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水たまりに浮かぶ月のような有機EL照明など~ライティング ジャパン2015

 「ライティング ジャパン2015」が1月14日~16日の3日間、東京ビックサイトで開催された。照明機器メーカーをはじめ、多くの部材メーカーが自社製品を展示。世界の最先端の製品と照明技術が見られるということで、多くの人で賑わっていた。ここでは、展示されていた注目すべき製品を紹介していこう。

より心地よい光で照らしてくれる「有機EL」

 会場内でほとんどのメーカーが提案していたのが、省電力で長寿命なLEDを光源とする照明。そうした中で、有機ELの特性を生かしたものも散見された。その有機ELの特性とは、LEDやほかの光源と比べて優しい光を発光すること。そのため、目が疲れにくく、リラックスするシーンでの活用に向いているのだ。

 デザインに優れた多くの照明機器を企画販売する「Feel Lab」が提案する有機ELを使ったデスクライトが「PACO(パーツォー)デスクライト」。有機ELを組み込んだ木製パネルを、同じウォールナット材のスタンドに貼り付けて使用。パネルとスタンドは磁石によって接着させるため、その位置や角度をユーザーが自由にアレンジできるのが特徴だ。例えば照明パネルを下に向ければデスクスタンドになり、壁際に置いたスタンドに、壁に向かってパネルを付ければ間接照明になる。さらに明るさは、部屋や気分に合わせて無段階で調整可能だ。

スタンドのサイズは140×85×288mm(幅×奥行き×高さ)で、各パネルのサイズは110×12×110mm(同)。光源には2,800Kの有機ELを採用している
付属するもう1枚のパネルには、京都の老舗白生地職人による絹が組み込まれている。銀糸が織り込まれた折り目が、光の照らし方によって表情を変える

光をデザインするテーブルウェアのようなライト

 照明デザイナーである篠崎里美さんの製品「Puddle」も、有機ELの特性を生かしたテーブルウェアのようなライト。有機ELや基盤、バッテリーをアクリル板の中に入れつつ、厚さを約9mmに抑えている。アクリル内のミラーを、水たまりに浮かぶ月をイメージした形にカットしているのだ。

 USBで充電することで、約12時間の連続点灯が可能。重量が約500gと軽いため、好きな場所に置いたり壁に立てかけたり、部屋のレイアウトに合わせて使える。照明といえば、四角や丸といったデザインが多いなか、明かりの形を変えた「Puddle」は、新たな照明の可能性を感じさせられた。

有機ELや基盤、バッテリーをアクリル板の中に入れつつも、厚さは約9mm
外形は幅が250mmで、高さが240mm。表面のアクリルに水滴のような凹凸をあしらい、さざめく水面に反射する月を見ているような気分になる

新たなアイデアでLEDライトはバリエーションが広がっている

 気分を落ち着けてリラックスするのには有機EL光源がふさわしいが、省電力性や価格面でメリットが多いLEDライトは、用途に合わせてさまざまな製品が展開されていた。

 MPOWERDのランタン型のライトは、ユニークなLED充電ライト。日中は内蔵するソーラーパネルで充電し、夜間はビーチボールのように空気で本体を膨らませて照明になる。

 明かりの色は、白、赤、緑、青、紫、黄、橙、水色の8色に切り替え可能。さらに5秒ごとに色が変わる自動切り替えモードも搭載する。もともとは停電や災害時用に作られたものだが、ソーラー充電できる上に畳めば厚さ約2.5cmになるので持ち運びやすく、キャンプシーンでも活躍してくれそうだ。

ビニール素材のため、膨らませた際の形を変えられる。クシャッとさせれば光の反射が変わり、雰囲気のある明かりを照らしてくれる

水中に入れても照らし続けるLEDライト

IP68という防水性と防塵性に最も優れた規格に適合している。実際にはいないと思うが、展示のように水中に入れて使っても問題ない

 優雅に金魚が泳ぐ水の中にLEDライトを浸してしまうという、奇抜なディスプレイで注目されていたのが、メートンの防水型LEDライト「Evolight」シリーズ。専用ソケットと合わせて使うことで、IP68という完全な防水性を実現。水だけでなくホコリにも強く、激しい雨があたる屋外でも問題なく使えるのだ。

 長さ60cm~150cmの4サイズが展開され、全光束(明るさ)は1,010lm~2,570lm。家庭でも一般的な既存のソケットを使えるものも用意する。一般家庭でも湿気やホコリが多いガレージなどで活躍してくれるだろう。

チームラボともコラボした光のカーテン

 TSSはブース内に、無数のLEDの球状ライトが吊り下げられた高さ3mほどの動画ビジョン「TSS VISION」を展示。こちらは完全に業務用ディスプレイだが、同じ技術を使ったディスプレイが福岡のカナルシティにある「クリスマスツリー 2014」だ。これはチームラボが企画し、TSSがハード面を担当したもの。

 ブースに展示されていたのは、縦30弱のLEDチップを搭載するボールを簾のように垂らしたディスプレイ。LEDチップは157億色の表現ができ、そのひとつひとつをパソコンで制御できる。そのため全体で動画を表示させることも可能なのだ。色のコントロールは意外にも簡単そうで、専用ソフトに動画データを入れればいいだけ。極端に言えば、カメラで撮った動画やYouTubeにアップした動画を表示させることもできるのだ。

 一般的にこうした表現豊かな表示が可能なディスプレイは、回路を縦横に1ドットごとの網目状に張り巡らせる必要がある。だがTSS VISIONの場合は、回路の配線を縦に1本だけ。そのため簾を垂らしたようなユニークな形を実現しているのだ。

対応の動画フォーマットは「AVI」。ボール状のLEDライトを増やせば、最大で256×512ドット(縦×横)の表示ができるという

 夜の雰囲気を一変させる照明から、通りがかる人に刺激を与える業務用まで、多様な照明を見てきた。業務用に作られた照明も、コスト面での問題をクリアすれば家庭用として販売される日もあるだろう。より生活を豊かにするものとして、まだまだ照明が進化していくという可能性を感じさせてくれる展示会だった。

河原塚 英信