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三菱、リサイクルプラスチックの純度検査技術を島津製作所と共同開発

回収プラスチックの純度を自動検査する「プラスチック高精度素材識別装置」

 三菱電機と島津製作所は、リサイクルプラスチックの純度検査を自動化する「リサイクルプラスチック高精度素材識別技術」の開発を発表した。

 家電製品のリサイクルに関する新技術。三菱電機では、1994年に業界で初めて家電製品のリサイクルプラントを設立、2010年からは大規模な高純度プラスチックリサイクルを開始している。従来、手作業で分別していたプラスチック製品を分別することなく、製品をまるごと粉砕してから、高純度のプラスチックを選別する「高純度プラスチックリサイクル」を採用。

 粉砕後のプラスチックを重さや静電選別により「PP(ポリプロピレン)」、「PS(ポリスチレン)」、「ABS樹脂」の3種類に分別し、再利用する。純度99%の優れた選別技術により、プラスチックの回収率は従来方法に比べて64%向上したという。

 今回新たに開発したのは、プラスチックを3種類に分別したあとの純度管理検査工程で使用する装置。従来は、薬品などを使って分別後のプラスチックの純度検査を行なってきたが、薬品の危険度が高く、処理が大変な上、手作業による検査のため、人件費のコストがかさむなどの問題があったという。そこで、島津製作所と共同で、プラスチック素材の種類を高速かつ高精度に識別し、回収プラスチックの純度を自動検査する「プラスチック高精度素材識別装置」を開発した。

三菱電機は、1994年に業界で初めて家電製品のリサイクルプラントを設立、2010年からは大規模な高純度プラスチックリサイクルを開始。混合破砕プラスチックの選別能力が優れているため回収率が大幅に向上した
三菱電機の高純度プラスチックリサイクル工程。粉砕後のプラスチックは「PP(ポリプロピレン)」、「PS(ポリスチレン)」、「ABS樹脂」の3種類に分別される
今回新たに開発されたのは、分別後のプラスチックの純度検査を行なう装置

 同装置は、中赤外光の表面反射を利用することで、プラスチックの高精度な識別が可能。円盤状の装置を回転させながら、プラスチック粒を一粒一粒整列させ、プラスチックの種類ごとに用意された回収箱にエアガンで飛ばすという仕組み。粉砕プラスチック1粒あたり、1秒以下で識別可能で、一度に1,000粒の識別が可能。装置をストップすることなく連続的に識別できるのも大きな特徴だという。なお、実際の工程で純度検査する場合は、一定の量を抜き出して行なうサンプル検査で使用するという。

 島津製作所の基盤技術研究所 光デバイスユニット長 森谷直司氏は、これらの技術について、「従来、同様の装置では、近赤外光を使っていたが、対象となるプラスチックに色素などの添加剤が含まれている場合、光が添加剤に吸収されて、正確な識別ができなかった。新装置では、中赤外光を使うことでこの問題を解決している」と説明した。

「プラスチック高精度素材識別装置」の仕組み。円盤状の装置を回転させながら、一粒一粒整列させながら、プラスチックの種類ごとに要理された回収箱にエアガンで飛ばす
従来、同様の装置では近赤外光を使っていたが、対象となるプラスチックに色素などの添加剤が含まれている場合、光が添加剤に吸収されて、正確な識別ができなかったという
島津製作所の基盤技術研究所 光デバイスユニット長 森谷直司氏
三菱電機 先端技術総合研究所 環境・分析評価技術部長 椋田宗明氏

 三菱電機 先端技術総合研究所 環境・分析評価技術部長 椋田宗明氏は今回の技術開発について、「回収リサイクルプラスチックの純度管理を完全自動化することで、工程の合理化につながり、リサイクル量をさらに拡大できる」と期待を込める。


阿部 夏子