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“着る”ウェアラブルがブームの予感! 人だけでなくペット用も出展「ウェアラブルEXPO」
(2016/1/14 12:38)
東京ビッグサイトでは1月13日~16日までの会期で、「第2回ウェアラブルEXPO」が開催されている。いずれも各業界のメーカーが、最新の完成品はもちろん、サンプルや部品などを数多く展示していた。その中から、筆者が注目した製品を紹介していく。
計測方法の工夫で、コンパクトでも多くのデータが収集できるように
これまでのウェアラブル端末といえば、装着していることにストレスを感じるものも少なくなかった。だが、最近はセンサー技術や計測方法の進化によって、コンパクトな筐体でも、様々な生体情報を得られるようになってきている。
ヘルスケア商品を開発している仙台のリアルデザインは、薄くてスリムなヘッドバンド型の端末、「duranta MOTION」を参考出品。
ヘッドバンドのように端末を装着すると、心拍情報が分かるほか、自転車に乗っていればペダルの回転数(ケイデンス)や頭部位置が分かり、水泳ではストローク数やラップタイム、ゴルフではスイング情報まで分かるという。これは、頭部の動きから身体動作を判読する、同社の特許技術を使った計測法(非公開)で、同センサーの他には何も必要なく、別途ケイデンスセンサーや加速度センサーなどは不要という。
同社では「duranta MOTION」を、自転車用ヘルメットやスイミングキャップ、ゴルフ用のサンバイザーに組み込むことを想定している。頭部に装着するということで、安全性を最優先にして開発。そのため、発熱などの可能性があるリチウム電池は使っていないという。
ロームは、小さな基盤に加速度や圧力センサーやマイコン、Bluetoothモジュールを組み込んだ小型基盤「センサメダル」を展示。
筆者がセンサメダルを見るのは、昨年のCEATECに続き2度目。前回は気が付かなかったのが、加速度センサーで得た情報を元に、筋力を測定できるというもの。
これは、同社が研究者と共同開発して構築した解析法で分かるようになったという。一見、関係のなさそうなデータから、新たな生体情報が得られてきているのだ。
ペットに装着させれば、犬や猫の気持ちが分かる!?
搭載センサーについては、一般的な加速度センサーなどを使いつつ、計測データの解析方法を工夫した事例が、Anicallの「しらせるアム」。
犬や猫などのペット用ウェアラブル端末で、専用アプリと連携させて、ペットの行動や感情を判別したり、健康状態をチェックしたりが可能。同社によれば、人と動物との新しいコミュニケーションツールだという。
センサーに内蔵されているのは、加速度センサーと温度センサー。例えば、しっぽを振ったりあくびをしたりする犬の動作を分析し、「トイレに行きたい」や「リラックスしている」など20種類の気持ちや欲求を検知できるとする。
“着る”ウェアラブルがブームの予感
昨年のウェアラブルEXPOやCEATECなどの展示会でも散見され、実際にスポーツブランドなどで商品化もされた“着る”タイプの生体情報計測ウェア。今年は、さらに多くのブランドから、導電材料を使った機能性素材が出展されていた。
中でも東洋紡のCOCOMI(心美)は、厚み約0.3mmと薄くて柔らかく、伸縮性に優れているのが特徴の導電シートだ。シート自体が伸縮しても通電する、高い導電性を備えている。
実際にシートを手にして、引っ張ってみると、スポーツウェアで使われる素材に近い感覚で伸び縮みする。
また生地メーカーのミツフジは、ナイロンに銀メッキを施した生地を提案。肌触りを犠牲にすることなく、導電性も備えているという。
ヘルメットメーカーのSTARLITE(スターライト)は、実際にこの導電性を持つ素材を利用したヘルメットを展示。これは、ヘルメットのハンモック(ヘルメットを頭部に固定して衝撃を緩和するパーツ)などに、各種のセンサーを搭載させている。そのため、ヘルメット内外の気温と湿度を計測でき、脳波センサーでユーザーの集中力などが分かるようにしている。
スターライトの説明員によれば、こうしたヘルメットを使うことで、作業員が著しく集中力を欠いていたり、作業環境が危険な状況にあったりする場合に、事前に兆候を知ることができるという。その際に、作業員に休憩を取らせるなどの対処をすれば、現場での事故の減少につながるだろうという。
業界全体でトライ&エラーが活発なヘッドマウント型
Google Glassのプロジェクトの終焉によって、一気に熱気が冷めたかに思えたヘッドマウント・タイプの端末やディスプレイ。だが、工場や倉庫などでは利用が進んでいた。
そのため、多くのメーカーがヘッドマウント型およびメガネ型のウェアラブルを展示。それらを活用した実例も、会場のあちこちで紹介されていた。
ブラザーは昨年から発売している「AiRScouter(エアスカウター) WD-200A」と、工場での活用事例を紹介していた。液晶パネルを左目の前方に配置されるよう装着するタイプ。720P(1280×720ピクセル)の動画を表示でき、映し出す映像の奥行きを30cmから5cmまで、自在に合わせられる焦点距離調整機能を搭載している。
ある工場での、製品の組み立て作業で活用されている例などを紹介していた。例えば、様々なモデルをラインナップした製品や、カスタムオーダーなどに対応する際、その組み立て行程を作業員に知らせるために使われているという。
こうしたハンズフリーでディスプレイを見られるヘッドマウントディスプレイの特徴を訴求するメーカーは多く、メガネメーカーの「メガネスーパー」も新製品を発表していた。
これらのヘッドマウント型の端末は、決してデザイン性に優れているとは言えない。仕事以外では、装着したいとは思えないのも事実。そこで、ヘッドマウント型端末のデザインを解決しようという提案が、めがねの一大産地である福井県・鯖江からなされていた。
メガネのデザイン開発をしているBOSTON CLUBは、「neo-plug(ネオプラグ)」というウェアラブル端末向けのフォーマットを提案。センサーやカメラなどを脱着システムの提案だ。
メガネのテンプル(ツル)にスライド式の脱着システムを組み込んだもの。規格に合ったメガネとセンサー類の組み合わせで、デザイン性の高いメガネを、ウェアラブル端末として使えるようになるという。
上述してきたように、一般コンシューマ向けの製品の展示は少なかった。だが、こうした部品やサンプル品は、十分にウェアラブル端末の未来を期待させてくれた。
「第2回ウェアラブルEXPO」は、1月16日まで開催されている。興味があれば、足を向けてみるのも良いだろう。
なお、昨日発表されたソニーのスピーカーなどを内蔵したライト「マルチファンクションシーリングライト」が展示されている「ライティング ジャパン2016」は、隣の会場。同じチケットで入場できるので、合わせて押さえておきたい。