三菱、ゴミを大/中/小に分けて吸引力を持続する掃除機
「風神」

~“業界初”ペットにも対応

 三菱電機は、ゴミを3段階に分離し吸引力を維持するサイクロン式掃除機「風神(ふうじん) TC-ZK20S-R」を、8月1日に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は7万円前後。

「風神(ふうじん) TC-ZK20S-R」カラーはルビーレッド(左)、ピアノブラック(右)の2種類

フィルター不要で目詰まりの恐れなし――「風神サイクロンテクノロジー」の仕組み

風神の集塵部となる「風神サイクロンテクノロジー」。本体からは簡単に取り外せる
 吸込仕事率250Wのサイクロン式掃除機で、「風神サイクロンテクノロジー」という集塵構造を採用した点が特徴となる。

 風神サイクロンテクノロジーは、本体内に2種類のサイクロンを発生することで、ゴミを3段階に分離し、微細なゴミも回収するという仕組みになっている。第1旋回部では綿ゴミや毛など大きいゴミを、第2旋回部では砂などの中くらいのゴミ、第3旋回部では花粉などの細かいゴミを分離する。

 これにより、従来のようにサイクロンボックス内にフィルターを搭載することなく、ゴミが分離できるため、使用し続けても吸引力の低下がほとんどないという。

 また分離されたゴミは、排気の風路と別の場所に溜められるため、ニオイを抑えたクリーンな排気が実現できるという。同社の調べでは、排気に含まれるアンモニアの濃度が、従来モデルの「TC-AJ15P」から、約1/4に減少したという。

 なお、ダストカップおよびサイクロン構造はすべて水洗いに対応している。

風神サイクロンテクノロジーの構造全部で4つの部品から成る。すべて水洗いに対応

風神サイクロンテクノロジーが、大/中/小のゴミを分けながら集塵するイメージ映像毛やシュレッダー後の紙を吸い込んでいるところ

右上の動画で吸い込んだゴミは、写真のように分別してカップに回収される集塵室と風路が別のため、ゴミのニオイを押し出しにくい構造になっている

三菱電機ホーム機器 秋山雄一 取締役社長
 三菱電機ホーム機器の秋山雄一取締役社長は、従来型のサイクロン式掃除機の問題点について、「サイクロン構造部の長さと径が同じ寸法のものが多いが、これではサイクロン旋回部の長さが足りないため、微細粉塵まではしっかりと分離できない。そのためフィルターを使ってゴミを濾し取っていたが、結果、使うほどフィルターが目詰まりして、吸引力が落ちていた」と、吸引力の低下という問題点を指摘。そのうえで、「風神は風とゴミを完全に分離する。そして、フィルターがないため目詰まりが発生せず、吸引力が低下しない」と、メリットをアピールした。

 秋山社長はまた、風神サイクロンテクノロジーを作った理由について、「理想的なサイクロンは、ある程度の長さがあり、かつ円錐構造によって、遠心力をしっかり出すことが重要。ただし、長くなると、家庭用のクリーナーではサイズの問題がある。また、日本のゴミは繊維成分が多く、さらに長さや大きさなど種類が多様で、理想的なサイクロン構造を構成しても、サイクロン部が1つだけでは分離が難しい。そこで、大きさに応じてゴミを3段階に分離する風神サイクロンテクノロジーを開発した」としている。

従来のサイクロン式掃除機は、集塵部でフィルターを使っていたため、目詰まりが発生していた従来型サイクロン式掃除機は、旋回部が短く、分離がうまくできないため、フィルターを使用していたこちらは従来モデルのサイクロン式掃除機のフィルター
理想的なサイクロン構造は、長く円錐形である点が理想。しかし、家電としてはサイズが大きくなってしまう3層構造としたのは、日本のゴミは種類が多いためこのサイクロン構造は、家電リサイクルプラントでも使用されているという

フィルターが目詰まりした従来型サイクロン式掃除機(右)と、風神(左)による吸い込み力の比較。風神ではボールがすぐに吸い込まれているが、従来型ではボールが動いていない

パワーブラシがなくでもゴミを掻き取る「エアエンジンブラシ」 


新採用のヘッド「エアエンジンブラシ」。モーターがなくても、力強くじゅうたんのゴミが取れるという
 新機能としてはこのほか、ヘッドに「エアエンジンブラシ」を採用した。これは、吸い込んだ風の力により、タービン(羽根車)を高速回転させ、中間プーリー(滑車)で約7倍のトルク(回転する力)に変換し、回転ブラシを強力に回転するというもの。高級モデルの掃除機では、回転ブラシをモーターで動かす「パワーブラシ」が搭載されていることが多いが、本製品ではパワーブラシなしでも、じゅうたんのゴミが強く掻き取れるという。

 ヘッドにはこのほか、回転ブラシにからみついたペットの毛などを、回転ブラシを横に取り出すだけで除去できるメンテナンス機構も備えている。

 このほか、ホースの手元グリップ部には振動を感知するセンサーを搭載。ホースを置いた時など掃除を一度中断する際に、パワーを自動で抑制、無駄な消費電力を抑えられる仕様になっている。

エアエンジンブラシの構造回転ブラシは横にスライドすることで簡単に取れるペットの抜け毛もワンタッチで除去できるという

グリップ部のセンサーで、不使用時の電力を抑えられるブラシの毛にアレル物質を抑制する「アレルパンチ植毛」、使い分けられるアタッチメントなども用意される

 本体サイズは、254×422×298mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は4.9kg。吸い込み仕事率は250W。最大消費電力は1,000W。集塵容量は1L。

 下位機種として、回転ブラシの抗菌加工やふとん用ブラシといった機能・付属品が省かれた「TC-ZK15S」も、同時に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は5万円前後。


“ペット対応掃除機”を謳う理由、吸込仕事率が控えめな理由


三菱電機 リビング・デジタルメディア事業本部 家電事業部長 荒木茂氏
 同社ではまた、本製品について、排気のニオイが軽減できる点、からみついたペットの毛が簡単に捨てられる点などから、業界初の“ペット対応掃除機”としている。三菱電機 リビング・デジタルメディア事業本部 家電事業部長の荒木茂氏は、「日本のペットの数が、2008年度で2,650万匹。全国で5,000万世帯と言われているので、50%の家で飼われていることになる。その中では、どうしても毛や匂いでお困りの人も多いはず」と話す。

 荒木氏によると、「風神」というネーミングは、「“風”の研究が成し得た、新時代の“神”業」が由来。昭和42年から60年まで、同社の掃除機のブランドとして使用されていたという。

 なお、250Wという吸込仕事率は、他社のサイクロン式掃除機と比べると、やや低めの数値となる。これについて同社では、「吸引力を持続するという点では、そこまで吸込仕事率は必要ではなく、また床ブラシもパワーブラシとほとんど同じ性能を備えており、仕事率がなくても十分満足いただける」としている。

 また、同社のこれまでの最上位モデル「ラクルリ」は、この風神の登場とともに終了となる。



(正藤 慶一)

2010年6月24日 17:44