パナソニック、新中期経営計画で三洋電機とのコラボを促進
~7月よりHIT太陽電池をパナソニックブランドで発売
パナソニックは5月7日、2009年度連結決算を発表するとともに、2012年度を最終年度とする中期経営計画「Green Transformation 2012(GT12=ジー・ティー・トゥエルヴ)」を発表した。
●2009年度決算は1,035億円の赤字。冷蔵庫は10%増と好調
2009年度の年間連結決算概要 |
パナソニックの上野山実常務取締役は「第4四半期は大幅な増収、増益を実現した。年間売上高は減収となったが、営業利益は前年比2.6倍となる増益を達成。目標を上回る損益分岐点の引き下げで、経営体質の強化を実現した」と総括。さらに「エコポイント制度の影響で、第4四半期は薄型テレビに加えて、エアコン、冷蔵庫も好調に推移した」と付け加えた。
2009年度第4四半期(2010年1月~3月)の業績は、売上高が43%増の2兆1,981億円、営業利益は2,422億円回復し、606億円の黒字、税引前損失は4,428億円回復したものの、マイナス840億円の赤字。当期純損失は3,554億円回復の889億円の赤字だった。
パナソニック 上野山実常務取締役 | 第4四半期に限ると、889億円の赤字。前年同期比では赤字幅を約3千億円回復している |
地域別の売上高比較 |
なお、2009年度に取り組んだ固定費削減への取り組みでは、2,600億円の削減目標に対して、3,715億円の削減を達成しており、目標を1,000億円以上上回る削減実績となった。これにより、損益分岐点の引き下げは当初計画の10%から12%の引き下げとなった。
セグメント別の業績は、アプライアンスの売上高は7%減の1兆1,423億円、営業利益が36%増の665億円となった。冷蔵庫は好調だったが、エアコンやコンプレッサーなどの売り上げが減少したことにより減収。だが、合理化努力の影響で増益となった。エアコンの売上高は前年比6%減の2294億円、冷蔵庫は10%増の1198億円。
デジタルAVCネットワークの売上高が前年同期比9%減の3兆4,095億円、営業利益は前年比27倍の873億円となった。デバイスの売上高は11%減の1兆53億円、営業利益が408%増の361億円。電工・パナホームは売上高が8%減の1兆6,321億円、営業利益が13%減の347億円。三洋電機の売上高が4,048億円、営業損失がマイナス7億円。その他事業の売上高は6%減の1兆122億円、営業利益は18%減の197億円となった。
生活家電を扱うアプライアンス部門の売上高は、前年同期比7%減の1兆1,423億円。エアコンやコンプレッサーは不振だったが、冷蔵庫は好調だった | パナソニック電工とパナホームの業績推移 | 三洋電機は売上高が4,048億円、営業損失がマイナス7億円 |
●2010年度は500億円の黒字が目標。海外市場の増販を見込む
一方、2010年度の連結業績予想は、売上高が前年比19%増の8兆8,000億円、営業利益は31%増の2,500億円、税引前利益は1,793億円改善の1,500億円の黒字、当期純損益は1,535億円改善の500億円の黒字を目指すとした。三洋電機の売上高を年間ベースにした前年対比では、売上高では2%増となる。
2010年度は500億円の黒字を目指す | 2010年度の見通しの内訳 |
地域別の売り上げの見通し新興国市場を中心に展開していくという。 |
「売上高は海外新興国市場を中心に成長を牽引し、当期純利益は2007年度以来黒字転換する。さらに、すべてのセグメントで増収増益を確保する計画」(上野山常務取締役)
BRICS+V(ブラジル、ロシア、インド、中国およびベトナム)、MINTS+B(メキシコ、インドネシア、ナイジェリア、トルコおよびバルカン諸国)の11か国における市販システムでは前年比20%増の増販を見込む。
セグメント別では、アプライアンスの売上高は4%増の1兆2500億円、営業利益が16%増の770億円。上野山常務取締役は「売上高ではアジア、中国、新興国を中心に海外事業の拡大を図ることで増収を目指す。営業利益率は6.2%を見込む」としている。
デジタルAVCネットワークの売上高は前年同期比1%増の3兆4,500億円、営業利益が337億円増の1250億円。デバイスの売上高は5%増の9,800億円、営業利益が41%増の510億円。電工・パナホームは売上高が1%増の1兆6,500億円、営業利益が24%増の420億円。三洋電機の売上高が1兆7,500億円、営業利益がゼロ。その他事業の売上高は1%増の1兆200億円、営業利益は57%増の310億円とした。
●海外展開やLEDなど重点事業を拡大、2012年度に10兆円の売上を目指す
パナソニック 大坪文雄社長 |
パナソニックの大坪文雄社長は、「三洋電機を加えた新パナソニックグループとして、エレクトロニクスナンバーワンの環境革新企業になるというビジョンの実現に向けた、最初のステップを刻む中期経営計画になる」と位置づけ、「環境貢献と事業成長の一体化をはかり、成長への大胆なパラダイム転換と、環境革新企業の基盤づくりに取り組むことで、2012年度には成長力あふれるパナソニックグループになることを目指す」と語った。
2012年度の目標「GT12」 |
大坪社長は、「売上高とROEの目標は、当社が追求するグローバルエクセレンス指標をクリアする水準」とするとともに、「GT12ではパラダイム転換が大きなテーマ」とした。「既存事業偏重からエナジーなど新領域へ」、「日本中心から徹底的なグローバル志向へ」、「単品志向からソリューション・システム志向へ」の3つの転換に加え、2012年度にエナジーシステム事業で8,500億円、海外事業比率55%、新興国における売上高7700億円、システム・設備事業で2兆6,000億円という事業目標を掲げた。
GT12の位置づけ。2018年度の「エレクトロニクスNo.1」を実現するためのパラダイム転換を狙う | 新領域、グローバル、ソリューション・システムの3分野における指標 |
エナジーシステムなど6つの事業を「6重点事業」に設定 |
大坪社長は「特にネットワークAV、エナジーシステム、冷熱コンディショニングの3つの事業は、グループの中軸事業と位置づけるもので、全社の収益を牽引していくことになる」としている。
●HIT太陽電池をパナブランドで展開。“今のままでは競争力があるとはいえない”
エナジーシステム事業は、グループのフラッグシップ事業として、太陽電池および燃料電池の「創エネ」、民生用二次電池などの「蓄エネ」、配電およびコン トローラの「エネマネ」、そして「環境対応車」で構成。これらをあわせて年率16%という高い成長率を見込むことになる。
中でも創エネの主力である太陽電池は、2012年度にはグローバル販売量を現在の3倍以上となる900MWを目指し、さらに2010年7月1日から、三洋電機のHIT太陽電池をパナソニックブランドで発売する。
エナジーシステム事業の指針 | これまで三洋電機が発売してきた太陽電池を「パナソニックHIT」として発売するという |
「太陽電池は2012年度に国内ナンバーワン、2015年度に世界トップ3入りを目指すが、いまのままではHIT太陽電池に競争力があるとはいえない。パナソニックのノウハウおよびリソースを投入し、次世代太陽電池の開発を加速し、高性能、低コストを追求していく。さらに、国内ではパナソニックが持つ家電、電材、住建の各販売ルートをフルに活用するとともに、グローバルには蓄エネ、エネマネを含めたシステム販売を強化する」(大坪社長)
さらに、兵庫県尼崎のプラズマディスプレイパネルを生産していた尼崎P3工場を、太陽電池の生産拠点として活用する方向で検討していることに言及。この中期経営計画のなかで実行する考えだ。
また、リチウムイオン電池については、2012年度の売上高として5,000億円を目標に設定。「グローバルシェアナンバーワンを堅持する」と語るとともに、「パナソニックのエナジー社と三洋電機によるコラボセル、コラボラインの早期導入により、事業戦略の一元化と強みの高位平準化を図る。民生用市場における高容量化、新材料開発によるコスト力強化、家庭用蓄電システムなどの成長市場に向けて製品投入などを強力に進める」などとした。
エネルギーマネジメントについては、4月1日に発足したエナジーソリューション事業推進本部を核にグループ横断型の商品を開発。各機器を強化するのに加えて、電力、熱、情報を統合コントロールするシステム商材を開発するとした。
エネルギーマネジメント事業では、グループを横断するような商品を開発するという | 冷熱コンディショニング事業 |
●インドやブラジルに拠点開設、現地仕様の商品作りを目指す
インドとブラジルに研究施設を作り、新興国での生活に合った“現地仕様”の商品作りを推進するという |
同社では、すでに中国に中国生活研究センターを開設、ベトナムでディスカバリー・ベトナムプロジェクトを展開し、海外現地での生活研究を行なうことで現地仕様の商品づくりに生かしてきたが、新たにインドにはボリュームゾーンマーケティング研究所、ブラジルには生活くらし研を設置し、さらに本社にはグローバルコンシューマリサーチセンターを生活研究のハブ拠点として開設し、各地域のナレッジ共有と、顧客理解手法の高位平準化を図る。
こうした取り組みを通じて、ボリュームゾーン商品は、2012年度に1兆円規模の売上高を目指すという。
また海外市場におけるアプライアンス事業戦略では、日本、中国、アジアでは既存拠点の再編および強化を通じた大幅な増販を図る姿勢を示したほか、昨年参入を果たした欧州市場については、現地企業からのOEM調達や社外リソースの活用によって、商品ラインアップを強化することで欧州白物事業を本格化するとした。さらに、ブラジル、インドでは新たに生産拠点を設置する予定を明らかにした。
「共通基盤となる環境コア技術を徹底強化し、海外での成長を実現する。エアコン、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、掃除機、調理小物などの白物セット商品で、海外年率15%の成長を計画している」(大坪社長)
低価格なボリュームゾーン商品の展開も強化、1兆円規模の売上高を目指す | 生活家電などアプライアンス事業をグローバルに拡大する |
●生活家電など三洋との重複事業は一元化。営業利益率5%以下の事業は“無くす”
一方で、今回の中期経営計画の柱となる三洋電機とのコラボレーションについては、販売網の相互活用、システム提案による増販、開発の効率化などを中心とした事業のコラボレーションで520億円、集中購買やインフラ共用などによる経営体質強化で380億円を計画。グループ化による販売減のマイナス効果100億円を見込んでも、増益効果は2012年度見込みで800億円になるとした。
大坪社長は「4月1日に立ち上げたグループ・コラボレーション戦略ワーキングを牽引役として、スピーディーに、確実に、刈り取りを進めていく」と話す。
特にアプライアンス事業に関しては戦略を一元化し、両社の強みを生かしたコラボ商品を投入。開発の一元化、生産拠点の統廃合にも取り組むとした。
2012年度には800億円のシナジー効果があるという | コラボレーションによる取り組み事例 |
「重複事業の見直しなどにより、3,000億円規模の事業からの撤退を見込んでいる。どれが撤退事業なのかといった個片の内容については、現時点では話すことはできない。ただし、エアコン、洗濯機をはじめとする白物家電については、一部の業務用製品を除いては一元化を図っていくことになる。基本的な考え方は、パナソニックの経営インフラの上に、三洋電機の開発、生産を一元化するというものになり、両社にとって、ラインアップ強化、売り上げ増加、くまなく海外に展開できるという観点で最もいい方法を模索する」(大坪社長)
集中購買によるコストダウンで250億円、インフラやノウハウの共有で130億円を見込む。さらに、今後は、グループビジョンやエコアイディアマークなどの統一、共通化も進めていくとした。
また、大坪社長は、GT12で掲げた営業利益率5%以上という目標に関して、「5%に達しない事業は無くすという強い意志によるもの」と位置づけ、事業撤退の基準を営業利益率5%の維持に置く姿勢を示した。
(大河原 克行)
2010年5月7日 23:37
-ページの先頭へ-