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シャープ、東南アジア向けの白物家電が好調
~現地で企画された冷蔵庫や洗濯機を披露
(2013/6/14 00:00)
シャープは、東南アジア諸国連合(以下、ASEAN)地域における白物家電事業が順調に拡大していることを発表。2017年3月期には年間の売上を3,000億円にすることを目標に、事業拡大を目指すという。
ASEANなど東南アジア諸国では、経済成長が頭打ちの先進国とは対照的に、近年ではGDP(国内総生産)が伸長し、実質的な経済成長率が高く、人口も増加している。それにともない人々の生活が豊かになり、世帯あたりの可処分所得が5,000~35,000ドルの「中間層」と呼ばれる市民が増加している。
反面、白物家電の普及率は未だ低く、インドネシアやフィリピン、ベトナムでは冷蔵庫、エアコン、洗濯機の2012年の普及率が50%以下に留まっているという。
シャープではこうした現状を踏まえて、アジア・パシフィック向けの事業拡大に取り組む。同地域における2013年の売上高の見込みは、2009年の約2倍に伸長。今後のASEAN地域における売上高として、2017年3月期に3,000億円という目標を掲げる。
シャープでは、ASEAN地域への取り組みの拠点として本部をマレーシアに置き、アジア・オセアニア各地の生産会社9社、販売会社10社を傘下としている。近年はASEAN各国でのシェアを伸ばすため、本部機能を強化しながら、生産販売会社の意思統一やサポートを計ってきた。
2010年から2012年にかけてのASEAN地域におけるメーカー別の売上の伸び率を見ると、白物家電と液晶テレビの合計ではシャープがトップを獲得した。
特にシャープがシェアを獲得している国がインドネシアだ。インドネシアの人口は2億4千万人で、ASEAN人口の40%を占めている。同国において、テレビ、冷蔵庫、洗濯機の販売台数で、シャープはそれぞれシェア1位を獲得。背景には、同社が早くからインドネシア市場に参入したことや、インドネシア向けの製品の生産と販売を同じ会社が手掛けているため、市況を反映しやすいといったことがある。このインドネシアの成功例を他国にも広めていくという。
今後ほかのASEAN地域でシェア拡大を目指すにあたり、シャープが取り組むのは地域のニーズに合わせたローカルフィット商品の企画だ。実際に各国の一般家庭を調査して、商品企画のベースにし、今後はよりASEAN地域のユーザー目線で、「こんな物があったらいいな」という製品の開発に力を注いでいくという。
一方で、ASEAN地域とひと括りにしても、各国で細かなニーズの違いもあるという。シャープの藤本登 常務執行役員 アジア・パシフィック代表は、「タイは付加価値のついた家電が売れる。冷蔵庫なら容量300L以上。一方でインドネシアは安い商品、300L以下の製品が売れ筋。付加価値の付いた高い製品はタイからインドネシアに出荷している」と説明する。
また、低価格競争に立ち向かうため、販売企画部として「OEM/ODM専任部隊」を設置し、OEM/ODMを積極的に活用している。これにより、コストの削減やラインナップの拡大が可能になる。ASEAN地域向けの白物家電のOEM/ODMモデル数は、2009年の65モデルから、2012年には229モデルへ、約3年で3.5倍に増加した。同社では引き続き白物家電のラインナップを強化するほか、オーディオ機器も投入していくという。
こうしたASEAN地域での需要増加を受け、シャープがインドネシアに建設中の白物家電工場は、当初の予定を前倒しして、今秋に操業することになった。年間の生産台数は、冷蔵庫が264万台、洗濯機が168万台となる見込み。こうした現地向けの製品を現地で企画販売まで一貫して行なう「地域完結」のビジネスモデルは、為替変動の影響を受けにくいというメリットもあるという。
このほかマーケティング活動としては、日本式の合同、個別展示会を開催するほか、日本流の売り方を活かした販売会社や販売店への研修なども展開し、事業の拡大を図る。
シャープは、ASEAN地域の各国へ展開する中で、LG電子やサムスンなど韓国メーカーとシェアを競っている。藤本アジア・パシフィック代表は、韓国メーカーの強さについて「LG電子やサムスンは、東アジアだけでなく、日本を除く全世界で強い。日本のメーカーが欧米に攻勢をかけていた頃、彼らは我々に先んじて南米や途上国に仕掛けていた。また、日本企業では考えられないほど莫大な予算を宣伝費に投じている。これが良い循環を生んでいるのではないか。韓国メーカーの製品は、現在は品質も良く、価格も日本メーカー製と同程度で競っている」と状況を説明した。