち、年3回以上マラソンに参加しているアスリートランナーが約35万人、それ以外のファンランナーが約500万人。この市場はさらに拡大するだろう。それぞれのランナーに要求されるものが違ってきており、それに向けて製品をラインアップした。また、ランナー以外のユーザー層に向けても訴求していく。この市場の規模は4万台と想定しており、そのうち2万台を占めていきたい。販売ルートは、カメラ量販店、家電量販店、百貨店、スポーツ専門店、時計専門店を通じた店頭で約70%、Web・通販で30%を占める。一般的にスポーツウォッチは、Webが60%強となっているが、エプソンの強みである店頭で力を注いでいきたい。プロモーションキーワードとして、『ジブンを測れ!』、『ジブンを残せ!』を掲げて訴求していく。また、荒川マラソンをはじめとする4つのマラソン大会で協賛プロモーションを行ない、来年2月の東京マラソンEXPOにも出展する」と語った。

碓井稔 代表取締役社長

 セイコーエプソン 代表取締役社長の碓井稔氏は、「エプソンは、商品、サービスを通じて、世界の文化、家庭内の利用シーンに革新を起こしてきた。そのエプソンが新たな領域として参入するのがウェアブルの領域である。人の体のシグナルや人のアナログ情報を、デジタルへ変換し、デジタルコンテンツを人が使いやすいようにアナログに変換する役割を果たすのがこの機器である。身体の内部や動作、外部環境を、センシングして見える化し、そこから有用な情報を創り出し、適切にフィードバックすることで、人の生活に大きなベネフィットをもたらす。スポーツ、健康、医療といった新たな領域で、エプソンの強みである『省、小、精』の技術を使い、さまざまなウェアラブルの製品、サービスを提供する。エプソンはウォッチをルーツとする、モノを小さくするDNAがあり、そのエプソンだからこそ実現できるウェアラブル製品だといえる」などとした。

森山佳行部長

 また、セイコーエプソン Pプロジェクト 森山佳行部長は、「エプソンは、1998年にGPS位置情端末を製品化。その後、GPS技術を進化させ、国内主要携帯電話メーカー向けの実質的な標準技術として搭載され、GPSモジュールの累積販売台数は5,700万台に達している。今回の製品の開発者すべてがランナーであり、ランナーが持つ課題を解決することで、スポーツウォッチ市場の新たなスタンダードを、自分たちで開発できるという気持ちで取り組んできた」と語った。

平野精一社長

 さらに、エプソン販売の平野精一社長は、「今後は、IT技術とウェアラブル技術を融合することにより、人々にさらに豊かなスポーツライフを提供し、市場を活性化していきたい」としたほか、セイコーエプソンの碓井社長は、「スポーツをより上達したい、健康増進したいという要望に対して、価値を提供したい。この分野では、製品だけにとどまらず、サービスへの展開なども含めて、早期に数百億円の事業規模にしたい」などとして、今後もスポーツ市場向けの製品群を継続的に市場投入する姿勢をみせた。






(大河原 克行)

2012年8月8日 16:16