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国宝をより美しく、京都・平等院にパナソニックのLEDを400台納入

 パナソニック エコソリューションズは、京都府・平等院の博物館「平等院ミュージアム鳳翔館」に、LED照明器具約400台を納入した。LED照明を導入することで、赤外線などによる文化財の損傷を低減するほか、国宝が持つ本来の表情や色合いを美しく照らし出し、新しい照明空間を創造するという。

 平等院は、藤原頼通が永承7年(1052年)に創建した寺院で、1994年には「古都京都の文化財」として世界遺産に登録された。鳳翔館は、平等院に伝わるさまざまな宝物類を保存、展示するための博物館。2001年に開館し、国宝の「梵鐘」や「鳳凰」、「雲中供養菩薩像」などが公開されている。

京都府・平等院
「平等院ミュージアム鳳翔館」入り口

 今回の納入の背景には、平等院 住職 神居 文彰氏より「文化財の造形美がしっかり見えるようにしたい」という要望があったことが挙げられている。また、開館より14年以上が経過し、調光設備の劣化なども踏まえ、運用しやすいようにライティングの見直しも行なった。

平等院の文化財が持つ本来の美しさを表現したい

平等院 住職 神居 文彰氏

 神居住職は、今回のLED照明器具の導入について次のように語った。

 「平等院の本質を、現代の技術で表現してほしいという思いから始まりました。私が希望したのはまず、色再現が正確であるということです。見えない部分まで正確に見える必要があるけど、仏として尊ばれる演出ができる光を望みました。今回の照明は、これまでの文化財照明とは異なり、単に物が置いてあるだけでない表現性があります。今後も、照明演出によって文化財の見え方にさまざまな発展があることを願います」

 国宝「梵鐘」を照らす器具には、通常の調光グレアレスユニバーサルダウンライトに、展示物の色を自然に見せる「美光色」機能を追加した特注品を開発。独自のスペクトル制御技術により高い演色性と、色温度3,500Kの温白色の光を実現。梵鐘がもつ独特の青銅色を美しく、忠実に表現したという。

 従来の照明では、梵鐘の上部に飾られた竜頭に光が当たらず、暗くなってしまっていたが、今回の光の細かな制御により鮮明に見せることを可能にした。明るすぎる光では竜頭に余分な光沢が入ってしまうが、バランスの良い照度で光沢も抑えている。

国宝「梵鐘」を照らす器具として特注品を開発
独特の青銅色を美しく表現し、上部の竜頭も鮮明に照らされている
展示物の色を自然に見せる「美光色」を用いている

 26体の菩薩像が舞う「雲中供養菩薩像の間」では、従来は蛍光灯で均質な光を当てていたが、今回より一体一体に光を照射。雲の中の浮遊感をイメージし、菩薩像が空間を舞うように表現したという。

 照明演出を監修した、東京国立博物館 学芸企画部企画課デザイン室長 木下 史青氏は、「立ち去りがたい雰囲気を作ることを目標にしています。じっと見ていると、何時間も足を止めてしまうような場を表現しました」と話す。

「雲中供養菩薩像の間」では1体1体に照射し、菩薩像が空間を舞うように表現
雲の中の浮遊感をイメージしている
東京国立博物館 学芸企画部企画課デザイン室長 木下 史青氏
エントランス部にもLED器具を新たに採用。外部から入ってすぐの場所に当たるため、照明演出が重要だという
鳳凰の間
鳳凰を目立たせるために、ガラスケースの存在感をなくしている

スマホ操作で学芸員の負担を低減

 運営のしやすさにもこだわり、企画コーナーではスマートフォンなどで操作できる、美術館・博物館向けシューティングスポットライトを設置。従来は、企画コーナーの展示物が変わる度に、高さ3m以上ある天井で照射方向や配光角度を調整するシューティング作業が必要だった。

 今回より、スマートフォンやタブレットからタッチ操作で光の照射方向・範囲・明るさを、展示物に適した設定に簡単に調整できるという。高所での作業が不要になったため、安全性も確保している。

 このほか、LED化により、年間ランニングコストを約82%ダウンした。電気代や交換ランプ代を抑えられ、年間約37万円で運営できるという。

 パナソニックでは、今後も博物館や美術館などの施設向け照明器具を展開していき、文化財の紫外線や赤外線による損傷を低減しながら、来館者の快適な鑑賞環境づくりに貢献するとともに、質の高いあかり空間を提案していくとしている。

企画コーナーではスマートフォンやタブレットで操作できる調光器具を設置
光の照射方向・範囲・明るさを、展示物に適した設定に簡単に調整できる
LED化により、年間ランニングを約82%ダウンした

西村 夢音