三洋電機、2期連続の赤字も生活家電は9年ぶりの黒字
2009年度の連結決算。2期連続の赤字となった |
売上高は前年比9.9%減の1兆5,946億円、営業利益は290.1%増の83億円、継続事業税金等調整前当期純損失は、前年同期の1,137億円の赤字から754億円回復したものの、383億円の赤字。帰属当期純損失は前年のマイナス932億円から、マイナス488億円と赤字幅は縮小したものの、2期連続の最終赤字となった。
三洋電機の代表取締役副社長の前田孝一氏は、「世界同時不況の影響が大きかったものの、第2四半期以降は電子部品を中心に一定の回復をみせ、黒字が定着してきた。不透明な経済環境、グローバルにおける価格下落、原材料の上昇などの要因があるが、原価低減活動、固定費削減活動などにより、増益を達成した。全部門で黒字化し、第2四半期以降は毎期100億円以上の黒字を達成している」とした。
国内の売上高は6.5%減の6,275億円、海外は12.1%減の9,672億円。海外売り上げ比率は60.7%となった。
三洋電機 代表取締役副社長の前田孝一氏 | 最終的には赤字となったが、第2四半期以降は100億円以上の黒字を達成している |
●生活家電は9年振りの黒字化。冷蔵庫/炊飯器/掃除機/電動アシスト自転車が好調
セグメント別の業績に関しては、今回の決算発表からセグメント区分を変更。新セグメント区分として発表した。全部門で減収となったものの、全部門で黒字化した。
今年度より、セグメント区分を変更している | 全部門で減収となった | その一方、全部門で営業黒字を達成している |
エアコン、洗濯機のほか、ショーケース、業務用厨房機器も扱うコマーシャル部門の売上高は、前年比14.6%減の3,001億円。営業利益は93億円の改善で、72億円の黒字となった。家庭用エアコンの減少や、企業の投資抑制の影響を受けた業務用機器、コールドチェーンなどが減収。だが構造改革の成果や、制度改革を前にしたメディコム機器の買い換え需要による収益改善が増益につながった。洗濯機の売上高は前年比1.5%減の394億円。
冷蔵庫や炊飯器などの家庭用機器、ナビゲーションシステムなどのコンシューマエレクトロニクス部門は、売上高が前年比0.6%減の2,127億円、営業利益は115億円改善の94億円となった。冷蔵庫は、国内のエコポイント制度の影響で販売数量が増加し、車載機器も、市販およびディーラー搭載向けがいずれも好調に推移。「炊飯器や掃除機、電動アシスト自転車といった付加価値商品が堅調で、黒字化した」(前田副社長)という。冷蔵庫の売上高は2.7%増の411億円となった。
セグメント上では、コマーシャル部門とコンシューマエレクトロニクス部門に分散された生活家電だが、両部門から抜き出して集計すると、9年ぶりに黒字化したという。
●太陽電池は前年比約25%増で売上1,000億円を突破。「予想よりも好調」
二次電池および太陽電池のエナジー部門の売上高は前年比8.1%減の4,304億円、営業利益は49.6%減の238億円。「補助金政策の効果もあり、太陽電池の販売数量は増加したものの、(リチウムイオン電池の)価格下落の影響が大きく、収益率が悪化」(前田副社長)し、減収減益となった。
太陽電池事業に限ると、前年比25.3%増の1,017億円と、初めて1,000億円を突破。「国内の販売増加に加えて、欧州でも思ったほど悪くはなかった。第3四半期決算発表時の見通しに比べても上振れしており、予想よりも好調」とした。
電子部品および半導体などの電子デバイス部門は売上高3.9%減の3,014億円、営業利益は288億円回復し、21億円の黒字。光ピックアップが下期から改善し、下期の売上高が大幅に改善し、下期は前年同期比34.9%増となった。「光ピックアップはPC市場の回復の影響もあり、下期は2倍増の販売実績」(前田副社長)という。
電子部品の通期営業利益は92億円の黒字。だが、半導体は71億円の赤字となった。
デジタルカメラやテレビ、プロジェクターなどのデジタルシステム部門は売上高が前年比16.8%減の3,245億円、営業利益は16.7%減の100億円。
「デジカメやプロジェクターは価格下落の影響を受けたが、液晶テレビが北米市場で販売数量を大幅に増加した」(前田副社長)という。デジカメの売上高は22.7%減の1,424億円となったが、テレビの売上高は前年比2.8%増の1,107億円となった。
その他部門は、売上高が前年比23.5%減の257億円、営業利益は前年並の4億円となった。
●2010年度は400億円の黒字化が目標。「厳しい数字ではない」
2010年度は400億円の最終黒字を目指す |
営業利益の400億円の内訳は、エナジー部門が177億円、電子デバイス部門が136億円、デジタルシステム部門が107億円、コマーシャル部門が99億円、コンシューマエレクトロニクス部門が101億円、その他部門が2億円、消却および全社のマイナスが222億円とした。
前田副社長は「電池のエナジー事業はもう1年厳しいだろうが、その翌年以降は右肩上がりとなり、増益に転じるとみている。コスト削減効果や、中国からの調達を視野に入れた原材料調達の工夫、他社に比べて高容量、高性能、安全性という付加価値があり、太陽電池も国内では足りない状況が続いていること、パナソニックグループとのコラボレーションのなかで、これまでとは違った展開も見込まれる」とした。
さらに、売上高の5.6%増という成長率や400億円の営業利益という目標については、「第2四半期以降の黒字化の状況、太陽電池や二次電池の回復を考えれば厳しい数字ではない。半導体に関しても、人員整理など抜本的な構造改革を終え、今後は生き残り策をパナソニックの枠のなかで検討していくことになる。半導体事業の専門家が入ってきたので(パナソニックで半導体事業を率いた古池進氏が副社長に就任)、さらに改革が進むだろう。収益構造をみると、全部門で黒字化し、バランスの取れた構造となる。だが、見方によっては全部門で伸ばせる余地があるともいえる」と、自信を見せた。
同社では、5月11日に、佐野精一郎社長が、2012年度を最終年度とする中期経営計画を発表する予定であり、その場でより詳細な計画について言及することになっている。
「新たな3か年中期経営計画は、パナソニックグループのなかで役割を果たすものとなる。これまでの中期経営計画から、新たな計画に乗り換えざるをえないが、2010年度の計画は従来の計画の延長線上のものとなる。従来のコラボ委員会で方向性は決まったが、具体的な戦略は来期から本格化する。地ならしが今年度、花が開くのが来年度、大きく花が咲くのが再来年度となる。イタコナ、コストバスターズなどのパナソニックの仕組みを導入することによる、2010年度のコストダウン効果は数10億円規模になるだろう」(前田副社長)
さらに前田副社長は、「新興国における需要回復が見込まれる一方で、グローバルな価格競争が一層激しくなる見込まれるが、環境エナジー関連分野を強化し、パナソニックグループのなかで存在感を高めたい」とした。
●“5年前はまさに経営危機の状況”
なお、前田副社長は、6月の株主総会を期に退任することが決定しており、今回の決算発表が最後の会見となった。
「5年間、大変お世話になった。5年前の三洋電機はまさに経営危機の状況にあった。その後、増資の実行、2007年度は1年をかけた過年度決算の修正を行ない、パナソニックによるTOBに向けた取り組みを行なった。過年度決算の修正ではまさに疲労困ぱいの状況だった。全力で、必死になって三洋電機の再建、存在に向けて取り組んできたが、いまが引くときであると考えた。先のことは考えていない」(前田副社長)
前田副社長は、三井住友銀行出身。井植敏雅氏の社長時代に、SMFG企業再生債権回収の社長から、財務部門を担当するナンバー3として三洋電機入りし、1兆円を越える有利子負債を持っていた三洋電機の再建を主導した。
(大河原 克行)
2010年5月6日 19:40