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節電の定着で、今年夏の電力供給予備率は8月に6.3%を確保

~経産省電力需給検証小委員会が資料を公開

 経済産業省は9日に開催された電力需給検証小委員会の会議資料を公開した。それによれば、沖縄電力を除く9電力会社の供給予備率は8月に6.3%を確保できる見通しとなった。原発依存比率が高い関西電力と九州電力でも最低限必要とされる3%以上は確保できる見込み。

各電力会社とも、3%以上の供給予備率は確保できる見通しとなった。昨年夏に比べるとかなり良い状況だ

 供給予備率は、最低で3%、安定した供給のためには7~8%が必要となる。今回発表された資料によれば、電力需要が多い真夏の8月でも、ほぼ安定した供給ができる水準といえる。

供給予備率は、最低で3%、安定した供給のためには7~8%が必要とされる

 電力需給検証小委員会は、今後も討議を続けてるが、昨夏にくらべて節電目標は引き下げられる可能性が高く、「数値目標のない節電要請」となる地域が増えると思われる。

昨年夏と冬の節電要請。昨夏は当初7社が数値目標付の節電要請を行なっていた(3月に行なわれた第1回検証小委員会の資料)

 昨年に比べて、やや余裕がある状況となった要因は、節電の定着が挙げられている。削減量が多い順に、東京電力では629万kW、関西電力では268万kW、九州電力では149万kWの節電が見込まれている。

今年夏の需要見通しのまとめ。定着した節電分や経済動向による変化を織り込んでいる。特に節電による削減量が多い

 電力供給側の増加要因としては、東日本大震災で被災した火力発電所のすべてが復帰したこと、廃止を前提として計画停止中だった火力発電所の再稼働などが挙げられる。なお、緊急設置電源は昨夏の318万kWhから298万kWhへ減少している。これは、東京電力で新設火力の稼働に伴って、袖ヶ浦発電所と横須賀発電所の緊急設置電源が廃止されたことによる。

東日本大震災で被災した火力は、今年の夏までにすべて再稼働される
長期的に停止しており、廃止予定だった古い火力発電所を再整備して動かしている。運転年数が40年以上に達しているものが多い
昨夏は緊急設置電源に依存していた東京電力は、すでに一部を撤去している

 また、太陽光発電については、天候によって供給力が大きく左右されるため、高需要が発生した日に確実に見込める分を過去の天候から計算して計上している。

太陽光については天候によって供給力が大きく左右されるため、高需要が発生した日に確実に見込める分のみを供給力として計上している

 なお、稼働中の関西電力大飯原発3号機/4号機は運転を続けるが、それ以外の原発については再稼働しない前提となっている。原発の比率が高い関西電力と九州電力では、中部電力、北陸電力、中国電力からの電力融通が前提となっている。

原発の比率が高い関西電力と九州電力は、需給が逼迫するため、周囲の電力会社から電力を融通する前提だ

伊達 浩二