セイコー/エプソン、世界初のソーラーGPS腕時計「アストロン」

~地球上のどこでも現地の時刻を表示
セイコー アストロン世界のどこでも正確な時刻が得られる5機種が9月下旬に発売される

 セイコーホールディングス、セイコーウォッチ、セイコーエプソンの3社は、世界初のソーラーGPSウォッチ「セイコー アストロン」を9月下旬に世界同時発売する。セイコーが企画と販売を、セイコーエプソンが開発を担当する。

 5機種が同時に発売される。希望小売価格は152,250円から210,000円。将来的には、価格の幅を上下に広げて、幅広く製品展開を行なうとしている。

 アストロンは、1969年にセイコーが初めて開発したクォーツウォッチの製品名を継承したもので、クォーツが時計の主流になったように、新たなスタンダードになることを目指している。

 アストロンの特徴は、時計の位置測定と時刻合わせにGPSを採用したことにある。電波時計が使用している標準電波は、サービスエリアが日本を始めとする数カ所に限られており、ワールドワイドでカバーされているエリアは少ない。

4つのGPS衛星から得た電波で正確な位置と時間が得られる現在39のタイムゾーンがある。各国政府が決めるため、きれいに経度ごとに分割されていない円で囲まれているのは標準電波が得られる地域。世界全体に比べると、限られた場所のみとなっている

 世界中をカバーしているGPSの電波を利用することにより、GPS衛星が搭載している原子時計により時刻合わせが行われる。また、GPS電波により位置情報を取得することで、世界中に存在する39のタイムゾーンを自動的に判断し、現地時間への時刻合わせを行なう。時刻の修正は最短6秒、タイムゾーンの修正は最短30秒で行える。

 この製品を実現するために、電波を受信するためのアンテナや、外部電源を不要にするための節電技術などが新たに開発された。なかでもGPSモジュールについては、従来の1/5程度の電力しか使用しないという。

GPSモジュールの消費電力を1/5にしたソーラー発電のみで安定した電源を供給する技術も重要だGPSアンテナは本体内のムーブメント内に内蔵されているようだが、詳細は明らかにされなかった

 記者会見に臨んだ、セイコーホールディングス服部社長は、「電波時計が使用している標準電波のインフラは、時刻合わせのために最適化されており、処理も軽い。しかし、用途が限られていることもあって、全世界に普及するのは難しい。それに対し、GPSの電波は全世界を覆っており、地球上のどこでも利用できる。しかし、GPS衛星が送る情報は多様であり、処理も重くなる。その電波を処理しながら、電池などを必要とせず、ソーラーだけで動作するところに苦労した。世界中のどこであっても、簡単な操作で時刻合わせができ、タイムゾーンなどを考えることなく、正確な時刻を知ることができるという意味で画期的な製品であると自負している」と今回の製品の意義を強調した。

最大のメリットは、いつでもどこでも正確であること受信時間は時刻なら最低6秒ですむ

 質疑応答では、省電力のGPSモジュールについては、スマートフォン用途などにも外販できるのではないかという質問もあったが、現状ではここまでの省エネ性能はスマートフォンには不要ではないか、という消極的な回答だった。また、時計自体のムーブメントの販売についても、自らの手で世界中の人に届けたいとし、現状では考えていないとした。

 会場では実機も展示されていたが、現状では登場直後のクォーツ腕時計並みの大きさで、特に厚みが目立つ。5製品のケースサイズは共通で、外形が47.0mm、厚さは16.5mmとなっている。現時点では、女性用の小ぶりな製品は難しそうな印象だ。GPSアンテナ部分については、ケース内に内蔵しているというが、特許登録などの関係もあり、発売時に詳細を明らかにするとしている。

機種によってやや異なるが、男性的で力強いデザインだ本体部分はかなり厚みがある。初期のクォーツ腕時計を思い出させる





(伊達 浩二)

2012年3月5日 17:42